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500社の中途採用を手がけてきた求人コピーライターが語る、即戦力”的”人材による採用課題を解決する方法

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多くの企業は、中途採用において、即戦力を採用できないという課題を抱えています。この課題に対し、大手企業における中途採用を500社以上手がけてきた求人コピーライターの後藤 亮輔氏は、即戦力ではなく即戦力”的”人材の採用を提唱します。
後藤氏曰く、採用条件を広げることで、母集団が拡がり、採用課題は解決されます。即戦力”的”人材の採用についての話を中心に、良質なマッチングを生み出すための秘訣をお伺いしました。

企業に提案してきたのは即戦力人材ではなく、即戦力的人材

後藤さんが500社以上もの会社の採用を手がけてきたなかで、採用の際の課題はどのようなものが多かったですか?

後藤:「500社といっても多種多様で、大手企業、中小企業ないし、ベンチャーなどさまざまでした。僕はIT・ウェブ系が強かったのですが、その業種に限らず、採用を手がける際に常に課題を感じていたことがあります。それが、大手も中小もみな、即戦力を欲しがるということでした。

即戦力とは、会社に入ってすぐに仕事で結果を出せる人材というイメージなのですが、ほぼ9割の会社が、即戦力を欲しがるわけです。もう、その日から活躍できる人が欲しい、と。
だけど、そういった人達は、他企業と取り合いなんですよね。で、そういったデキる人は、有名企業や魅力的な企業に行ってしまうんですよね。だから中小企業っていわゆる即戦力人材が採用できないんです。

そこで僕が、採用力が弱いと自認している中小企業に対して提案していたのが「即戦力”的”人材」です。即戦力は、入社直後にすぐにフィットして結果を出す人を指すのに対し、即戦力”的”人材は、営業とか売るスキルは元々あるけど、転職時に業界が変わるために、すぐには結果が出ない。ただ、知識と会社のルールさえ覚えればすぐに使える人材のことをいいます。

例えば、ある企業で部品を売っていた人がITのソフトウェアを売る時の知識は変わるじゃないですか。でも、業界が変わっても、物を「売る」スキルはあるわけです。ということは、知識さえあればあとから結果が出てくると考えられますよね。

もちろん、最高の理想をかかげて、即戦力と呼べる人材を獲得できたら100点です。でもそういう人は、ある程度実績を残すと、短い期間でさらに良い条件の会社に移ってしまうケースがあるんですね。
そのため、自立している即戦力人材を無理して採るよりも、働いていく中で自分が成長している時間を覚え、伸びていくような人材のほうがいいと思います。そして結果が伴いはじめることで仕事のモチベーションも上がる。そうなる人材を採った方が長続きしますし、そもそも会える確率があがりますね。」

企業が重視する3つの採用要件とは?

採用要件で、企業が重要視するものには何があるんですか?

後藤「採用時に重要なことが3つあるのですが、1つ目が年収。600万円しか払えない企業に対して、800万円の人材の人は採れない。年収がフィットするのか、しないのかということですね。

次に年齢。一般的に35歳までがゴールデンゾーンなので、基本的に多くの会社は長く居てほしいと考えるため、20代前半の若手を求めたがります。しかし、経験者と言われると、いないよ!ってなるんですけど(笑)。

そして3つ目が経験年数。よく聞くのが、営業経験3年やBtoBの営業経験というものです。そうした条件をもって募集をかけるわけですが、条件のなかで、採用をサポートする側が変えられるのが、経験年数。この経験年数こそが、採用を成功させる魔法の言葉なんですよ。

経験年数ではなく、見るべきは経験の質

なぜ、経験年数が魔法の言葉なのですか?

後藤:「どんな人が欲しいですかとクライアントに尋ねた時に、営業経験3年の人がいいですねって言われたとします。でも、営業にも数多くの種類があって、かつ業種もたくさんあるじゃないですか。ネジに詳しい人もいますし、ICチップに詳しい人もいますし、水に詳しい人もいます。そのため、単に営業とするのではなく、採用要件を明確にすることが大事になってきます。

まず、営業経験3年の人を探すとして、それに該当する人が転職市場にどれくらい存在するかを考えます。業種を限定すればするほど、パイは小さくなりますよね。こんな小さなパイに対して採用したいって言われたけど、ほとんど見つかりそうもない。そこで、ここで制限している経験というものの、年数の制限を取っ払う。それだけでパイは拡がるんですよ。

年数っていっても、どんな企業で働いていたかで全然ちがいますよね。例えば売上を追求しなくても何も言われないような会社で、9時~17時の定時で働いた3年の営業経験と、新進気鋭の有名IT企業で朝9時から夜11時までゴリゴリ数値を追った1年間って、後者のほうが絶対価値あるんですよ。だから、経験年数を求められたとしても、僕は年数は必要ないと返していました。経験年数を考慮しないこと。それが、即戦力的人材を採るための条件の1つです。

数字にとらわれず、質より質を重視すべきなんですね。

採用のパイを拡げることこそが、会社が新しい武器を手にする鍵

即戦力を求めていた企業が採用の選考基準を拡げた結果、上手くいった事例はありますか?

