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「ブラインド採用」とは、導入のメリットとデメリットを解説

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ブラインド採用とは、採用の選考過程で、名前や性別、年齢、学歴などの応募者の適性・能力とは関係のない情報を一切排除し、純粋に能力・適正のみで評価して採否を決定する採用方法です。企業経営にダイバーシティー、グローバル化が求められる中、注目されている選考方法です。

「ブラインド採用」とは

ブラインド採用は、選考過程で、応募者の写真、名前、性別、年齢、学歴などの従来必要とされていた個人情報を一切除外し、キャリアと能力だけで応募者を評価し採否を決定します。

選考書類に記載される内容は、原則、応募者が持っているスキルと職歴が中心となります。 書類選考は、その記載のみで判断し、面接時も、個人情報が伏せられた書類を元に選考が行われます。

厚生労働省が公表している「公正な採用選考の基本」には、採用選考に当たって、 「応募者の基本的人権を尊重すること」、「応募者の適正・能力に基づいて行うこと」。 また、国籍や家族など「本人に責任のない事項」、宗教、支持政党、尊敬する人物など「本来的に本人の自由であるべき事項」に関しても、選考過程に用いることは不適切とされています。

「応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しない」とし、これに違反した場合は、業務改善命令が指示され、法的な罰則も設けられています。 しかし、現実の採用の現場は、顔写真付きの個人情報、性別、年齢、学歴、住所が記載された履歴書をもとに、採用担当者が評価しています。 学歴が良い、同じ学校の出身者だから、同郷だから、容姿やファッションが会社に好ましい、社風に合いそう、など、仕事の能力に関係のない情報に採否が影響されてしまうケースも少なくありません。 また、評価に当人が当然のことと思い込んでいる「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が、入り込む余地があります。これは誰もが持っている、無意識の偏ったモノの見方であり、気づくことが難しく、完全に無くすことができないと言われています。

ブラインド採用が注目される背景

従来の採用方法では、採用要件に明確に定義できない、採用担当者の好みという主観要素が介在し、似たような人材ばかりが採用されてしまう傾向がありました。もちろん、経験則を元にした評価は重要で、失敗がなく、会社に合った、計算のできる人材を採用できるというメリットもあります。 しかし、社会を取り巻く環境は、ダイバーシティーが求められ、グローバル化、少子高齢化と急速に変化しています。 企業も変化していかなければ、生存競争に生き残れません。均質的な人材だけでなく、従来の採用方法では選考に漏れていた人材を発掘し変化に対応できる強い組織を作り上げていくことが求められています。

そこで、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」を廃し、多様な人材を獲得できる ブラインド採用に注目が集まっています。

ブラインド採用の始まりと事例

ブラインド採用は、海外から始まりました。1970年代、オーケストラ団員は男性ばかりで、女性の占める割合はわずか5%でした。これに疑問を持ったスタンフォード大学のクレイマン・ジェンダー研究所は、採用選考の中で「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が起きているのではないかと考えました。 そこで、演奏者が男性、女性か分からないように、幕で奏者を隠し、ヒールの音が響かないようにカーペットを引き、純粋な演奏能力だけを評価できる環境でオーディションを実行しました。その結果、審査を通過した女性の比率は、50%を超えました。演奏だけを純粋に評価することで、楽団が目指す演奏に近づく目標を達成しました。

入団審査に「男性が好ましい」というルールは設定されていませんでした。今までの採用は、能力以外の部分を評価する「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」が働いており、結果、楽団のパフォーマンスを落としていたことになります。

また、競争の激しい超学歴社会の韓国では、有名大学を卒業しても望む企業に就職することができず、採用評価には履歴書の写真の容姿や縁故も大きく左右すると言われてきました。 そこで、韓国政府は、公正な就職を目指し、公務員や公共団体での選考に「ブラインド採用」の導入を指示し義務化をしました。履歴書から学歴・出身地・写真・家族関係などの記載を排除し採用評価を実施しています。

