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定年後再雇用とは?雇用状況・制度・メリット・運用を解説

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定年退職を迎えて、退職金をもらって隠居生活を楽しむ。高齢者のそうした光景は昔のものになろうとしています。「人生100年時代」と言われる現代社会において、定年退職を迎えた人材もまだまだ働き盛り。企業にとっても日本全体にとっても貴重な人材資源だといえましょう。

また、人材難や新卒雇用者の離職率が問題になっている今日において、定年退職者を対象とした雇用制度はホットな話題になっています。定年後再雇用制度は果たして、企業にとってどれほどの利点があるのか?「定年後は働かない」が当たり前だった旧来とは何が異なるのか?本記事ではその概要を分かりやすくご紹介します。

「定年後の再雇用制度」について

現在の日本における年金受給開始年齢は65歳です。そして2013年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正されたこと、希望する従業員は原則として65歳まで継続して働けるようになり、2025年4月にはこの制度が全ての企業に義務化されます。同制度の狙いは定年退職から年金受給までの期間において、高齢者が無収入状態にならないことです。

では、定年後再雇用制度とは何か?これは文字通り、定年退職を迎えた従業員を、再雇用という形で継続的に働いてもらう制度を指します。努力義務なので強制ではありませんが、高齢者の雇用確保という観点から多くの企業において定年後再雇用制度の導入が求められています。

再雇用制度と勤務延長制度の違い

定年後再雇用制度に類似したもので「勤務延長制度」というものもあります。これは定年退職した従業員を再度雇用するのではなく、定年に至った従業員でも希望すれば雇用を延長し、同じ雇用形態にて継続するための制度です。違いとして、定年後再雇用制度では定年退職金を支払った上で当該従業員を再雇用するのに対し、勤務延長制度では希望者の雇用形態を継続した状態で勤務してもらいます。従って後者の場合は定年退職金の支払い年齢が引き上げられ、実際に退職した際に支払うというのが通例です。

政府が全ての企業に対して高齢者の雇用機会確保を叫んでいるのは、前述のように定年退職後に無収入状態が続かないようにするためです。少子高齢化によって年金負担は国民に重くのしかかっており、今後も年金受給資格に到達する年齢が引き上げられる可能性があります。

企業が定年後再雇用制度を導入する目的としては、やはり「人材確保を容易にするため」でしょう。人材難が社会問題に発展している現代において、高齢者は貴重な人材資源です。人生100年時代において60〜65歳という年齢はまだまだ中堅層。高齢者といえどもパワフルな人材も多いので、新卒者や中途採用者を確保するよりも少ないコストと手間で、優秀な人材を雇用することができます。

高齢者の定年後再雇用状況について

労働人口に占める高齢者の数は、年々大きく増加しています。厚生労働省が発表している「高年齢者雇用の現状等について」を見ると、1970年には労働力人口に占める65歳以上の構成比がわずか4.5%だったのに対し、2018年には12.8%まで上昇し、ここ50年ほどで約3倍に増加しています。

次に同資料から男性の就業率推移について見てみますと、60〜64歳の就業率が1990年には69.2%だったのに対し、2018年には79.1%と約10ポイント上昇しています。これは高年齢者雇用安定法の改正によって定年相職基準が引き上げられたことが大きな要因として考えられます。

では、実際にどれくらいの高齢者が定年後再雇用制度によって就業を継続しているのか?細かいデータは発表されていないものの、ここに総務省統計局が発表した高齢者就業者数に関するデータをご紹介します。資料によれば65歳以上の労働力人口は2020年時点で922万人であり、2010年の585万人から倍近く増加しています。また、同じく総務省統計局が発表しているデータによると、高齢者就業者数は2018年時点で男女合わせて862万人おり、2008年には553万人でした。

これらのデータから見るに、定年後再雇用され高齢者は年々増加傾向にあります。もちろんこれには再雇用だけでなく、延長雇用も含まれていると考えてよいでしょう。

定年後再雇用制度の仕組み

定年後再雇用制度を導入する場合、企業は就業規則にその旨を明記する必要があります。ただし、制度導入よりも再雇用までのフローを理解することがまず重要です。大まかな流れとしては「①制度対象となる従業員への通達及び再雇用への意思決定」、「②制度対象従業員との面談」、そして「③再雇用の決定及び手続き」です。

①制度対象となる従業員への通達及び再雇用への意思決定

前提として、定年後再雇用制度はその制度があることを就業規則に明記した上で、組織の全従業員に対して周知徹底することが大切です。その上で制度の対象となる従業員には、希望すれば定年後再雇用されることを通達し、本人の意思決定を確認します。

定年後再雇用制度を導入しているからといって全ての従業員がそれを望んでいるとは限りません。あくまで本人の意思を確認した上でのことであり、定年後再雇用を希望しない場合は定年を迎えればそのまま退職ということになります。

