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「ニッチなニーズを持った企業ほど、使ってほしい」 ―学生と企業のマッチングをかなえる「知るカフェ」の活用法とは

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マイナビといえば、採用情報サイトや合同会社説明会など「多くの学生と出会える」場というイメージが強いかもしれませんが、実はもっと少ない人数と深い関係を築ける場があります。

それが「知るカフェ」です。

企業と学生をマッチングするカフェとして多くの利用者を集めているこのサービスは、学生と機密性の高い内容を会話できることや、ターゲット校や若年層を中心に接触できることがメリットです。

一方、より良いマッチングのためには、企業としても意識的に関わっていくことが必要です。本日は意外と知らない「知るカフェ」でできることと、その活用法をお伝えします。

― 星野さん、今日はよろしくお願いします。まず気になったのが、ご経歴です。工学博士からマイナビの営業へと進まれた理由を教えていただいていいですか?


星野: はい。大学院で博士課程まで進んだのですが、そこで博士人材の厳しい現状に直面したことがきっかけです。日本では毎年、約1万5,000人の博士が誕生するのですが、正規雇用で仕事に就けるのはそのうち5割程度で、その他は非正規雇用の割合が圧倒的に高く、学部卒・修士卒と比較しても明らかに就職率が低いことが課題となっています(文部科学省 令和2年度学校基本調査 博士課程の状況別 卒業者数より)。その理由はさまざまありますが、博士人材の能力が正しく社会や企業に認知され切っていないことが大きな要因の一つです。
この現状を何とか変えたい、博士人材と企業が直接対面してマッチングできる場を作りたいというのが入社の動機でした。

営業の現場で採用市場のリアルな面を知った後、「知るカフェ」を運用する株式会社エンリッション(関西拠点のベンチャー企業)との協業に初期から携わらせてもらっています。博士人材だけを対象としているわけではありませんが、優秀な学生と企業との良いマッチングをかなえるという目的は一致しています。

― なるほど。星野さんの目的と、マイナビとして「知るカフェ」を持つことの意義もマッチしたということでしょうか。


星野: そうですね。マイナビは就職情報サイトとして大手ですが、裏を返すと就職情報に対する感度の高い学生はマイナビを通らずに、もっと早い時期に別の手段で就職先を見つけてしまうことが多いんです。マイナビとして、こうした学生を望んでいる企業と学生とをつなぐことには意義がありますね。

「知るカフェ」自体は約8年前にエンリッションが立ち上げたビジネスで、今はマイナビとして協業させていただいています。

― 「知るカフェ」は、カフェとして飲み物や食事を提供していて、その品質に非常にこだわっていると伺いました。リアルな場で企業と学生をつなぐという目的に、それは必要だったのでしょうか?


星野: 必要だと思っています。「知るカフェ」は、東京大学、京都大学、早稲田大学、慶應義塾大学をはじめ、全国の大学内外に20店舗を展開していますが、近隣には他にも同様の学生と企業の交流スペースを提供している事業者がいます。
ですが、そういったところはあくまで場所として貸し出しているケースが多く、店舗スタッフのホスピタリティや提供している飲食物の品質など、カフェとしてのこだわりなどはあまり高くありません。

一方で「知るカフェ」は飲食店として営業許可を取っていますので、そのクオリティにもこだわっています。

― リピートしたくなるということですか?


星野: そうです。学部1〜2年生の頃からお店に来る習慣を持ってもらい、長い時間をかけて自分のキャリアについて考えてほしいと思っているんです。ただ、そんな頃に「就職」と言われてもイメージしにくいですよね。なので、まずはカフェとして好きになってもらうことを重視しています。

また、企業のスポンサー料から経費が出ているため、学生は基本的にドリンクが無料ですし、Wi-Fiも利用できます。結果、年間で延べ47万人もの学生に利用してもらっています。

まずは「課題やレポートを作成するのに便利なカフェが学校の近くにあるな」という認識で来てもらうところから始まって、結果としてキャリアに対してしっかりとした意識を持った学生が育ち、企業にとってもメリットが大きいわけです。

