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採用の法律知識|弁護士が語る!人事のための労務相談
転職者の経歴詐称防止のために人事が実践できること

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有名大学を卒業し、必要な資格を持ち、キャリアも十分に積んでいる――そう信じて採用した人材が、実は経歴を詐称していたら?
中途採用において、採用されたい一心で応募者が経歴を詐称していた、というケースは少なからずあるようです。人事担当者としては、早めの段階で見抜くことができればいいけれど、採用してしばらく経ってから発覚した場合のダメージは少なくありません。
このコラムでは、経歴詐称のバリエーションごとに防止策を考えるとともに、発覚した場合の対応について検討します。

応募者には経歴等について真実を告知する義務がある

経歴詐称とは、応募者が会社に対して、履歴書の記載や面接時等において、学歴やこれまでの職歴、病歴、前科、保有資格、年収等を偽ったり、真実を隠したりすることをいいます。
会社が応募者の採否を決める際には、これらの履歴書の記載等を選考の材料の1つとして判断します。労働契約は、入社してから退職するまでの長い期間にわたり継続しますから、会社と社員との間には信頼関係があることが前提です。このことから、応募する側は、労働契約を結ぶ際には信義則上真実を伝える義務を負っていると考えられています。
経歴詐称を行うということは、応募者はこの信義則上の告知義務に違反することになります。

経歴詐称が発覚したら

入社前の段階

選考の比較的初期の段階であれば、不合格にする等の対応で足ります。
近時、テレビ局にアナウンサーとして内定を得た学生がアルバイト歴を隠していたということで内定取消になり、その後訴訟を経て撤回されたという報道を覚えている方も多いと思います。あの事件についても、もしテレビ局が内定前の選考段階で不合格にしていれば学生側が争う余地はまったくなかったでしょう。 この事例からも明らかなように、内定を出した後、経歴詐称があったことをもって必ず内定取消ができるというわけではありません。

内定後、入社後に発覚した場合

内定取消、解雇ができるかどうかが問題になります。この場合の判断のポイントは、詐称された経歴が、「重要な経歴」であるかどうかです。すなわち、「もし真実の経歴を伝えていたら、会社側としては採用しなかっただろう」といえるくらい重大な詐称であること、詐称された経歴が業務や賃金体系に影響することが必要となります。つまり、同じ経歴の詐称であっても、会社側の事情で判断が分かれる場合があります。
例えば、労動者が学歴を詐称していたという事例では、会社が採用時および勤務体系において学歴を重要視していたかどうかという点をみて、解雇の有効無効を判断しており、判断が分かれています。
そのため、対応を誤った場合にかえって会社側が訴えられるリスクもありえます。
できれば内定前、入社前の段階で、経歴詐称を見抜き、採用を防止するのが最善な手段といえるでしょう。

中途採用にみられる詐称のバリエーションと防止策

以下では、「重大な経歴詐称」の中でも、とくに中途採用において見受けられる経歴詐称を挙げ、その採用時の防止策について検討してみましょう。

年齢

年齢を低く、あるいは高く詐称して採用されるケースです。ほかにも、定年まであとわずかにもかかわらず、10年以上もあると虚偽の記載をするケース。
身分証等を確認することで解決できます。

学歴

「大卒程度」の求人に対して、実際は大学中退であるにもかかわらず卒業と申告するケースなどです。
また、最終学歴を低く詐称する場合もこれに当たります。事前に卒業証明書等を提出させることで、確認することができます。

保有資格

実際には保有していない資格を保有しているかのように申告するケースや、TOEICなどの点数を水増しして申告するケースなどです。保有資格によって支払われる資格手当等を目当てに虚偽の申告をする場合も見受けられます。資格証明書等の提出を求め、採用前に確認しておくのがよいでしょう。

転職歴

中途採用においては、一般的に転職の回数が少ないほうが印象がよいとされています。そのため、印象をよくしようと一部の転職歴を隠蔽したり、2つの職場の就業期間を通算してしまったりするケースがあります。
また、前職で罪を犯して懲戒解雇になったことを隠すために、経験者であるにもかかわらず未経験として申告するケースなどもこれに当たります。
雇用保険被保険者証や年金手帳を確認するほか、社会保険事務所や前職の職場へ確認をとることで、ある程度未然に防止することができます。

年収

現在および過去の職歴に照らして、年収を水増しして申告するケースです。転職先では過去の年収を参考に報酬を決定する場合があるため、中途採用の場合に多い経歴詐称です。
前職の年収については源泉徴収票、市町村発行の課税証明書で確認することができます。

前科

弁護士が顧問先等から相談を受けることが多いのは、社員による横領・窃盗問題です。
これらの事件は社会人としての適性が強く疑われる犯罪ですし、再犯も多いと言えます。だからこそ重要なのは、応募者本人からきちんと申告させるということになります。
申告させるにあたっては、応募用紙へ記入させる方法が考えられます。一般的な履歴書には「賞罰等」の記載欄が設けてありますし、自社の応募フォームがある場合は同様の欄を設けて、「賞罰等」がない場合は「ない」と記入させるようにします。そして、面接採用時にはこの欄について面接官から言及して発言を促し、しっかり聴取しておくべきでしょう。
前科など、応募者本人にとって不利益となる事実については心理的に隠そうとするものですので、面接官のほうから、たとえば「賞罰欄には何も書いてありませんが、前科や逮捕歴等はとくにありませんね」などと尋ね、発言を促すようにするとよいでしょう。

職務上の地位

実際は平社員であったのに、管理職であったと偽るようなケースです。退職証明書を提出してもらうことで確認することができますし、面接等で職務上の経験を詳細に尋ねれば、自ずとその応募者の能力を見抜くことができるでしょう。

これらの防止策の他にも、面接時に少しでもおかしいと感じたことには遠慮なく突っ込んでみるとよいでしょう。「この職歴の部分、ブランクになっていますが、その間どんなことをして過ごしていましたか?」などと事実確認をして、明確な答えが得られるかどうかで判断してみるのも有効です。

まとめ

  • 入社前であれば、経歴詐称があっても採用を断れば足りる。
  • 内定後、入社後に経歴詐称が発覚した場合には解雇できるとは限らない。
    業務や給与体系との関連性で重大な経歴詐称に当たるかどうか個別に判断される。
  • 経歴詐称を防止するためには、内定前の厳しいチェックが有効。
  • 人材採用・育成 更新日:2015/08/10
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