多様な働き方を実現する「従業員シェア」における法律・労務管理基礎知識とポイント
厚労省は、労基法の38条1項(労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する)の解釈について、「『事業場を異にする場合』には、『事業主を異にする場合』も含む」旨の解釈通達を出しています。つまり、事業主が異なっていても労働時間は「通算して」計算する必要があるということです。
さらにガイドラインでは、「本業企業、兼業・副業企業にかかわらず、通算の結果、法定時間外に労働させた方が労基法上の法的責任を負う」としています。
つまり、一般的な事例としてよくある「他社でフルタイムで働いている従業員のシェアを受け入れる」という場合には、受け入れ側に負担が大きくなります。(下図 パターン②)
さらにガイドラインでは、「本業企業、兼業・副業企業にかかわらず、通算の結果、法定時間外に労働させた方が労基法上の法的責任を負う」としています。
つまり、一般的な事例としてよくある「他社でフルタイムで働いている従業員のシェアを受け入れる」という場合には、受け入れ側に負担が大きくなります。(下図 パターン②)
では、どのように労働時間を把握すべきでしょうか。
ガイドラインと解釈通達では、副業先の労働時間の把握には客観的エビデンスは不要で、労働者からの自己申告のみで把握すれば良く、申告漏れや申告内容に誤りがあっても使用者に責任はないとされています。
これは「自社以外での労働に対する指揮監督権がないこと」に加え、「使用者が労働時間について知らないのであれば故意は存在せず、労基法違反は成立しない」とする法解釈に基づいています。
他方で、民事上の賃金請求に関する裁判例として、18年(平成30年)には、「A社で雇用されていた従業員がB社での副業・兼業をした上で、労働時間の通算を前提にB社に対して割増賃金の請求を行った事案」がありましたが、「使用者に兼業・副業の状況についての確定的な認識がない」として請求棄却となった事案もありました。
ガイドラインと解釈通達では、副業先の労働時間の把握には客観的エビデンスは不要で、労働者からの自己申告のみで把握すれば良く、申告漏れや申告内容に誤りがあっても使用者に責任はないとされています。
これは「自社以外での労働に対する指揮監督権がないこと」に加え、「使用者が労働時間について知らないのであれば故意は存在せず、労基法違反は成立しない」とする法解釈に基づいています。
他方で、民事上の賃金請求に関する裁判例として、18年(平成30年)には、「A社で雇用されていた従業員がB社での副業・兼業をした上で、労働時間の通算を前提にB社に対して割増賃金の請求を行った事案」がありましたが、「使用者に兼業・副業の状況についての確定的な認識がない」として請求棄却となった事案もありました。
大きく見ると以下のような内容です。
①【A社の1カ月の法定外労働時間】と【B社の1カ月の労働時間(所定内+所定外)】の合計が単月100 時間未満、複数月平均 80 時間以内となる範囲内において、両社の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定。
②A社は自らの事業場における法定外労働時間の労働について、B社は自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を支払う。
複雑なようですが、要するにB社では労働時間について「あらかじめA社で設定した時間働いてきた」と扱えば良く、逐一その日の労働時間を確認しなくても良いということになります。
ただし、あくまで簡便な労働時間の管理方法であって、割増賃金などの法的責任を免除しているわけではないので注意が必要です。
①【A社の1カ月の法定外労働時間】と【B社の1カ月の労働時間(所定内+所定外)】の合計が単月100 時間未満、複数月平均 80 時間以内となる範囲内において、両社の事業場における労働時間の上限をそれぞれ設定。
②A社は自らの事業場における法定外労働時間の労働について、B社は自らの事業場における労働時間の労働について、それぞれ割増賃金を支払う。
複雑なようですが、要するにB社では労働時間について「あらかじめA社で設定した時間働いてきた」と扱えば良く、逐一その日の労働時間を確認しなくても良いということになります。
ただし、あくまで簡便な労働時間の管理方法であって、割増賃金などの法的責任を免除しているわけではないので注意が必要です。
「管理モデル」と「安全配慮義務」の関係のように相反するとも思える内容もあり、兼業・副業を従業員に認めることは企業側に管理コストとリスクをもたらすものという印象を抱く方もいるでしょう。
しかし、裁判例からは「企業には従業員の兼業・副業について裁量はない」とされ、原則として兼業・副業を禁止・制限することはできません。
例外的に、労務提供上の支障が生じる場合、競業によって自社の利益が損なわれる場合や秘密の漏えいがある場合などには禁止することもできますが、それも「なんとなく危なそう」ではなく、具体的な危険性の存在が必要です。
また「正社員に限って兼業・副業を認めたい」という声もよく聞かれますが、上記の例外的に認められる禁止理由の内容からも分かるように、むしろ非正規社員の方が禁止理由に当たらないことが多く、不許可とすることは難しいでしょう。
しかし、裁判例からは「企業には従業員の兼業・副業について裁量はない」とされ、原則として兼業・副業を禁止・制限することはできません。
例外的に、労務提供上の支障が生じる場合、競業によって自社の利益が損なわれる場合や秘密の漏えいがある場合などには禁止することもできますが、それも「なんとなく危なそう」ではなく、具体的な危険性の存在が必要です。
また「正社員に限って兼業・副業を認めたい」という声もよく聞かれますが、上記の例外的に認められる禁止理由の内容からも分かるように、むしろ非正規社員の方が禁止理由に当たらないことが多く、不許可とすることは難しいでしょう。
雇用関係はないにもかかわらず、実質的に企業側(発注側)の指揮命令下にあるフリーランスは「偽装フリーランス」と呼ばれます。
働く場所や時間、仕事の進め方などを命じられ、事実上の被雇用者であるにもかかわらず、労基法上の責任が生じない「フリーランス」と偽装して発注するものです。
このような偽装フリーランスに対しても、就労実態に照らして客観的に「労働者」と判断される場合には、労働基準法などの労働関係法令が適用されます。フリーランスガイドラインでは、偽装フリーランスに対し、適切に労働関係法令を適用するために「労働者性の判断基準」とその判断方法を明確にしています。上図の赤枠を出発点とし、発注先が「フリーランス」なのか、事実上の労働者(被雇用者)なのかを判断する必要があります。
働く場所や時間、仕事の進め方などを命じられ、事実上の被雇用者であるにもかかわらず、労基法上の責任が生じない「フリーランス」と偽装して発注するものです。
このような偽装フリーランスに対しても、就労実態に照らして客観的に「労働者」と判断される場合には、労働基準法などの労働関係法令が適用されます。フリーランスガイドラインでは、偽装フリーランスに対し、適切に労働関係法令を適用するために「労働者性の判断基準」とその判断方法を明確にしています。上図の赤枠を出発点とし、発注先が「フリーランス」なのか、事実上の労働者(被雇用者)なのかを判断する必要があります。
- 労務・制度 更新日:2021/11/10
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