コロナ禍で急拡大!「テレワーク」における法律・労務管理基礎知識とポイント
● Q:テレワークを導入するためには就業規則の改定が必要なのか?
A: 法的に、「必要か」というと、必ずしも必要というわけではありません。
しかし、実際にテレワークをうまく回していくためには、テレワーク規程などのルール策定をしておくことが極めて重要となってきます。
テレワークをただ単に「事業場外(オフィスの外)で仕事をすること」と捉えるとすると、「就業場所」の定めは、就業規則に必ず必要な記載事項ではないため、就業規則改定が法的に「必要」というわけではありません。
ただし、特定の労働時間制度を利用する場合や始業・終業時刻を変更する場合、従業員に費用を負担させるものがある場合などの特別なルールを設定するときには、改定が必要になります。
その他にも、服務規律、セキュリティなどの観点から、実際上はルール策定をしておくことが極めて重要です。実際に、ルールを定めた企業と定めていない企業では、テレワークでの生産性に差が生じたというデータもあるようです。
● Q:就業規則の改定が法的に必要ないのであれば、何も対応しなくて良い?
A: 「就業の場所」は労働条件通知書の明示事項であるので、仕事の開始の段階でテレワークをするような場合には、労働条件通知書にその旨を記載する必要があります。
労働条件通知書には、「雇入れ直後」の労働条件を記載する必要があるため、仕事開始の段階でテレワークを行う場合には、「事業場、自宅、その他会社が認めた場所」などと「就業の場所」に記載することが必要です。
仕事の開始のあとからテレワークを行うことになった場合には、改めて上記のように「就業の場所」を記載した労働条件通知書を交付することは、法的には不要ですが、従業員の理解のために改めてこれを交付することも望ましいと言えます。
● Q:テレワーク中の労働時間の把握・管理はどうする?
A: テレワーク中も労働からの解放が保障されていない限りは、「労働時間」です。
ただし、改定テレワークガイドラインでは、自己申告による把握・管理も柔軟に認めています。
テレワーク中は社員が働いている姿を直接見ることができないため不安になる方もいらっしゃると思いますが、休憩時間や休日などのように「労働からの解放」が保障されていない限りは、たとえ家の中の待機時間であっても労働時間として扱う必要があります。そのため、労働時間の適正な把握・管理が求められます。
テレワーク中の労働時間の把握・管理については、改定前のテレワークガイドラインでは原則としてPCログやタイムカード等の客観的方法によるとし、自己申告は例外で、その場合には定期的な実態調査などの措置を要するとしていましたが、改定テレワークガイドラインにて一定の緩和が行われました。
どのような緩和が行われたのか、改定テレワークガイドラインのポイントを見ていきましょう。
上記の②(※)の箇所に注目してください。
改定テレワークガイドラインでは、パソコンの使用時間など客観的な事実と、自己申告された労働時間の間に著しいかい離があることを把握した場合には、労働時間を補正することが必要とされています。
ここでいう「把握した場合」というのは、例えば申告された時間以外にメールが送信されている、始業・終業時刻外で長時間パソコンにログインしていた場合など、客観的に見て申告された労働時間と実際の労働時間にかい離があることを使用者側が確認できる状態を指します。
逆に言えば、そういった事実が把握されていない場合は「労働者が申告した労働時間」をもとに労働時間を計算し、賃金を支払っていれば問題はないということになります。
改定テレワークガイドラインでは、パソコンの使用時間など客観的な事実と、自己申告された労働時間の間に著しいかい離があることを把握した場合には、労働時間を補正することが必要とされています。
ここでいう「把握した場合」というのは、例えば申告された時間以外にメールが送信されている、始業・終業時刻外で長時間パソコンにログインしていた場合など、客観的に見て申告された労働時間と実際の労働時間にかい離があることを使用者側が確認できる状態を指します。
逆に言えば、そういった事実が把握されていない場合は「労働者が申告した労働時間」をもとに労働時間を計算し、賃金を支払っていれば問題はないということになります。
● Q:テレワーク中によくある中抜け時間への対応は?
