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CHRO(最高人事責任者)とは何か?求められるスキル・役割を徹底解説

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多くの企業が、経営戦略・事業戦略に基づいた人事戦略に重きを置いています。それに伴って重要視されるようになったのがCHROという役職です。しかし、その役割について明確に知る人はまだ多くありません。

  • CHROとはそもそも何なのか?
  • なぜ多くの企業に必要とされているのか?
  • 求められるスキルやノウハウとは何か?

本記事では、CHROの基礎知識を余すことなく解説します。この機会に、「CHROってなに?」という疑問を解消してください。

CHRO(最高人事責任者)とは?

CHROは「Chief Human Resource Officer」の略です。日本語での意味は「最高人事責任者」。つまり、人事部門における執行責任を持つ人材を指します。

ここ数年、日本でもCHROやCEO、CFOなどの役職を設ける企業が増えています。シリコンバレーを中心に広がった「経営と執行を分離する」という考え方に基づき、経営・執行の責任の所在をはっきり分けることで、経営意思決定と事業反映の迅速化などを実現しようとしているわけです。

ちなみに、CEOとは「最高経営責任者」、CFOとは「最高財務責任者」のことです。企業によってはCHROを「CHO(Chief Human Officer:最高人材責任者)」と表現する場合があります。意味は右に同じです。

HRBP(HRビジネスパートナー)との違い

CHROに類似した役割にHRBP(HRビジネスパートナー)というものがあります。HRBPの役割を分かりやすく言うと、「戦略的人事を実現するため、経営者のビジネスパートナーとして活躍する人材のこと」です。

両者の違いは、CHROは執行役員でありHRBPはあくまでビジネスパートナーである、ということ。CEOの経営意思決定を受けて人事部門における執行計画を立て、その全責任を負うのがCHRO。一方、HRBPは「コンサルタントのような立ち位置」から経営戦略と人事マネジメントを連動させながら、事業に価値貢献するのが使命です。

要するに、HRBPとはCEOとCHROに間に立って経営と人事戦略のバランスを保つのが役割ということになります。

なぜ「取締役人事部長」ではダメなのか?

CHROという役職は最近になって登場したわけではあません。日本では昔から「取締役人事部長」や「執行役員人事部長」といった役職が存在し、ポジションとしてはCHROとほとんど同じです。そうした呼称が影を潜めていった理由は「ビジネスにおける人事の役割の変化」にあります。

従来の人事部門では組織全体の人材の管理を中心として、入職から退職までの情報管理、各種人事資料の作成及び申請、人材情報の取りまとめが主な業務でした。人事が経営に絡むという話は、無いに等しかったのです。

人事戦略の重要性が世界で叫ばれるようになったのは2000年代に突入する3年前、ミシガン大学のロス・スクール・オブ・ビジネスで教授を務めるデイビッド・ウルリッチの著書『MBAの人材戦略』がきっかけです。

その後日本では、2005年から「タレントマネジメント」が話題になり始め、人事部門は単に人材管理を行うだけでなく、経営目的の達成に向けたシナリオ(経営戦略)を人材採用や育成、そして組織全体の最適化を図る人事戦略で支える部門として注目されるようになります。このような過去のイメージを払拭する意味でも、最近ではCHROという役職を設けるのが一般的です。

日本での普及率が低い理由

これまでの日本企業は、その多くが「終身雇用」や「年功序列」といった組織体制を主流としており、人材獲得や離職に対する人事戦略はそこまで注力されてきませんでした。また、取締役レベルの人員構成においても、財務・経理部門のトップが人事部門を兼務するという企業も決して珍しくありません。そのため、人事部門は経営層の指示を受けて動くというケースが比較的多く、経営と人事の双方から戦略を立てるようなポジションは希少であったといえます。

しかし、時代は少子高齢化社会による労働人口の減少を受け、働き手(人材)の確保や育成が重要になっています。そこで、採用計画などの人事戦略と経営視点や裁量をもち組織変革ができるCHROが必要とされているのです。

CHROの具体的な役割

経営に欠かせない資源は4つあります。製品やサービスを表す「モノ」、財務を表す「カネ」、あらゆる情報を表す「データ」、そして人材資源を表す「ヒト」です。これら4大経営資源のうち最も重要なのがヒトであり、CHROはいわばヒトを統括し、経営戦略におけるヒトの活用・起用などについてCEOに提案する立場にあります。

CHROの最大の役割は、人事部門を統括的に管理しながら人材情報の隅々にまで精通し、経営戦略に絡めた適材適所やその他の人事戦略を推進していくことです。

他にも以下のような役割があります。

人材育成の方法論を確立する

先に登場した「タレントマネジメント」という言葉は、人材ごとのタレント(才能や資質)とキャリア(経歴や経験)を情報として管理しながら、経営戦略への貢献を促すための人材育成や人材配置、さらには人材の定着までを包括した人事戦略です。

中でも、既存の人材資源をフル活用しながら生産性を高め、ビジネスに価値提供する人材育成は特に重要な項目になります。CHROは自身の経験や知識を駆使し、世界中のベストプラクティスを参考にしながら独自の人材育成方法論を確立するという役割を担っています。つまりは、企業ごとにマッチした人材育成を開発することでビジネス全体の底上げを促し、CEOが考える経営戦略の実現に向けた基盤を作り上げるのです。

