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オンライン選考時代の採用広報を学ぶ~3回連載シリーズ2編目~

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新型コロナウイルスの流行によって、採用手法を見直した企業も多かったのではないでしょうか?

オンラインを活用した母集団形成や選考が主流となる中で、どうしたらターゲットからのエントリーを獲得できるのか、入社後のミスマッチが防げるのか、情報の精度が問われる時代となりました。

求職者がオンラインであらゆる情報を取得できる中、中途採用における「採用広報」は、いまや採用成功のための欠かせない戦略です。

今回は、「オンライン選考時代の採用広報を学ぶ」3回シリーズの第二弾として、「採用広報のコンテンツを深める」をお届けします。

1回目では、採用広報の重要性と具体的なステップについて解説をしました。2回目では、その中でも、採用広報の良し悪しを分けるコンテンツそのものについて、どんな切り口のコンテンツがあるのかを紹介しながら、最近のトレンドであり、求職者にとって一番興味関心が高い、「働き方」をどう採用広報に活用をするのかを考えていきます。

採用広報に使うコンテンツは何か?

ターゲットにはどんな志望動機を描いて欲しいか

採用広報の情報を整理していると、自社の強みや魅力をどうPRすれば求職者に響くのか、悩みは尽きないものです。まず、「採用広報にどんなコンテンツを使うのか」を考える前に、「どんな志望動機を描いてもらえたら、採用したくなるのか」「入社にあたり、どんな期待を持っている人が活躍しやすいのか」といった要素を整理し、優先順位をつけましょう。

ターゲットが現在活躍している社員に近いケースであれば、活躍している社員が入社当時にどんな志望動機を語っていたのか、自社に入社するときに期待していたことを確認できます。

また、現在自社にターゲットとしてほしい人材要件の方がいないケースであれば、ターゲットとして据える要件の人に、どんな入社メリットがありそうかを考えましょう。

例えば、「自由闊達に意見が述べあえる社風と感じたので、チャレンジできる環境があると感じました」という志望動機があるとしたら、本人は何の情報を元に判断するでしょうか?年次関わらず自由に意見が言い合えるワーキングプロジェクトが社内に沢山あること、なのか、入社3年目の若手社員の企画が役員に認められて、企画が実現したことなのか、本人にとって、志望動機の決め手になりそうな情報を整理することで、志望動機を語らせるための準備をすることができます。

志望動機から、採用広報のコンテンツを決定する

採用広報は、企業認知を高め、ファンを増やす役割もありますが、どんな層のファンを増やしたいか、を設計しておく必要があります。目的は採用につなげることですから、この企業や組織に属したい!と思わせるような情報が必要です。

一般的には、応募獲得までをゴールにするケースが多いのですが、採用につなげ、活躍人材になることを目的として採用広報の在り方を考えていくことが望ましいです。

その上で必要なのは、ターゲットのペルソナ設計と、志望動機から採用広報のコンテンツを決定していくプロセスです。

例えば、ターゲットが重視するポイントが「優秀なメンバーと働ける」だと仮定します。その場合には「社員の仲の良さ」「福利厚生の充実」という内容を発信しても、ターゲットには刺さりにくいでしょう。

「既存社員が優秀だ」ということを際立たせるために、他の企業と差別化できる社員の取り組みや考え方に注力して情報発信することが重要です。

採用広報においてのターゲットのペルソナを策定する

採用におけるペルソナは、自社が採用したい人物像の詳細定義のことを意味しています。

性別や年齢、居住地、家族構成、学校や前職での経験、趣味、ライフスタイルなどの情報を具体的に設計してペルソナを作り上げていきます。策定にあたっては、パーソナリティ、経験・スキル、価値観・人物像の3つの切り口で具体化していくとよいでしょう。

出来る限り特定の人物を想定でき、何人かで同じペルソナを見たときに同じ人物を思い浮かべることができれば、目線合わせができており、リクルーターや採用マーケターによってぶれることが減っていきます。

