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⼈材確保が難しい時代だからこそ「短時間正社員」という働き⽅で⼈材流出をSTOPへ!

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結婚や出産、介護などの様々な理由によって現状の労働条件では勤務を続けることが難しい正社員の⽅はどの業界でも多いものです。ただでさえ人材の流動化が進み、労働人口が減少しつつある今、優秀な人材の流出を食い止め、長く働ける環境をつくることが、企業にとっての重要な課題になっていることは間違いありません。

そこで⼈材流出を食い止めるひとつの⽅法にもなる「短時間正社員」という制度を積極的に導⼊されている株式会社ドクタートラストのみなさんに、短時間正社員の働き方やメリットについてお聞きしました。

短時間正社員制度の潜在価値

短時間正社員を導入した背景についてお聞かせください。

小橋知子(以下、小橋):当社は、管理職を含め全従業員の7割が女性なので、入社後に結婚や出産を迎える方も多くいたことから「短時間正社員制度」を導入しました。短時間正社員制度とは、正社員雇用でありながら、フルタイムではなく短い勤務時間による働き方のことです。導入当初は週の労働時間を25時間以上としていましたが、ここ数年の間に下限を20時間まで下げた短時間勤務が可能になっています。そのきっかけになったのが、当社で広報課編集長を務める“蜂谷未亜”の存在でした。

蜂谷未亜(以下、蜂谷):私は、執筆業との兼業を前提にドクタートラストに入社しました。当時は通常の正社員同様にフルタイムで働いて、執筆業は週末や夜の時間を使っていたのですが、執筆の仕事が増えてきて今までの働き方が難しくなってきた旨を社長に相談しました。すると、今まで週25時間勤務だった短時間正社員制度を週20時間まで下げられるので働き続けられないか?と提案してくださり、快諾しました。

兼業という働き方にとっても短時間正社員という選択肢が有効なのですね。他にも兼業による短時間正社員の方はいらっしゃるのですか。

小橋:元々、当社は副業や兼業を認めていますが、短時間正社員による兼業の働き方は蜂谷が初めてです。今は、短時間正社員制度を利用している方はほとんどが育児をしながら働くケースですが、今後も蜂谷と同じようなケースの申し出があった場合は、ひとつのモデルケースが出来上がっているのでスムーズに対応できると思います。

蜂谷:働き方改革が推進されている中で、副業や兼業を希望する方はこれからさらに増えていくと思います。そのニーズに対応していくためにも、新たな働き方を体験している私自身が兼業でもしっかりと仕事において成果をあげられることを証明していきたいです。

柔軟な働き方を可能にする短時間正社員制度ですが、勤怠管理など仕組みの部分で大変なことはありませんでしたか。

小橋:勤務時間に応じて給与が変動するという点を除いて、基本的なルールというのはフルタイムの正社員と変わりません。当社の場合は、在宅ではなくオフィス出勤なので、マネジメントに関してもスムーズに対応できています。ただし、導入当初は勤怠管理が大変でした。社会保険の加入条件として週の所定労働時間の下限は20時間と決まっていますが、社員ごとにシフト制で勤務曜日や時間が異なります。勤怠管理システムを導入しているので、アナログのタイムカード管理よりは負担が少ないものの、個々に設定を変える必要があるので、そこに最もパワーがかかりました。ただ設定さえできれば後は慣れなので、その後の混乱はありません。

短時間正社員を成立させるための評価制度や、フルタイム社員との関係構築などでの工夫されたことはありますか?

小橋:評価制度でいうと、当社においては「短時間社員だから」といった概念はまったくありません。短時間社員もフルタイム社員と同様の枠のなかで評価しています。短時間正社員は限られた時間の中で精一杯頑張ろうとする姿勢が強く仕事も早いため、役席者が多いという印象もあります。

一方、フルタイム社員との関係性の部分でいうと、当初は正直なところ軋轢もありました。短時間社員ができなかった分を周りの人がカバーするとなると、「短時間社員のせいで残業になった」などと考えがちです。しかし、そもそも上司が仕事の割り振りの際に個人の力量、時間を考慮して与えることができれば、個々が割り振られた仕事を時間内に終わらせることができます。そうすれば、誰も不満に思うことはありません。むしろ、配分が少ない分、早く終わった場合にフルタイム社員の仕事を巻き取ってあげるといったシーンも生まれ、短時間社員が感謝されていることも多々あります。