人事戦略の執行と進捗管理

CHROは人事戦略における全ての責任を負いながら、執行計画の立案、戦略の執行、進捗管理などを行います。さらに、執行結果を受けて要因分析を実施し「なぜ目標を達成できたのか?なぜ達成できなかったのか?」を考え、次の人事戦略へ活かしていきます。人事戦略では採用活動や人材配置などを絡めながら、俯瞰的な視点を持った計画立案が強く求められます。

人事部門のブランディング

最近では、人事部門のブランディング活動もCHROの役割の一つになっています。人事は独自にブランディングを実施することで従業員エンゲージメントを向上(内部施策)しながら、採用活動において競合優位性を保てるように企業価値を高めていく活動(外部施策)を展開する必要があります。

このブランディングを率先して行うのがCHROであり、旧来の「取締役人事部長」よりも圧倒的に幅広い経験・知識・スキルが求められる役職なのです。

CHROに求められるスキルやノウハウについて

日本企業における各執行役員の呼称がCHROやCFO、CTO(最高技術責任者)などに変化した背景にあるのは、CEOだけでなく各執行役員に「ビジネス感覚」が求められるようになったからです。

従って、前述のようにCHROには旧来の執行役員とはまた違ったスキルやノウハウが必要となります。

また、CHROには他の執行役員とは少し違ったスキルやノウハウが求められるのが一般的です。ここではCHROに必要な6つのスキル・ノウハウを解説します。

経営戦略を人事戦略へと落とし込むための「ビジネス感覚」

まず、CHROにとって絶対に必要なスキルが「ビジネス感覚」です。これはCEOと同じ視点に立って経営戦略・事業戦略を理解し、人事戦略へと落とし込む、あるいはボトムアップで経営戦略・事業戦略を組み立てられる能力を指します。

経営へ積極的に関わり、時にはCEOにとっての良き理解者やビジネスパートナーになることが求められます。

各事業部門のビジネスを理解した上での「マネジメント能力」

CHROは本当に幅広いスキル・ノウハウが必要で、人事部門への理解が深いだけでは足りません。各事業部門のビジネスや役割、プロセスなどを理解した上で組織横断的なマネジメント能力を発揮しなければならないのです。そのため、CHROは各執行役員の中でも稀有な存在かもしれません。

人事戦略の執行に必要な「人事・労務の基本知識」

人事戦略の執行のベースとなる、人事・労務への基本知識も欠かせません。具体的には、労働基準法をはじめとする労働法などの法律関連の知識は必要不可欠。これらは、労働環境や雇用の変化により改正されることも多いため、常に最新情報をチェックすることも重要です。

最近では働き方改革やCOVID-19感染拡大により、ワークスタイルに多様性が生まれています。それだけではなく、「人間の多様性」も受け入れなければならない時代です。その中で必要なのは臨機応変な対応力よりも、誠実かつ確実な人事・労務を実現するための基本知識です。

ビジネスの課題・問題に向き合う「論理的思考能力」

最近の傾向として、執行役員にエンジニア出身の方が多いのをご存知でしょうか?

「IT系企業の成長が目覚ましい」という理由もありますが、エンジニアに共通しているのが「論理的思考能力が染み付いていること」です。ビジネスの課題・問題に向き合う時、感情先行ではなく論理的思考を用いて物事を組み立てるように考える能力が、CHROにも無くてはならないものです。

人事のみならず組織全体を牽引する「リーダーシップ」

CHROは執行役員でありながら、全従業員の代表者・代弁者でもあります。経営側に偏ってはいけませんし、かといって経営視点も持たなければいけないのでバランスを保つのがとても難しい役職です。ですから、人事・労務の経験を持ちながらプロジェクトマネージャーを経験しリーダーシップを発揮できる人材は、CHROとして重宝されます。

人材の本音を引き出す「コミュニケーション能力」

全てのビジネスパーソンにとって、コミュニケーション能力は重要です。一方で、CHROに求められるのは単なる協調性ではなく、人材の本音を引き出しながら人材資源における課題・問題を顕在化するようなコミュニケーション能力となります。このため、心理学に精通しているCHROは頼れる存在です。

偏見を持たず常にフラットな思考で、人材ごとに「何がその人の承認欲求を満たすのか?」を見極めることに長けている必要があります。

多様なキャリアを持つ人材こそCHROに向いている

CHROあるいはそれに近しい役職に就いている人の中に「長年人事部門に従事してきた」と、キャリアが人事一色という方は少数派です。CHROの多くは営業なり経理なり、それまで別の道を歩んできて、何の縁か人事部門に就任したという人が多いのです。

実際に、CHROに求められるスキル・ノウハウは多様です。従って多様なキャリアを持つ人材こそCHROに向いていると言えます。

もしも今後のキャリアについて悩んでいて、「自分の持ち味は多様なキャリアを歩んできたことだ」という人がいればCHROを目指してみるのはいかがでしょうか?経営と人材、ビジネス成長に欠かせない2つ存在をつなぐ楔となり、企業・事業の成長へ直接的に貢献できる、大変やりがいのある仕事です。

これからの時代、CHROの質が企業・事業・組織・ビジネスの質を決めるといっても過言ではないでしょう。

  • 経営・組織づくり 更新日:2021/11/23
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