ペルソナを設定することで、面接での選考基準が明確になり、面接官による評価のズレが発生しにくくなります。そのため、ペルソナの要件に近いかどうかを確認するためのチェック項目を事前に決め、評価シートや評定表を作っておくとスムーズな選考を実現することができます。

また、このペルソナを策定するにあたっては、経営層からの意向や、現場からの要望、または活躍社員の共通項など、あらゆるところから情報を集め、言語化し、採用を継続する中で、ふりかえり、集まった候補者とのずれが生じた場合は、再構築していく必要があります。シーズンによっての傾向やエントリー数の増減によって、都度見直しをしていきましょう。

具体的な7つのコンテンツ

ペルソナ設計が終わり、自社に「こんなイメージを描いてほしい」「こんな志望動機を語ってほしい」が決まったら、いよいよコンテンツを選定していきます。

1回目で紹介した、組織変革の際に使うフレームワークである、マッキンゼーの7S(※)を活用し、具体的にコンテンツを整理していきましょう。

※コンサルティング業界で有名なマッキンゼー・アンド・カンパニーが考案した事業戦略を考えるためのもので、企業には3つのハードな経営資源と4つのソフトな経営資源があると捉えています。それら7つの資源をもとに、個々の企業に最適な事業戦略を考えることができるとされています。

戦略

企業の事業戦略や、ビジネスモデルで求職者を訴求します。業界の中でも画期的なサービスを創出している企業や、時代ニーズに応えていくことで、未開拓だった市場を作り出した企業、例えばスタートアップ系の企業やベンチャー企業などに有効です。「新しく先進的だ」「ブルーオーシャンのビジネスモデルで、先行きがありそう」「これから企業として注目され、拡大しそう」というポジティブなイメージを抱かせることができるでしょう。

組織

これまでの歴史や沿革、社会に残したインパクト、売上を伸ばした背景、規模拡大の歩み、実績と信頼などを強みとする企業に有効です。社歴が長い老舗企業や、従業員数が多い大手企業の場合はこれらのコンテンツは豊富にあり、終身雇用に近い、安定した雇用をされたいと思っている方や、知名度がある企業で働きたいと思っている人にとって響くコンテンツです。

システム

人事制度、評価制度、福利厚生、給与、社内の育成制度の「仕組み」で訴求するケースです。他社にはない、差別化のポイントになりやすく、特異性を出しやすいコンテンツです。例えば、社内ベンチャー制度があり、実際にいくつも会社が生まれた実績があるパターンや、役職が存在せず、社長や役員含めてフラットであることなど、特殊な仕組みが、会社の成長に寄与していることがアピールできます。ただ、給与以外の要素は、単体で効果が得られにくい切り口なので、他の切り口を組み合わせることが必要になってきます。

価値観

会社の価値観をアピールすることで、候補者が同じ価値観を持っているときに、想いに訴求するコンテンツです。会社が持つカラーやアイデンティティをアピールします。「自分が何をしたいのか」「そのためにはどこで働き、どうスキルを磨くのか」など、自分の価値観を大切にしている方にとっては響きやすく、類似した性格・価値観タイプの人材を採用しやすくなります。

スキル

会社が持っている技術力や営業力で訴求するケースです。中小企業で、製品のシェア率が高いことや特許を保有していることで、ここでしか作れない専門的な技術習得が可能であることなど、所属することに対する従業員ロイヤルティを感じられるようなケースに有効です。

人材

どんな人がいるのか、従業員が広告塔になるケースです。様々な背景を持った社員を登場させることによって、自分と近い人がいることで親近感が湧き、その会社の従業員や会社そのもののファンを作る意味で有効です。従業員の多様性に富む組織にとって有効で、リアリティがある社員にスポットを当てることで、入社後のイメージが湧きやすくなるメリットがあります。

スタイル

文化、風土、会社のビジョンで訴求するケースです。価値観と近いコンテンツですが、会社のミッション・ビジョン・バリューなどを明らかにし、会社の輪郭をはっきりさせ、自社の空気感や、スタンスを認識させる効果があります。抽象度が高い表現や思考を好むターゲットに有効で、最も会社のファンを作る際に相性が良いコンテンツです。