― さらに特徴的だと感じたのが、学生スタッフによって運営されているという点です。ここにはどのような理由があるのでしょうか。


星野: 「知るカフェ」のスタッフは、その近くにある大学の学生から採用しています。東京大学前店はスタッフも東大生だけ、早稲田大学前店は早大生だけ、ということです。

しかも、「知るカフェ」のスタッフの仕事は接客や調理だけではありません。給与計算やシフト管理、在庫管理といったお店の運営全体を任されています。また、協賛してくれている企業が学生に向けて最適なコミュニケーションが取れるようサポートすることもメインの仕事です。

例えば、「知るカフェ」には協賛企業が5名までの学生を集めて小規模なイベントを開催できる「Meetup(ミートアップ)」と呼ばれる人気サービスがあるのですが、この内容について企業専属のサポート担当者として、学生集客のための告知PR文を一緒に考案・リライトしたり、学生を集めてイベントを成功させることに対してミッションを持っています。
また、スタッフ一人ひとりが自分の担当企業を持っていますので、学生からの反応を基に長期的なサポートをしていく体制を敷いているんです。

ここまでの仕事をしてもらうため、キャリアに対する意識が高くて、人物的にも優れたスタッフだけを厳選して採用しています。その選考倍率は13倍と、もはやアルバイトというよりも、超人気の実践型有償インターンシップといった方が正しいかもしれません。

― 学生からの反応を基に、とのことですが、一人ひとりにヒアリングをしているということでしょうか。


星野: 基本は「知るカフェアプリ」によるアンケートです。簡単な意識調査にアプリを通じて答えることで、ドリンクが無料になるという仕組みですね。

「知るカフェ」を利用する学生は基本的に全員答えることになりますので、ある程度の数が集まります。この結果を基にして学生が企業にMeetupをはじめとしたPRのアドバイスをするんです。

また、Meetup開催後にも参加者のアンケートを回収できるため、反応が良かった部分、そうでない部分を分析して次回に生かすこともできます。

― それはすごい。学生からのアンケートを基に、学生が企業にアドバイスをするという構図ですね。


星野: はい。しかも、繰り返しになりますが、キャリアに対する意識の高い学生がそれを行います。また、その結果次第で役職や時給が変動する仕組みですので、責任も負っています。つまり、コミットの深さで言えば、学生の気持ちに精通した採用担当者が1人増えたと考えてもいいでしょう。

― ここまで伺った内容でも、かなり魅力的なサービスだと感じます。うまく活用する方法などはあるのでしょうか。


星野: 最初は、ターゲット校のさらに上澄みにいるトップ層を囲い込みたいという理由で協賛いただくことも多いのですが、単に協賛すれば採用がうまくいくというものではないんです。

サーベイを使って自社のリアルなイメージ像をつかみ、学生スタッフと相談して自社の魅力を適切に伝える方法を考え、Meetupをこまめに実施して長期的な関係を築くことを意識していただきたいと思います。

成功する回、そうでない回があるでしょうが、そういった経験を経てPDCAを回すことで結果的に学生と向き合う力、学生に伝えられる魅力を持った企業になり、採用力がついていく… ということ自体が一番の魅力だと考えています。

― とはいえ、企業側にとっては、結構な手数が必要になりそうですね。


星野: そうなんです。ただ、「知るカフェ」のMeetupは不特定多数に向けた企業説明会とは違い、先ほどもお話ししたように5名までの少人数で行いますので、情報の浸透率も高いですし、機密性も高いのでかなり濃い話や裏話もできてしまうんです。

人事からの公式な発信としてはなかなか言えないことや、そもそも大人数に聞かれては困ることもあるでしょう。そんな内容を、心理的安全性が保たれた環境で話し、学生との関係を深めていく。

これは学生との関係づくりに強く貢献しますし、採用戦略において非常に重要だと考えています。

― 例えば、どんな内容のMeetupが成功していますか?


星野: 例えば、「20代で家が建つって、ほんと?」という自社についてのうわさをテーマにしてみたり、不祥事のあった企業が自社の不正に対して自分たちの思いや今後について話したり、といった普通には話せないことがやっぱり人気です。
学生側も仕事やキャリアなどへの意識が高い層であるため、そこからいろいろなことを読み取ってくれますし、的はずれな質問がくることも少ないですね。満足感の高い時間になることは間違いないのではないでしょうか。

ただし、活発に行動している学生は2〜3カ月くらいの周期で情報が更新されていく傾向が強いため、しっかりとリピートして接触することが併せて大切です。また、どんなにグリップできたと思っても、一定数は必ず離れていきます。これも織り込んだ上で、その離脱を低くすることも意識していただきたいですね。