ブラインド採用のメリット

では、ブラインド採用を導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか? 企業側のメリットと求職者のメリット、デメリットに関して説明します。

企業側のメリット

能力のある人材の確保

ブラインド採用は「能力」のみで判斷する採用方法です。採用担当者の主観を排除することで、前述のオーケストラ団員採用の事例の様に、本当に目指すべき目標のための有能な人材を確保でききます。

採用基準の統一

採用担当者の「主観」という不明瞭な基準を排除することで、採用基準が統一され、応募者に対しても、分かりやすく公平な基準で選考を行うことができます。

企業のブランディングに効果

「多様性」、「公平性」を重視する企業文化を明示することで、社会に良いメッセージを発信し、企業ブランディングに貢献します。結果、多様で優秀な人材も集まりやすくなります。

イノベーションの促進

同質的な従業員で変化が起こりにくかった組織に、多様性が持ち込まれることで変化が発生します。多様性が問われる時代、消費者のニーズに対応できるサービスや組織を作ることができます。

埋もれてしまった才能の発掘

主観による排除のために見逃していた人材の発掘につながります。ターゲットが広がるため採用母集団の拡大につながります。

求職者のメリット

求職者のメリットは、偏見を排除できることです。国籍、人種、性差、出身地、容姿など 本人の責任に由来しない要素で評価されることがなくなり、純粋に自身の能力が評価されます。また、選考基準が明確になり、公平な選考を受けることができます。

一方で、デメリットもあります。能力のみを評価するため、本人の持っている資質や今までの努力を評価されない可能性があります。例えば、学歴を評価しない場合、受験戦争を勝ち抜き有名大学に入学した努力や資質は評価されません。スポーツや文化活動で、努力の末、実績を残したことも評価の対象から除外される可能性もあります。

ブラインド採用を導入する際の注意点と対策

ブラインド採用は、ブランディングや優秀な人材獲得にメリットがありますが、デメリットもあります。また、既存の採用手法と異なるため運用には十分な配慮と準備が必要です。

社員構成のバランスが予測しにくい

ブラインド採用では、性別や年齢を隠して能力のみを評価し採用選考を行います。結果、採用した従業員の年齢や性別に極端な偏りが発生する可能性があります。社員構成が業務に支障をきたす場合には、一部のブラインドを調整するなどの検討も必要です。

採用業務の工数が増加する

ブラインド採用は、個人情報を隠す形で運営する必要があります。公平を期すために、選考過程で個人が特定できるあらゆる要素を慎重に徹底的に排除します。 採用担当者以外のスタッフが、履歴書を含め書類を徹底的にスクリーニングする必要があります。つまり、既存の採用よりも、スタッフを増やし、本人確認やスクリーニングの工程を追加しなければなりません。増加する工数を見越した採用スケジュールと人員計画を立案しましょう。

面接時の注意点

面接時も、厚生労働省が公表している「公正な採用選考の基本」に従い、国籍や家族など「本人に責任のない事項」、宗教、支持政党、尊敬する人物など「本来的に本人の自由であるべき事項」に関しても、選考過程に含めないことに加え、スクリーニングした内容は、 質問しないようにしましょう。

ミスマッチが発生する可能性

能力の高い応募者を発見できるブラインド採用ですが、入社後に社風にマッチせずに離職してしまう可能性もあります。 これを防止するためには、応募者に社風を理解いただいた上で、応募いただくことが大切です。採用のホームページや会社説明会で、自社がどのような人材を望み、どのような方針なのか、社風を、いままで以上に詳細に分かりやすく伝えることに注力しましょう。

ブラインド採用は、企業に多様性をもたらしイノベーションを促進する施策として活用できるでしょう。一方で、既存の企業文化を大きく変える必要もあり、運用には配慮が必要です。デメリットも十分に検討した上で、自社にあったブラインド採用を設計しましょう。

  • 人材採用・育成 更新日:2022/01/20
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