コンテンツを選定する際の注意点

ペルソナ、志望動機から、コンテンツを選定したら、必ず自社の社員からどう見られるのかを確認しましょう。自社の思い込みや推したいポイントをむやみやたらに推すのではなく、実際の従業員がギャップを感じないコンテンツに精査することが重要です。社内で形骸化しているようなコンテンツを切り口にしても、面接でうまく伝えられないといったことが起きます。

例えば、従業員に配布しているクレドカード(企業理念を記載したカード)に書いてある内容を、採用広報コンテンツにし、自社媒体に掲載したが、実際には全く社内に浸透していないケースなどです。使えそうだからと安易に判断せず、社内にしっかり浸透していることをベースに、背景や、ストーリーがあるものがよいでしょう。

また、採用広報のメッセージに一貫性を持たせるために、ネーミングやキャッチフレーズを付けることで、よりターゲットに認知されやすくなります。コンテンツが決まったら、それらを包括する自社のキャッチフレーズは何かを考え、キービジュアルに落とし込んでいくとよいでしょう。

コンテンツが有効だったかの効果検証の仕方

コンテンツがどう影響したのかを検証する方法としては、内定者に決め手を聞くなど、面接で会う人や、入社する人へのアセスメントが効果的です。内定辞退をした人に辞退理由をしっかり聞いて情報収集をしたり、自社のコンテンツに市場がどんな反応を示されているか、エゴサーチをしたりしていきましょう。

最近では、TwitterやInstagramで採用広報用の自社アカウントを持ち、リアルタイムで有効だったかを検証するケースもあります。すぐに転職をする気はない人材、いわゆる「転職潜在層」に自社を認知してもらうことの重要性が増していますので、転職への意識がないうちから自社を認知させておくことが必要です。

いざ求職活動を始めた際に「あの企業は良さそうだったな」と、転職候補先に入ることが重要です。転職を本格的に考えていない層に届けるためには、日常の中で見られるメディアへの露出などで定期的に情報発信することが効果的だといえます。

自社の「働き方」に焦点をあてる

ここまでコンテンツについて解説をしてきましたが、近年の傾向を鑑み、採用広報を網羅的にカバーできるキラーコンテンツとして、「働き方」に焦点をあてることがお勧めです。

なぜ、採用広報に「働き方」が有効なのか

情報収集がしやすい環境下のなか、求職者の興味関心は、「この会社で働くと、どんな人生を送れるのか」にあります。そのために、会社の戦略、システム、人材など、様々な情報を組み合わせて、入社後の自分を想像し、「働き甲斐はあるか」、「自己実現できそうか」を考えるため、より直接的に「働き方」そのものをコンテンツ化することが有効です。

新型コロナウイルスの影響で、「働き方」がより重要視されるようになり、リモートワーク、休日取得や残業時間、転勤への配慮など、企業は、環境整備が急がれるようになりました。

この1年間でテレワーク環境を整備したり、新しく制度設計をしたり、転勤制度を見直したりと、働き方の大きな変革期となり、転職を検討する際には、「この企業は、働きやすいかどうか」といった軸での、企業淘汰が始まろうとしています。

社員の健康や安全面、将来のキャリア形成や人生そのものに影響する、「就業規則」や「働き方の実態」が、採用広報市場の中では、関心度が高い状況になっていくことでしょう。

「働き方」を広報に使うメリット

1つ目に、働き方を採用コンテンツに使うことで、企業が従業員を大切にしているどうかの判断軸となります。従業員の多様性をどう認めているのか、従業員は思い思いのライフスタイルを実現できているのかなどの事実は、候補者にとって興味関心が大変高いでしょう。

新型コロナウイルスの影響で、完全テレワークの会社を実現した会社では、日本全国、また海外からも優秀な人材を雇用することができますので、人材獲得の面からも思わぬ恩恵を受けています。