②制度対象従業員との協議

定年後再雇用制度を設けている企業の大半は、再雇用後は正社員ではなく契約社員や嘱託社員など雇用形態が変化します。また、定年前と比べて給与水準が下がるケースがほとんどであり、企業はそれらの条件を対象となる従業員に説明した上で同意を得なければいけません。事前の告知が無いと法令違反になるわけではありませんが、再雇用後のトラブルを少しでも回避するために欠かせない作業です。また、制度に対して十分な理解と納得を得ることにより、従業員本人のモチベーションにも大きく関わります。

③再雇用の決定及び手続き

上記までのプロセスが完了すれば、いよいよ再雇用の手続きへと入ります。手続きでは関連書類を揃えることが多くなるので、この点についても事前に説明しておくとスムーズな協力が得られます。主な手続きの流れと必要な書類は下記の通りです。

<必要な手続き>

  • 従業員及び扶養者から健康保険被保険者証を受け取る
  • 従業員の健康保険資格喪失/雇用保険資格喪失(※)の処理
     ※再雇用時に1週間の所定労働時間が20時間以上である場合は不要
  • 従業員から健康保険扶養者届を受け取る
  • 従業員から国民年金第3号被保険者資格取得届を受け取る
  • 従業員の健康保険の資格取得を処理する
  • 雇用契約書を作成する

<必要な書類>

  • 健康保険被保険者資格喪失届
  • 厚生年金被保険者資格喪失届
  • 健康保険被保険者資格取得届
  • 厚生年金被保険者資格取得届
  • 健康保険扶養者届
  • 国民年金第3号被保険者資格取得届
  • 再雇用契約書

定年後再雇用制度が企業にもたらすメリット

導入にあたり最も意識すべきは、定年後再雇用制度が企業にもたらすメリットは何か?を知り、それらの最大化に向けた取り組みを進めることです。定年後再雇用制度のメリットを大別すると、下記の3つがあります。

業務経験が浅い人材の教育者として適任

新卒採用者など業務経験が浅い人材に対してOJT(職場内訓練)を実施する企業が多いですが、時にはじっくりと時間をかけて企業のビジネスモデルや業務内容を説明することも必要です。そうしたスローペースの社員教育を行う上で、定年後に再雇用した人材が適任となります。これまで培ってきた専門領域の知見も豊富なので学べることは多くありますし、入社したばかりの従業員も余計なプレッシャーを考えずに教育を受けることができ、早期段階での能力開花に貢献します。

政府の助成金制度を利用できる

定年後再雇用制度を導入し、高齢者を継続的に雇用している企業では条件に応じて政府から助成金を受け取ることが可能です。以下の助成金制度を利用し再雇用にかかるコストを抑制できるので、積極的に検討してみましょう。

人材不足の解決策として制度を導入する際の注意点

多くの企業で叫ばれている人材難は、今後の日本社会にとってより大きな問題へと発展していきそうです。労働力人口は年々減少傾向にあり、少子高齢化の加速も考慮すると、企業ごとに何らかの策を打たなければならない喫緊の課題でしょう。その解消策として定年後再雇用制度はひとつの方法として有効です。しかし、中長期知的な組織成長を考えた時に、若手や中堅層の採用を並行して行い、年齢構成のバランスを図ることも重要です。そのため、今後の採用計画をしっかりと立てたうえで定年後再雇用制度を上手く活用することをおすすめします。

定年後再雇用制度の事例

それでは、実際に定年後再雇用制度を導入した企業の事例をご紹介します。今回は2015年に再雇用制度である「アクティブ・エイジング制度」を導入した大和ハウス工業株式会社の事例です。

同社では2013年の「65歳定年制」の導入に続き、2015年に「アクティブ・エイジング制度」を導入しています。これは「65歳以降も活躍したい」と仕事に対して意欲的な従業員が多数いたことから、高齢者が引き続き活躍できる仕組みを検討した結果として導入に至っています。

同制度の特徴は、再雇用条件に対して「本人の意欲があり、かつ会社から必要とされている」と非常にシンプルに定めていることです。仕事に対する意欲があり続ける限り、65歳以上の人材も現役と何ら変わらない仕事量をこなすことができます。このため、同社では会社側から再雇用を断ったケースがなく、多くのシニア層が現在でも意欲的に活躍しているようです。

給与処遇については「月20万円」で定めており、企業年金の支給と合わせると60〜64歳までの収入水準と変わらないよう設定しています。こうした再雇用制度の導入コストは確かに増えるものの、将来的な投資として考えることで会社の成長を期待し、今後も高齢者雇用に対する取り組みを充実させていこうという考えを持っているようです。

定年後再雇用制度導入は先を見ながら

人事業界でのトレンドに近いようなものである定年後再雇用制度の導入。「多くの企業が導入しているから」と自社での導入を検討しているケースもあるでしょうが、大切なのは定年後再雇用制度を通じて自社はどういったメリット・利益を得られるか?をきちんと考えた上で、明確な目的意識を持って導入することです。また、サスティナビリティの視点から高齢者を雇用することで社会にとって如何なる好影響をもたらすかまで考えると、より意義のある制度導入に繋がることでしょう。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/01/26
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