短時間正社員が与えるシナジー効果

短時間正社員制度を導入してから色々な変化があったと思いますが、企業側にとってのメリットはどのような点が挙げられますか。

小橋:企業側にとってのメリットは、やはり優秀な社員の離職を抑制できることだと思います。現在、当社で働く社員の平均年齢は31歳です。その大半が女性ということもあり、タイミング的にも結婚や出産をする社員が年々増加しています。こうした出産などの適齢期を迎えた社員が、退職という選択肢ではなく育児休暇などを経て、安心して戻って来られる環境づくりが何より大切です。その一環として、短時間正社員制度があれば、20代後半や30代前半のある程度キャリアを積んだ優秀な社員を雇用し続けることができます。また、制度ではなく設備による従業員支援として託児室も完備しました。その結果、育休取得後にほとんどの社員が復帰しています。

短時間正社員制度だけではなく、託児室を完備した背景にはどのようなことがあったのですか。

小橋:数年前、出産を機に短時間正社員として復帰を考えていた課長職の女性社員がいました。しかし、昨今の待機児童問題で保育園が全く決まらず、職場復帰が難しい状況に陥ってしまったのです。非常に優秀な社員だったので、何とか復帰できる方法はないかと模索した結果、社内に託児室をつくることにしました。その託児室の保育士として採用したのが吉沢夏希であり、現在は彼女も育児をしながら短時間正社員として働いています。

託児室はどのような手順をふんで設置されたのですか?

小橋:設置に際しては大きく「手続面」「整備面」がありますが、このうち手続面につきましては、東京都(東京都福祉保健局)が行っている企業内託児所の説明会に参加し、必要な書類などを確認しつつ進めていきました。託児所の整備面については、保育士の吉沢が中心となって行いました。具体的に実施したのは次の通りです。

・会議室の一室を保育室にする

・床を怪我防止のクッションマットにする

・0〜2歳児用おもちゃを揃える

・お昼寝用のベッドを用意

・哺乳類の消毒グッズを用意

・オムツのゴミ箱の設置とおむつの捨て方の確認

・おむつ替えスペース確保

・補助便座設置

・保育関連書類のフォーマット作成(カリキュラムや各児童の成長記録、保護者との連絡ノートなど)

・電子レンジ、冷蔵庫の設置

・周辺のお散歩コース下見

ひとりの保育士で3人の子どもまで見られるので、複数の社員が利用できるようになりました。社員以外にも当社顧客にご紹介している産業医のなかにも利用されている方もいます。また、立上げ時の保育士は吉沢のみでしたが、現在は保育士資格を持つ社員が3人おり、託児所で働いたり、託児所の保育士が足りているときは事務作業などをしたり、臨機応変な働き方ができています。

吉沢さんも短時間正社員として働いているとのことですが、育児中の吉沢さんと兼業で働く蜂谷さんそれぞれの視点から従業員側のメリットを教えてください。

吉沢夏希(以下、吉沢):私は、託児室の立ち上げから保育士として参画させていただきました。その後、私自身も出産、育児休暇を経て現在はフルタイム社員よりも1時間短い勤務時間の短時間正社員として働いています。託児室で預かるお子さんがいない場合でも、一般事務としての業務を与えていただき、働き続けられる環境をつくっていただいたので本当に感謝しています。また、わが子の急な発熱などがあった場合も、有給休暇や看護休暇などを取得できるので安心して仕事と育児が両立でき、周囲の理解もあるためストレスは全くありません。

蜂谷:私が兼業として行っている執筆業は、どうしてもひとりでの作業になるため、そればかりだと周囲とのコミュニケーション減り、社会との断絶に繋がりかねません。組織で働くことで気持ちの切り替えができ、フリーランスには出来ないことも、仲間と協力して成し遂げることができます。また、今は広報の仕事を担当しいているため、執筆業で培ってきた経験を活かすこともできています。短時間正社員制度のおかげで、自分の得意なことを兼業というカタチで実現でき、尚且つそれぞれの仕事で相乗効果が得られていることがとても嬉しいです。

