経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
1 tn_romu_t00_serialization-management_150503 roumu c_managementc_history

歴史上の人物に学ぶ人材マネジメントPART5 ピタゴラス 編

/images/detail/thumbnail.jpg 1

数学上の大発見を成し遂げ、数学・音楽・天文学などの体系を作り上げた歴史上の偉人、ピタゴラス。有名なピタゴラスの定理の発見で知られるほか、彼の学問や輪廻転生についての思想は、西洋哲学の源流を作った哲学者・プラトンにも大きな影響を与えました。
また、暴れ熊をおとなしくさせてその場から退散させた、オリンピック競技中に空を飛ぶ鷲を口笛ひとつで舞い下りさせた、透視術や瞬間移動の秘術にも通じていた、などいささかオカルトめいたエピソードまで多く残っています。

優れた哲学者であったピタゴラスですが、その学問を系統立てて研究するため、秘密結社・ピタゴラス教団を作ったことでも知られています。ピタゴラス教団には厳格な採用と、秘密主義の行動規範がありました。現代において人材を採用し、育成する際にも参考になる哲学が生まれた瞬間を紐解いてみましょう。

ピタゴラス教団の厳格な採用基準

ピタゴラスが40歳を過ぎたころ、南イタリアのクロトナで、この世の真理を探究する弟子たちと小規模な集団を作ったのがピタゴラス教団の事始めとされています。

ピタゴラス教団の厳しい資格審査においては、真理への道を求める純粋さ、真理と調和を身に付けるための力量などが厳しく審査されたといいます。審査の際には、内面のみならず人相もひとつの重要な要素となったといい、とにかく狭き門でありました。その狭き門をくぐり抜けて学問生となり、ようやく迎え入れられても、正式メンバーになるには特別な入団式が必要とされ、「密儀参入の儀式」としての位階がありました。

最初の段階は「アテマティコス」(学修者)と呼ばれ、数学と幾何学に習熟することが求められます。第2段階は「テオレティコス」(観照者)と呼ばれ、この学問の現象的な応用を扱う段階です。第3段階は「エレクトゥス」(光輝者)で、完全な啓示のなかに進んで、光に同化しうると認められた志願者に対してのみ、この称号が与えられたのでした。

採用においてもかなり厳格な基準を設定し、さらに採用した者に対しても絶対的な階層を設定することで、大量に集まった志願者をふるいにかけることに成功しました。また、それだけの狭き門に対しても志願者が絶えないことからも、当時の人々の真理への渇望と、ピタゴラスの持つ「知」の価値を垣間見ることができます。現代でいえば、最新の技術を持つ企業に志望者が集まるのと同じことでしょう。

ピタゴラス教団の厳しい戒律

ピタゴラス教団にはメンバーを縛る厳しい戒律がありました。「床から起きるとき、シーツを巻き上げて体のあとを消せ」というものから、菜食主義でありながらソラ豆を食べるな、というものまで、幅広い行動規範でした。これは、豆は魂の再生や不死ともつながるものとされ、食べると死者の魂が乗り移るとされたことに由来しています。

また、弟子たちが自主的に脱退したり、強制的に排除されたりした場合、彼らのために墓石が建てられました。このルールは哲学的態度を放棄し、五感の欲望に隷属した状態を、「霊的な死」と見なしたものです。現代の企業であれば、ブラック企業として大きな問題になってしまうことでしょう。しかし、数学や哲学という根源的学問が発生するにあたり、それなりに共同体が求める高度の規範が求められたことは無視できません。

現代に置き換えれば、最新の技術情報を漏らさないためのコンプライアンスと同じものといえます。時代の先端をゆくがゆえの必要に応じた規範だったのでしょう。

ピタゴラス教団の崩壊

エジプトやバビロニアを遊学したピタゴラスは、ポリスの独裁に失望し、政治学にも強い関心を持ちました。当時、民主化に対抗していた南イタリアの反動派を取り込んでいたピタゴラス教団は、民主派の襲撃に遭い多くの弟子が殺され、実質上の崩壊を迎えます。

ピタゴラスの最期についてはこんなエピソードもあります。入門を断られたために恨みを持った男、あるいはピタゴラスの先導する僭主制を恐れた地元農民により放火された集会所から逃げたピタゴラスは、とある豆畑に行き着きます。「豆を踏みつけて逃げるより、ここで捕まったほうがましだ」と言って逃げることを止め、喉を切られて死んだということです。理由は諸説ありますが、ピタゴラス教団において豆はタブーとされていたので、戒律によって始まったピタゴラス教団は、また戒律によって幕を閉じたともいえます。

厳格な採用基準と行動規範を持ち、秘密主義を保ったピタゴラス教団から学べることは、現代の情報化社会においても多くあります。

特許や先端技術など情報・人材が命綱となるなか、どのような採用をし、どのように人材管理をし、社会と関係を形成するか。ピタゴラス教団の歴史を紐解くなかにヒントがあります。

  • 労務・制度 更新日:2016/01/07
  • いま注目のテーマ

RECOMMENDED

  • ログイン

    ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

    ログイン
  • 新規会員登録

    会員登録がまだの方はこちら。

    新規会員登録

関連記事