― 先ほどお話に出たPDCAを回す、というのは経験を積むという理由だけでなく、回数を重ねることで学生をつなぎ止めるという意味もありそうですね。


星野: そうですね。「知るカフェ」スタッフも一緒になって、草の根の活動も含めて学生のグリップをやってくれますが、それだけでは難しい場合もあるでしょう。

だからこそ、Meetupでの反応やサーベイの結果を基に、より効果的に「知るカフェ」を利用するためのPDCAを回すことで、結果としてつなぎ止めの効果があることはもちろん、自社が持っている魅力に企業自体が気付いていく、採用力が上がる、という相乗効果を生んでいただきたいと思っています。

― そういった手間を惜しまずに投入して、年次の低いうちから学生と深い関係を築くことで、優秀な学生を採用できる可能性を高めるということですね。


星野: はい。逆に言えば、しっかりグリップを続けて成果につなげないと、せっかくの協賛金が水泡に帰してしまいますので、しっかりと戦略を持った上で、学生との接触を図ってもらうことが重要です。

― 正直、ここまで伺うと、数ある採用ツールの中でもかなり手間がかかるものだなという印象です。何か強力なニーズがあるのでしょうか。


星野: ここまで、Meetupを中心としたターゲット校学生のグリップと採用力の強化を中心にお話ししましたが、実のところそれだけを目的としていては金額的に折り合わないと感じる場合もあると思います。

それでも「知るカフェ」に期待していただけるのは、ニッチな採用ニーズを持っている企業です。単に「旧帝大の学生がほしい」というのではなく、「東大でAIについて研究している学生がほしい」とか「消費者心理について研究している社会学系の学生がほしい」とかですね。
マイナビをはじめとしたマス媒体ではターゲティングが難しいため、ピンポイントのニーズに対してMeetupの内容をカスタマイズしたり、「知るカフェ」スタッフのコネクションを利用してアプローチしたりといった活動ができます。

― 具体的にどういった方法になるのでしょうか。


星野: 対象の興味に絞った内容でMeetupを開催します。先ほどの例で言えば、「AI開発体験」や「商品開発に参加しよう」なんていうテーマもいいでしょう。

ここで、サーベイやMeetupの本当の力が発揮できます。
自社が求める人材像に合致する学生に対して、どんな内容が刺さるのかというピンポイントなニーズを押さえる企画を練り上げていくんです。

それにはもちろん、学生の気持ちを知っている「知るカフェ」スタッフの協力も大いに力を発揮します。
採用すべき学生がどこにいるかは分からなくとも、実際にその大学で学んでいるスタッフが、トレンドや学生ならではの感性を基に企画をブラッシュアップしてくれます。

― ニッチな採用ニーズに対応するサービスとして「マイナビ新卒紹介」もありますが、どのような違いがあるのでしょうか。


星野: まずは学生の気持ちですね。単に紹介を受けて面接に行くのではなく、年次の低いうちからアプローチしてくれた企業だったり、自分の能力やポテンシャルに特別な期待を寄せてくれている企業に採用面接を受けに行くということは、かなりモチベーションが違ってくるはずです。

「知るカフェ」を通じた接触によって、学生側も自社への理解や愛着が深い状態ですので、良いマッチングになる可能性は非常に高いでしょう。

手間がかかる分、よい採用につながると思いますよ。

― 今日はありがとうございました!


「知るカフェ」の最も分かりやすい魅力は、やはり「ターゲット校の学生と直接対話できる機会が持てる」ということではないでしょうか。

しかし、それだけを見ていると「知るカフェ」を運用する手間や料金に見合う成果は得にくいかもしれません。

星野さんの話にもあったように、自社に必要な人材を見つけるために学生スタッフのアドバイスを受けながら、Meetupの内容を洗練させていく過程で自社の魅力に企業自体が気付いていき、結果的に総合的な採用力が上がる効果の方が、実は大きなものなのでしょう。

企業が自分自身を見つめる目と、学生が企業を見つめる目は根本から違うことがしばしばです。自社の魅力を学生の視点から発見し直してくれる「新しい目」を得る機会として、ぜひご検討ください。
  • 人材採用・育成 更新日:2021/09/22
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