2つ目に、働き方についての透明性が担保されるため、入社後のギャップが抑えられます。入社後のギャップの大きさは、早期離職の原因に繋がりやすい要素です。「働き方」に力を入れることは離職を防ぎ、従業員エンゲージメントの向上にも寄与します。

そして3つ目は、上記の2点から、従業員を大切にする企業であること、先進的な企業であるといった企業ブランディングにもつながります。

採用広報に効いた、企業事例(回転ずしチェーン「銚子丸」のケース)

一般的に外食産業は、長時間労働が常態化し、休暇が取得しづらく、採用難易度も高い業界の1つです。大手回転寿司チェーン「すし銚子丸」を手がける株式会社銚子丸も、かつては、採用難に苦しんでいました。ですが、従業員の働き方に着目し、働き方改革によって様々な改善をした結果、コロナ禍にもかかわらず、離職しない会社を実現し、採用にも困らない好循環を生み出しています。

株式会社銚子丸が取り組んだ内容は主に以下の内容です。

  • 5ヶ月間でオンライン化を推進し、会議コストを約360万円削減し、現場の店長から「シフトが組みやすくなった」「有休が取りやすくなった」という感想も
  • オンラインで「魚のさばき方」を研修するなど教育面の生産性も大いに向上
  • 業界内で困難とされる魚介類のオンライン買い付けも実現し、これまでにないスピード感で新鮮な食材を提供できる環境を整備
  • 男性育休取得を推進するため、男性の常務が100時間の育児休業を取得したことで、店舗の男性従業員も育児休暇を取得
  • スケジュール共有・コミュニケーションツールを導入し、店舗間のコミュニケーションが活性化

これらの取り組みから、2021年5月期第2四半期は前年同期比で39.5%の増益を達成し、従業員にとって働き続けやすい環境を作り、会社全体の生産性も向上し続けることに成功しています。

従業員にとっての満足度があがり、社外にもアピールすることで、かつては労働局から呼び出しがかかっていた企業が、「優良企業ですので視察したい」という声がかかるようになりました。「働き方」に着目し、改革を実施してきたことで、従業員が辞めにくく、採用に優位な会社に変貌を遂げました。

まずは身近な「働き方」の変化から

「働き方」に関する採用広報は、会社全体で働き方改革を実施していなくとも、身近なところにネタとなり得るコンテンツが存在しています。

例えば、部署をまたぐような取り組みがあること、現場主動で業務改善が実現したこと、部活や定期的なランチ会があること、家族も参加する催し物があることなど、実は従業員が、自社の働き方のここがお気に入りというポイントがあります。近年の自社の働き方の変化について、焦点を当ててみることをお勧めします。

まとめ

採用広報のコンテンツにはどういった要素を活用すればよいのかという点で解説をしました。

志望動機から採用広報のコンテンツを考えること、ターゲットのペルソナは具体的にイメージが湧くような人物レベルまで掘り下げ、採用に関わる人同士で目線合わせをしておくことが重要です。

そして、採用コンテンツには、企業の特性によっての相性があるため、相性が良いコンテンツを組み合わせて、企業ブランディングを創っていく必要があります。その中でも近年、転職顕在層、潜在層にとって注目度が高い、「働き方」に焦点をあて、「自社はどんな働き方を提供できているか」を紐解き、PRしていくことが有効です。それが実現できている企業はコロナ禍でも独り勝ちをしています。

この1年間の働き方の変化や企業として考えたこと、実施したことをストーリー化して掲載することも有効でしょう。その際は、企業としての葛藤や、PDCAについても赤裸々に触れてもよいかもしれません。働き方の理想について、進捗が未完成の状態だとしても、従業員のことを想い、仕掛中であること、沢山失敗もしたことなどを正直に伝えることで、誠実な企業である印象をもたらし、ファンにつながる可能性もあります。人事の想像以上に採用コンテンツになり得る魅力が潜んでいますので、この機会に企業として価値や魅力を棚卸してみましょう。

  • 人材採用・育成 更新日:2021/07/21
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