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従業員代表(労働者代表)の選出は適切に!制度内容や注意点を解説!

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中小企業庁の調査では、日本経済を支える企業の内、約99%が中小企業という統計が出ています。残業規制や同一労働、同一賃金などの働き方改革の推進により、最低賃金なども少しずつ改善しつつあります。

一方で、大企業のような労働組合が中小企業にはない場合が多く、それによって従業員の声が就業ルールの改善に反映されないケースが多々あります。その解決策として、労使協定を締結するための「従業員代表制」があるのです。働き方の多様化が進む中で、これからの組織づくりに必要不可欠な従業員代表制の知識アップに繋がるよう、制度の特徴や注意点などについて解説していきます。

出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数

従業員代表制とはどんな制度なのか

健全な働き方を重視する企業の陰で、過重労働やパワハラが横行するような俗にいうブラック企業が問題視されてきた日本。近年では、政府の取り組みの甲斐もあり改善傾向にありますが、常態化してしまった組織内では過労ともいえる働き方が当たり前となり、最悪の事態にならなければ気付けないケースも少なくありません。経営陣に対して異議を唱えることができずに耐えている従業員がいるのも現状です。

しかし、組織内での就業規則や労働条件に関する課題を規整する際、従業員の代表者が意見できる仕組みがあれば、働く側にとってもより居心地の良い環境づくりが可能になります。それを実現するための制度が、「従業員代表制」です。

労働組合がない企業が協定を結ぶための制度

従業員代表制は、中小企業などの労働組合がない組織に有効です。なぜなら、労働基準法において、従業員の過半数からなる労働組合がない企業は、従業員の過半数を代表する者(従業員代表)と一定の労使協定(36協定※)を締結することが定められているからです。

また、新たに就業規則を作成したり、変更したりする場合においても、従業員代表制が適用されます。ルールとしては、労働組合がない組織を対象に、従業員代表の意見をしっかりとヒアリングして導き出された結果を書面に記して届け出ること。この一連の流れが法律で義務付けられています。

※従業員の働き方に大きく影響する「36協定」

36協定とは、労働基準法第36条に基づき、「時間外労働や休日労働に関する協定」のこと。これまでは、労働時間は1日8時間、1週間で40時間と決められていましたが、特別条項付きの36協定を締結すれば上限を超えた時間外労働も可能でした。しかし、2020年の4月から働き方改革により、今まで大企業が対象だった労働時間の上限規制が、中小企業を含め全企業に適用されています。36協定届は有効期限が1年間と定められているケースが多いため、2020年4月以降まだ再締結を行っていない企業は、新たな様式で届け出を行うことを忘れないようにしましょう。

出典:「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」ノンブル10参照

従業員代表が選出される方法とは?

組織で働く従業員の代表として意思をまとめ、提言する重要な存在である「従業員代表」。当然のことですが、誰でもいいというわけにはいきません。企業や全従業員にとって重要な役割を担うに相応しい人物を選出したいところですが、選出するうえでのルールは存在します。ここでは、どのような人物が労働代表者になれるのかを解説します。

従業員代表になれる人物

従業員代表は、公正な方法での選出が義務付けられており、キャリアなどにも左右されるわけでもありません。そこには、「管理監督者を選出してはならない」という選出条件が定められています。管理監督者とは、「労働条件の決定やその他労務管理に関して経営者と一体的な関係にある者」と定義されています。そのため、肩書やポジションによって判断されるわけではなく、責任や裁量、職務などの実態から判断されるのが一般的。つまり、管理職といわれる部長や課長などの職位であっても、定義に挙げられているような権限がない場合は、法律上の管理監督者として認められません。

労働基準法で企業側(使用者)が従業員に対して、労働時間・休憩・休日に関する規則を守ることが義務付けられていますが、管理監督者に当たる方に対してはこれらの規定が適用する義務はないのです。このことから、一般的な従業員と同様に、管理職であっても労働条件などの規則が適用されている場合は従業員代表に選出されても問題ありません。