あらゆる人生に適応する働き方

育児だけではなく、副業や兼業にとっても短時間正社員制度は有効な方策といえますね。

蜂谷:短時間正社員制度と副業や兼業との相性は非常に良いと感じています。もちろん、どちらかの業務に支障をきたさないということが前提となりますが、業務の切り替えでリフレッシュすることもできますし、複数の経験が得られるのは大きな魅力です。また、私の勤務体系が火曜と木曜はフルタイムで働き、もう一日は5時間というシフトを組んでいるのですが、この限られた時間の中でいかに成果をあげるかという思考が強くなりました。時短勤務でも他に遅れを取らないようにしたいという意欲が芽生え、生産性の向上にも繋がっていると思います。

限られた時間の中でいかに効率よく成果をあげるかは、多くの企業が追求している課題でもあるので、非常に頼もしい存在ですね。

小橋:限られた時間の中で成果をあげたいという姿勢は、他の短時間正社員からもよく見られます。短時間正社員は退勤しなければならない時間が明確で、残業ができないパターンがほとんどです。そのため、一日のスケジュールが緻密に組まれており、必然的に一分一秒を大事にする動きになることで、高いパフォーマンスを発揮しています。私たち人事部は、そんな短時間正社員に負担をかけないように、個々の得意分野を把握し、適材適所を見極めながら業務を振り分けるように心がけています。

育児による短時間正社員の場合は、一定期間を経てフルタイムの正社員に戻るケースもあるのでしょうか。

小橋:短時間正社員からフルタイムの正社員へ戻ったケースはあります。その場合は、業務量を増やしていく必要があるので、しっかりと今後の働き方の認識を本人と揃えなければなりません。当社は、毎月必ず上長との1on1の面談を実施しており、目標の進捗や相談ごとなどを話し合っているので、個々のコンディションを可視化することができています。そのため、時短勤務からフルタイムになっても生産性が低下することなく、高いパフォーマンスを発揮できるのです。

人生のターニングポイントを迎えても働き続けられる制度があることで、従業員の方々にとっても働く意欲やモチベーションに繋がりますよね。

吉沢:私は託児室の保育士として入社しましたが、もし保育園で働いていたとしたら短時間で働くことは簡単なことではなかったと思います。国内における待機児童の問題はまだまだ解消できていませんから、たとえ育児休暇を取得できたとしても、復帰するにはフルタイムの勤務が求められるケースは少なくありません。事実、復帰せずに退職を選択する保育士の方が多いので、私のように企業の託児室などで働くという選択肢が増えたらとても素敵なことだと思います。

小橋:短時間正社員制度の導入に伴って、当社のように託児室を完備して保育士を採用する場合は、その保育士が育児をする側になった場合の対策を練っておくことが重要です。私たちがとった対策は、保育士を複数人採用することと、託児室を利用するお子さんがいなくなってしまった場合でも保育士が働き続けられるように、事務職のポジションを用意したことです。こうした対応策を準備することで、誰もが安心して短時間正社員の働き方を選択できるようになるでしょう。

優秀な人材の流出を防ぐ「短時間正社員制度」

ダイバーシティの観点から、女性が社会で活躍する機会はここ数年で大幅に増加しています。一方で、出産や育児などの理由により、キャリアを積み上げてきた企業を退職せざるを得ないケースも少なくありません。また、働き方改革により柔軟な働き方を求めて人材の流動化も加速しています。このような時代背景から、終身雇用が崩壊しつつあり、転職へのハードルが下がっています。それは企業にとっても、貴重な人材を失うことに繋がる大きな課題の一つといえるでしょう。「短時間正社員制度」は、大切な社員の雇用を守り、育児と仕事の両立を可能にし、増えつつある兼業や副業にも適応できる万能な制度のひとつです。優秀な人材を手放さないためにも、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

  • 労務・制度 更新日:2021/11/09
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