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職務記述書の終わり: 人事考課で評価すべき10の技能
The End of the Job Description

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海外の企業では、職種や役職ごとに、仕事の内容を記した職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)という書類を使って人事管理をすることが一般的です。採用試験から人事考課まで書類に書いてあることをもとに実施することで評価のぶれがなくなり、従業員にとっても書類に自分の担当すべきことが明確化されているので仕事を進めやすくなります。

しかし、The End of the Job Descriptionの著者、組織の業績向上を専門とするコンサルタントのティム・ベーカー氏は、現在使われている職務記述書の様式に疑問を投げかけます。一般的に普及している職務記述書では、職務を遂行する上で必要な職務以外の役割(ノンジョブロール)について何も記されていません。そのせいで組織として成果があがらなくても「それは私の仕事でありません」と言い出す従業員が出てきてしまうのです。

では、採用試験や人事考課で、どのような能力に目をむければ組織の業績があがるのでしょうか? 本書には、職務記述書を導入していない日本の企業でも、評価の基準として参考になる内容がたくさん含まれています。いくつかご紹介しましょう。

職務記述書には、職務だけでなく役割を記述する

求人募集をかけるときや採用試験の実施に際して、どのような資格や経験を持った人を探していて、どのような任務についてほしいか具体的に書き出すことがあると思います。しかし「前向きで、熱心な人」「チームワークを大切にできる人」などといった職務以外の役割についても書き出しているでしょうか?

職務記述書の元になるものを初めて作ったのは、科学的管理法の発案者フレデリック・テイラーといわれています。今から100年以上前、生産ラインで働く人たちの管理に、その書類はとても役立ちました。しかし多少修正されているとはいえ、当時の形式のままの職務記述書が色々な職場で現在でも使われていることが問題であると、ベーカー氏は指摘します。

現代の職場では、上司の命令どおりに動けばよかった100年前とは違い、一人一人の従業員が知恵を絞り、組織を改善していく能力が求められています。今までのように任務と適性だけに注目する採用や人事考課をやめ、組織のなかで活躍できる人を採用し評価するべきなのです。

どの職場にも必要な4つの役割

ベーカー氏は、組織の業績を伸ばすために次の4つの役割をあげています。これらの役割ができる人は、どのような職場にも必要です。

  1. 精神的に前向きで、熱心であること
  2. チームワークを大切にできる
  3. キャリア開発ができること(任務や技術向上に必要なことを積極的に学んでいる、自己啓発ができるなど)
  4. 組織をうまく動かす新しい方法を生み出し、常に改善ができること

新世代型の職務記述書は、従来型の職務記述書に記載されていた「職務内容と適性」に上の4つの役割を加えた、5つの項目で構成されます。これをもとに採用活動や人事考課を行うことで、組織のなかでどのような役割を求められているかが明確になり、個人や組織の成功につながるのです。

最も評価されるべき10の技能

前出の4つの役割とともに、ベーカー氏は最も評価されるべき技能を10個あげています。このリストは、中規模から大規模の企業を対象とした40件以上の研究結果から編成されました。組織がうまく機能するためには、職務業績以外に従業員1人ひとりがこれらの技能を持ち、成果をあげることが求められます。

しかし、これらの技能は、採用試験のときに注目されることはあっても、人事考課のときに評価の基準として使われていることは、あまりありません。この原因のひとつには、これらの技能の印象が漠然としていることがあるでしょう。このため、評価のシステムに取り入れにくく、人事考課の際には判断しやすい職務業績だけを基準に評価を出してしまうのです。

これからは、組織やチームごとにカスタマイズした職務以外の役割を文書として明確化し、採用活動や人事考課の基準として利用するべきです。

  1. 熱心/前向きな態度
  2. 優れたコミュニケーション能力
  3. 自分でモチベーションを高めることができる/自発力
  4. 正直さ
  5. 対人能力
  6. 粘り強さ
  7. チームのなかで活躍できる
  8. 段取りのよさ/プレッシャーに強い
  9. 向学心がある
  10. 頼りになる/勤勉さ

職務以外の役割は職種ごとにカスタマイズする

組織の業績を伸ばすには、どのような役割が必要なのか。これまでにあげた4つの役割や10の技能は、チームに合わせてカスタマイズされる必要があります。本書では、海外で一般的に導入されている、業務の達成度評価KPI(A Key Performance Indicator)を例に、どのような項目をつくれば、正しい評価につながるのかが述べられています。

例えば、ダイナミックデュオメソッドという方法で職務以外の役割を文書化する場合、部署のマネージャーが、同じ職務についている2人の従業員を選出します。そして、彼らの体験をもとに、業務を成功させるために、どのような要素が必要であるか考え、文書に落としていきます。

もし、あなたがマネージャーで「熱心さや、前向きな態度」について話し合ったとしましょう。組織のなかで必要となる技能はなにか、2人の従業員と一緒に考えます。従業員の一人が「この部署には、納期まで時間のない案件が入ってくることが多いですよね。私たちは、スケジュールをなんとかして終わらせなければならない。」と答えました。するともう一人の従業員が「それは、熱心さというより段取りのよさや、プレッシャーに強いという項目にならないかな?」と答え、あなたも同意し「急な仕事でも優先順位を考え、プレッシャーに負けずに完成させる。」を「段取りのよさ/プレッシャーに強い」の項目に追加します。このように数人ですり合わせをしながら、そのチームに必要な役割を書き出します。完成後はチーム全員に目を通してもらい、さらに話し合うといいでしょう。

The End of the Job Descriptionには、今までの職務記述書の内容を進化させ、組織の成果が出るような形に変えることが提案されています。このプロセスは組織での個人の役割を見直すことにつながるので、職務記述書を採用していない企業にも十分に役に立つでしょう。著者のティム・ベーカー(Tim Baker)氏は、You Tubeに過去のオンラインセミナーをいくつか無料公開していますので、そちらも参考にしてみてください。

  • 労務・制度 更新日:2016/11/16
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