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歴史上の人物に学ぶ人材マネジメントPART4 山本五十六 編

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「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてやらねば人は動かじ」とは聯合艦隊司令長官・山本五十六の有名な言葉ですが、実はこれには続きがあります。「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」と続きます。なにやら、かなりハードルが上がってしまいましたね……。

この格言からは、いかに人を動かすということが難しいか、徹底的に人に向き合うことが必要かということがわかります。海軍兵士の扱いにはこれほどまでに丹念でしたが、人事については、とある意外な人物に嘱託していました。山本五十六長官の意外な足跡から、人を見抜く方法を探ります。

採用に人相見を嘱託した山本五十六

山本の下で航空本部の教育課長をしていた大西滝次郎(特攻隊育ての親)の岳父の教え子に、大学の歴史科を卒業して人相・手相見をしていた水野義人氏という人物がいました。山本は大西の口添えで、水野に霞ヶ浦航空隊のパイロットの技量について、人相・手相を見させたところ、87パーセントの的中率であったといいます。さらに部下の手相・人相も見させたところ、彼らの技量についても、ほとんどが的中したことから、嘱託に採用することに決めました。

冒頭に挙げた名言はもちろんのこと、人相・手相見の易者をも雇った山本五十六。科学的姿勢のみならず、科学的に証明されていない易学すらも、その効果があることを認めると積極的に採用したその姿勢は、任務への執念にほかなりません。

国全体の空気を見据えた人事

昭和15年ごろに水野氏は、「あと一年もすると戦争が始まります」「最近、街を歩いている女性の顔を見ると、どうも未亡人の相が出ています」と述べ、その後、実際に戦争が始まります。

また昭和20年はじめ、「最近、東京の街を歩くと老若男女、死相の出ている人が急増している。大変なことが起こる」と述べ、その後10万人の死者を出す東京大空襲があります。また、同年7月には「最近、特攻基地を回ってみましたが、特攻隊の人たちの顔からどんどん死相が消えています。これは戦争が終わる徴候です」と終戦を言い当てたといいます。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、 ほめてや」り、「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてや」り、「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば人は実ら」ないとまで、人の扱いに気を配る山本五十六長官が、人相というまったく別基軸の特殊能力者を採用したというのは興味深いところです。

役職の登用については、権限があっても、国民総力戦となった時代において、個々の兵員の採用・不採用は選り好みしていられない状況であったことが想像できます。そんななかで、人相のスペシャリストを採用した慧眼は、自ら率いる部隊のみならず、国全体の空気を見据えていたのでしょう。

現代の人材採用において学べること

人を見る目は失敗することで身につくといわれます。「〜せねば〜せず」という山本五十六艦長の言葉はかくも重く、現代の人事にも普遍的に通じるものがあります。しかしその裏には、すでに採用した人材のみならず、時代の流れを読もうとする貪欲さがあったことも無視できません。

このことから学べることは、人材採用の際には徹底的に寄り添い育てるという面だけではなく、その人材が入ることで組織がどう変化し、時代背景をどのように鑑みることができるのか。客観的な判断のできる人材かどうかを見極める必要があるということです。

育成における情熱と厚情、人事における冷静さと判断基準。アメリカとの国力の差を知り、「誰よりも戦争に反対した男」山本五十六長官の人材に対する姿勢は、戦時中ではない現代においても、深い教訓を与えてくれます。

  • 労務・制度 更新日:2015/11/26
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