A: 休憩として扱ったり、時間単位年休として扱うという方法があります。
が、いずれも手続き上のコストが大きいため、改定ガイドラインに沿った柔軟な対応に切り替えると良いでしょう。
テレワーク中は、家事などやむを得ず中抜けをすることがよくあります。
これを休憩時間として扱う場合は、始業・終業時刻が変更となる可能性もあるため、始業・終業時刻を変更し得る旨を就業規則に記載しておく必要があります。特に、中抜け時間を休憩時間として扱うことにより、労働時間がずれ込み、22時以降の深夜時間になる場合があるため、注意しましょう。
また、時間単位年休として扱う場合には労使協定が必要となり、手続き上のコストが大きいことが問題となるでしょう。
改定テレワークガイドラインでは「中抜け時間」についても労働時間の把握・管理の程度が緩和されています。
すでに紹介したように、「事業場外みなし」を活用することも管理コストの大きな削減につながります。
同制度を使う場合には「労働時間を算定し難い場合」という条件が必要な上、テレワーク中の労働者に適用する場合には「通信機器を常時通信可能な状態にしておくよう使用者からの指示がない場合」であるとされ、よく内容を読めばそうではないのですが、「通信がつながる状態である場合には常にこの要件を満たさない」と誤解されることが課題となっていました。
改定テレワークガイドラインでは「通信機器を常時通信可能な状態にしておくよう使用者からの指示がない場合」という条件の記載は残しながらも、この条件を満たす場合を例示し、より分かりやすく周知しています。
同制度を使う場合には「労働時間を算定し難い場合」という条件が必要な上、テレワーク中の労働者に適用する場合には「通信機器を常時通信可能な状態にしておくよう使用者からの指示がない場合」であるとされ、よく内容を読めばそうではないのですが、「通信がつながる状態である場合には常にこの要件を満たさない」と誤解されることが課題となっていました。
改定テレワークガイドラインでは「通信機器を常時通信可能な状態にしておくよう使用者からの指示がない場合」という条件の記載は残しながらも、この条件を満たす場合を例示し、より分かりやすく周知しています。
「阪急トラベルサポート事件」(最高裁平成26年(2014年)1月24日・海外ツアーバス添乗員の事案)
海外バスツアーの添乗員である従業員が、時間外勤務手当などの支払いを求めて旅行会社を提訴した事件です。
使用者である旅行会社は、添乗業務に「事業場外のみなし労働時間制」を適用されると主張しましたが、従業員は添乗業務は「労働時間を算定し難いとき」には当たらないと主張し、争っていました。
判決では、予定された旅行日程の途中で変更を要する事態が生じた場合、その時点で会社の指示を受けるよう求めていたことや、旅行終了後は添乗日報を提出するため、業務の遂行状況などの詳細な確認が可能であったことから、事業場外のみなし労働時間制の適用は認められませんでした。
海外バスツアーの添乗員である従業員が、時間外勤務手当などの支払いを求めて旅行会社を提訴した事件です。
使用者である旅行会社は、添乗業務に「事業場外のみなし労働時間制」を適用されると主張しましたが、従業員は添乗業務は「労働時間を算定し難いとき」には当たらないと主張し、争っていました。
判決では、予定された旅行日程の途中で変更を要する事態が生じた場合、その時点で会社の指示を受けるよう求めていたことや、旅行終了後は添乗日報を提出するため、業務の遂行状況などの詳細な確認が可能であったことから、事業場外のみなし労働時間制の適用は認められませんでした。
● Q:テレワーク中の仕事の状況は監視できる?
A: できないわけでないが、従業員への説明や、テレワーク規程などに定めをおくことが適当です(特に、PCのカメラ機能を用いるような場合には、要注意)。
また、就業時間中及びその前後以外は、監視をしないようにする必要があります。
従業員にもプライバシーがあるため、監視は社会通念上相当な範囲に限って可能とされています。
例えば、マウスカーソルの動きを監視するような方法であればプライバシーには触れる程度は小さいので、特段問題はないものの、テレワーク規程(職務規程に含まれるテレワークに関する項目)に含めておくとリスクを低減できると思われます。
一方、カメラを用いて監視する場合は高度なプライバシー情報を取得することになりますので、従業員本人の同意を取得することや、家の中が映らないようにするなどの配慮が必要でしょう。
- 労務・制度 更新日:2021/11/10
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