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業務中の喫煙問題 その一服が職場のストレスに…?

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「ちょっと一服して来ます……」。そうやって何度も席を外す同僚。本人にとっては何気ないリラックスタイムのつもりだろうけど、たばこを吸わない側から見れば「サボリじゃないの?」…。
社内の分煙化が進んだ今、どの職場にもよく見られる光景ですね。喫煙者も非喫煙者もストレスを感じない喫煙のマナーと、オフィスの喫煙環境について考えてみましょう。

オフィスの分煙化によって生じた新たな悩み

20年ほど前までは自席でたばこを吸うことができるオフィスがほとんどで、非喫煙者は流れてくるたばこの煙に顔をしかめつつも「仕方ない」とガマンするしかありませんでした。

オフィスの光景が一変するきっかけとなったのは、1996(平成8)年2月に厚生労働省(旧労働省)より公表された「職場における喫煙対策のためのガイドライン」。
これは労働者の健康の確保や、快適な職場環境の形成を目的とし、職場に独立した喫煙スペースや喫煙ルームを設けることを義務付けるものでした。この時、初めてオフィスに「分煙」という概念が持ち込まれたとも言えるでしょう。

さらに2003(平成15)年5月から施行された「健康増進法」の中で「受動喫煙の防止」が義務付けられ、それに伴い「職場における喫煙対策のためのガイドライン」も見直され、より厳格化。
受動喫煙を確実に防止する観点から、「非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置」が求められるようになったのです。
それまで、流れてくるたばこの煙に我慢するしかなかった非喫煙者にとっては、待ち望んでいた環境となったともいえるでしょう。

しかし、こうした対策によってオフィスの空気がクリーンになっていく一方で、新たな問題も発生し始めます。 それは「喫煙者による業務中の席外し」。非喫煙場所への煙の流動を防ぐため、オフィスでは業務を行うスペースと喫煙スペースとの距離が離され、トイレの横や休憩所の一角、場合によってはビルの別階や外まで行かないと喫煙所がないというオフィスも珍しくありません。
そのため喫煙者が「ちょっと一服」と席を外すと、結果として10分、15分と長い時間、業務が滞るというケースもあるのです。例えば午前1回、午後2回、10分ずつの「喫煙タイム」を取れば、1日30分の業務時間が削られる…。非喫煙者にとっては「サボリじゃないか!」と不満を感じる原因ともなりかねません。こうした喫煙者と非喫煙者の摩擦を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。

そもそも業務中の「喫煙タイム」は許されるのか?

労働基準法34条1項では、「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を、労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。そしてこの休憩時間は「労働者が完全に自由に使える時間」であり、労働者に少しでも拘束があれば、休憩時間にはならないとされています。
例えば、デスク前などにいて仕事の態勢にはあるけれども、単に作業をしていないといった、いわゆる「手待ち時間」は休憩時間としては認められないということです。

その観点から考えると、喫煙者が席を外し、喫煙し、戻ってくるまでの間、「特に業務上の指示を受けることもなく、労働から解放されることが保障されている」のであれば、喫煙タイムは(法的には)「休憩時間」であるといえますし、トイレ休憩も同じといえば同じこと。
ただ、たばこやトイレで10分程度席を外すといった、細切れの時間を休憩時間として時間の管理をすることは、企業にとってもかなりの手間と負担がかかってしまうので、こうした時間は黙認されているのが現実なのです。

喫煙タイムを認めない企業が増えているワケ

しかし、いくら喫煙タイムが黙認されているとはいっても、長時間の席外しやあまりにも回数が多いなど、その「取り方」が常識を外れている場合には、会社側から何らかの懲罰を受ける可能性があります。
労働者は勤務時間中、職務に専念する義務を負っているもの。喫煙するために無断で職場を離れることがあまりにも多い場合などは職務専念義務違反を問われることになるからです。会社から注意・指導を受ける、また、懲戒処分となってしまっても反論はできません。
そういった面からも、企業側も職場での喫煙の「現状」を確認し、周りの社員に不満を感じさせているようなケースがないかを知っておくべきです。そうした最低限の管理の有無が非喫煙者の不公平感を抑える要因ともなります。

また、今は勤務時間中の喫煙禁止を就業規則に盛り込む企業も増えています。その理由はズバリ「喫煙のために離席することで生じる労働損失」。実際、喫煙者が「ちょっと一服」と席を外す時間は、業務時間を削り、生産性にも損失を与えるものだと考えていることを示すデータもあり(下図参照)、その認識が多くの企業に浸透しているのです。

喫煙者にとっては「喫煙する権利がある」という主張もあるかもしれませんが、「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない」という最高裁の判決(昭和45年9月16日)もあり、制限に屈しやすいもの。
受動喫煙の有害性に関するさまざまなデータを見ても、受動喫煙対策をしない企業が、逆に労働者から「安全配慮義務違反」だとして損害賠償を求められてしまう可能性だってあります。

そうした面から考えても、勤務中の全面禁煙は労働者の喫煙権利侵害とはならないといえると思います。もちろん、喫煙は個人の趣味嗜好の問題ですから、喫煙習慣のある労働者とそうでない労働者を比較し、差別的な扱いをすることは許されません。

やはり、勤務時間中の全面禁煙を採用する企業は、今後もっと増えていくことになるでしょう。
たばこを吸っていいのは認められた休憩時間だけ…。それがオフィスの共通認識となる日もそう遠くないはずです。

  • 労務・制度 更新日:2015/12/04
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