後藤:「いわゆる109系の服を販売しているブランドの会社があって、そこが広報を求めていたんですよ。採用の年収が500万円以上で結構条件が良かったので、かなりの数の応募が来たんです。たしか、200件くらいだったと思います。しかし、これだけ応募がきていたのにもかかわらず、誰も採らなかったんですね。驚いて理由を尋ねたら、“いやー、アパレルの業界の経験がないとダメなんだよね”って言われてしまいました。そんな隠れ採用要件が潜んでいたとは、驚きました。

ただ、採用ゼロのままではいけないから、何かを改善しなければいけない。そこで、アパレルの労働時間とか会社の雰囲気とか業務の体系とかをクライアントに聞いて、同じような忙しさのレベルで働いている業界の方を採ったほうがいいんじゃないかという提案をしたんですよ。

図で説明しますね。
Aがアパレル業界経験者の広報、Bがある程度業界を拡げた広報、Cが日本中の広報、Dが中途採用市場全体とします。

これまでAにこだわっていたところからBまで拡げた結果によって、実際にWEB系の広報の女性の方から応募があって、お会いしてみたらとても良い方だということで、採用が決まったんです。
この提案をしてなかったらずっと求人広告は掲載したままだったと思います。ただそのままでは、広報が必要なのに、広報を採れないから会社が上手く回らなくなる、結果、会社がグロースしない。会社の財産は人です。人が入らないと、会社ってどこかで成長がストップするんですよね。

広報が入ることによって、このアパレル会社は発信力を身につけたんですよ。いってしまえば、僕等の仕事って、組織の構築、人材開発とかになりますし、組織の武装のお手伝いでもあるんです。」

組織の武装のお手伝いとは、どういうことですか?

後藤:「このケースで言うと、アパレルの会社に広報がいなかったんです。広報の仕事って、マスコミとの関係をつくる、発信する役割で、武器で表すと飛び道具。彼らが今まで発信する術をもってなかったところに、発信する術を手に入れたことで、会社としての新しい武器が手にはいるじゃないですか。それが僕のいう武装です。新しい武器を手に入れるのも採用の魅力なのです。」

会社のフェーズにあった採用手法をとるべき

例えば、上場間近など企業の成長フェーズでは、未経験ではなく業界経験者の人間が欲しいケースが出てくると思うのですが、そういう時はどうすればよいですか?

後藤:「そうなると、採用サイトに頼るとかも大事なんですけど、信頼できるメンバーの友人や後輩等をリファーラルリクルーティングで採るのが1つの手段としてあると思います。
リファーラルのいいところとして、俗にいう類は友を呼ぶで、今あなたがいる会社で活躍されている方は優秀な人間が多い傾向がある。そうした人は優秀なコミュニティに所属しているから、優秀な人間が繋がっているだろうと。採用も、その中からひっぱってくるのがいいんじゃないのかなって思います。」

縁故採用と似て非なる、新しい形ですね。

後藤:「つまり、何も考えずとりあえず求人広告を出稿するのではなく、いろんな手段を考えたなかでどの採用手法をやるのかを考えるのがいいんじゃないでしょうか。ただ、一番効率的にかつスピーディーに人材を集められるのは、採用サイトだと思います。」

終わりに

採用において、最も重要なことは企業の求める採用要件をしっかりと明確にした上で、業界や経験年数といった相手の採用要件だけで人材を探すのではなく、それに対してどうすればパイが拡がり、結果的にいいマッチングにつながるのかを考える。その上で、会社にとっての即戦力的人材を結びつけるための提案をすることのようです。

従来の採用サイトやダイレクトリクルーティングだけに頼るのではなく、自分たちの企業のフェーズにあった人材を獲得するためには、どのような手法が最適なのか。それを企業は一番に考えてみるべきなのではないでしょうか。また、リファーラル採用やソーシャルリクルーティングといった新しい採用手法が注目されているように、今後、どんな新しい採用手法が出てくるのかにも注目したいところですね。

  • 人材採用・育成 更新日:2016/03/30
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