従業員代表を選出する方法

従業員代表の選出時に注意すべき点として、厚生労働省では次の確認事項を挙げています。

1.労働者の過半数を代表していること
2.その選出に当たっては、すべての労働者が参加した民主的な手続がとられていること
3.管理監督者に該当しないこと

上記の3事項については、選出時に必ず確認するようにしましょう。

また、従業員代表は事業所ごとに選出する必要があるため、本社以外の事業所をもつ企業は注意が必要です。選出人数に関しては、選出要件が記されている「労働基基準法施行規則第6条の2」に明確な定めは記載されていません。

従業員代表に選出された方は、36協定に記載された内容について会社と協議し、必要があれば内容の変更を求め、署名・押印の可否を決定する権限が与えられます。ちなみに、従業員代表の任期は法律で特に定められていないので、会社ごとにルールを定めて決定しても問題はありません。

それでは、従業員代表の選出についてどのような方法があるのか、具体的に見ていきましょう。

その1:民主的な方法

従業員代表の選出方法は、管理監督者を除く従業員に対して、「就業規則の意見などを通じて36協定を締結するため従業員代表の選任を実施する」という旨を伝えたうえで、民主的な方法(投票や挙手など)の選出手続きを行います。ただし、あくまで従業員の過半数が代表となる者を支持する事実が明確になる手続きを行っているかが重要なので、話し合いや会議などで決定することも可能です。

その2:立候補者を募る方法

従業員代表の立候補者を募る場合は挙手などの方法もありますが、手を挙げてくれる従業員が誰も現れないというケースは決して珍しくありません。そのため、制度の意図をしっかりと説明し、従業員代表になることで不利益を被ったりはしないと伝えてあげましょう。そうすれば、不安が解消されて立候補を検討してくれる可能性が高まります。「会社の人事労務をより良くする機会に主要人物として関われる」など、希少な経験が得られることを伝えるのも効果的です。

その3:リモートによる承認方法

現在は、テレワークなどを推奨する企業も多く、従業員を集めることが難しい場合は、従業員代表として選出する者に関する同意書のデータなどを送り、承認の有無を回収する方法でも良いでしょう。また、正社員だけでなくパートやアルバイトも手続きに参加できなければならないので、普段からコミュニケーションツールなどのネットワークを整備しておくことをオススメします。

出典:厚生労働省「過半数代表者の要件と選出のための正しい手続」より抜粋

従業員代表を選出する際の注意点

コンプライアンスなどをあまり気にしない企業によくあるのが、信頼関係が築けているベテラン社員を従業員代表として選出するというケースです。このような事態が起こってしまう原因は、そもそも制度についての知見が社内にないこともありますが、選出をするうえで必要な時間と手間に対して、ネガティブな印象を持たれている経営者が多いことも挙げられます。

しかし、こうした会社側の都合で決めてしまう方法では、従業員の過半数から支持されて選出した従業員代表であるとこが明確にできません。いずれ、労働基準監督署の査察が入った際に、企業側(使用者側)は、法律上のプロセスに則り、適切な選出方法で手続きがなされているかのチェックが入ります。代表の選出方法が法律に反しており、規定通りに協定が結ばれていないことが発覚すれば、時間外労働に不服を申し立てる従業員やストライキなどが起きてもおかしくありません。最悪の事態を防ぐためにも、法律に則ったプロセスを踏んだ手続きを行い、客観的に証明できる選出を怠らないようにしましょう。

従業員代表は、より良い人事労務を創るキーマン。

時間外労働や休日労働協定などの36協定から、計画的な有給休暇(年次)の付与といった労使協定の締結を行う当事者になること。また、従業員を代表して就業規則の意見聴取を受けられること。従業員代表になることで、普段ではなかなか得られないエンプロイーエクスペリエンスが、より良い組織作りに貢献するという従業員の当事者意識を育む可能性は大いにあります。責任を負わなければいけないなどのネガティブなイメージを持つ方もいると思うので、まずは、従業員代表制に関する知識や目的を周知することから始めてみてはいかがでしょうか。

  • 労務・制度 更新日:2021/09/22
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