女性活躍推進の指標「なでしこ銘柄」を知る
なでしこ銘柄と準なでしこの選定を受けるためには、市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQに上場しているという前提条件の他に、3つのスクリーニングを通過する必要があります。スクリーニング内容は、「なでしこ銘柄」・「準なでしこ」共通して2つあり、3つめにはそれぞれ別のものが設定されています。
【スクリーニング要件①】
行動計画を策定しているかどうか。(従業員数300人以下を除く)
※従業員300人以下の企業については、行動計画を策定していなくとも、次のスクリーニング項目②を実施していればこのスクリーニング要件は通過します。
【スクリーニング要件②】
データベースで女性管理職比率の公開を行っているかどうか。
厚生労働省が運用している「女性の活躍推進企業データベース」というものがあり、そこで女性管理職の比率を開示しているかどうかが問われます。このスクリーニング段階では数値は関係ありません。
【スクリーニング要件③】※なでしこと準なでしこで内容別
「なでしこ銘柄」⇒(社内外問わず)女性取締役が1名以上いる
「準なでしこ」⇒取締役、または監査役、または執行役員のいずれかの役職に女性が1名以上いる(取締役に関しては社内外問わない)
要件①②に関しては、数値や内容は問われず、策定しているかどうか。記載しているかどうか。という点がスクリーニングの対象となるので、取り組めば通過する範囲になります。しかし③に関しては、現状女性幹部が0名の企業がスクリーニングを通過しようとする場合、新たに幹部を選出する必要があるため、やろうと思ってすぐに出来ることではない要件となります。
「なでしこ銘柄」または「準なでしこ」として紹介を受けるための評価項目は、大きく7つに分かれます。
1. 経営戦略に組み込まれているかどうか
経営トップによるコミットメント、ポリシーの明確化、KPI・ロードマップの策定が行われているかどうかなど。
2. 推進体制の構築が行われているかどうか
経営レベルの推進体制の構築がされているかどうか、事業部門との連携は出来ているか、経営幹部は推進体制の構築を実行出来ているかどうか
3. ガバナンスの改革
取締役会の監督機能を向上出来ているかどうか、取締役会における取り組みの監督と推進が行えているかどうか、多様な人材の取締役・監査役登用を行っているかどうか
4. 全社的な環境・ルールの整備
属性に関わらず活躍できる人事制度の見直しを行っているかどうか、働き方改革を実行しているかどうか
5. 管理職の行動・意識改革
管理職に対するトレーニングの実施有無、多様性を活かせるマネジメントを促進する仕組みの整備を行っているかどうか
6. 従業員の行動・意識改革
多様なキャリアパスの構築が出来ているかどうか、キャリアオーナーシップの育成を行っているかどうか
7. 労働市場、資本市場への情報開示と対話
①-⑥で一貫した人材戦略を策定・実行し、その内容・成果を効果的に労働市場へ発信出来ているかどうか。投資家に対して企業価値向上に繋がる方針・取り組みを適切な媒体を通じて積極的に発信し、対話を行っているかどうか。
上記7つの評価フレームを元に調査が行われ、質にも注目して評価が行われます。 経営トップの旗振りが重要であること、経営層・マネジメント層・従業員層とそれぞれに対しての意識の高さを問うような項目が中心であること、仕組みが整っているか、そしてその仕組みが実際に運用され現場に活かされているかどうかなどが注目されていると言えます。
なでしこ銘柄レポートに載るためには、なでしこ銘柄・準なでしこに選ばれるしか方法はないのでしょうか? 実は、一定の条件をクリアすれば、なでしこ銘柄発表時にリリースされる冊子において社名と女性活躍推進状況を掲載してもらえます。
女性活躍度調査に回答した企業の名称・取組・開示状況を答えると、一覧確認して紹介されるのが「なでしこチャレンジ」という企画になります。なでしこ銘柄、準なでしこを目指す企業の一覧となりますので、対外的なPRを行いたい企業はぜひなでしこチャレンジに参画されると良いと思います。
ただし、掲載イメージとして仕上がった内容のチェックは各社に対して行わず、調査結果への回答を元に掲載内容が確定されるようです。内容が正しい情報かどうかは綿密に確認が必要なので、ご注意ください。
3つ目は、女性活躍推進に向けた戦略的な取り組み事例に関する質問です。事例を回答した企業の中から、「注目企業」としてなでしこ銘柄レポート内に特集を組まれます。ベストプラクティスを他社と共有する観点から行っており、例えば今年度注目される視点としては、男性の育児参加支援、積極的な女性取締役の登用に向けた工夫・取組みや、個人のキャリアアップ・企業の成長に繋がる兼業・副業の許可をしているパラレルキャリアへの推進事例などで、毎年注目視点は変化していきます。
企業の取り組み例
過去のユニークな事例として、キリンホールディングス株式会社の「なりキリンママ・パパ研修」があります。子供がいない営業社員が、仮想の子供を設定し、上司・同僚に共有したうえでママパパになりきった時間制約のある働き方を徹底するという研修を実施。これにより、参加社員のタイムマネジメント意識の向上、周囲との連携強化などにより効率的な働き方を実現。且つ育児中の社員の置かれた状況に対する理解が深まり、社内のマザーワーカーに対してのフォローアップも積極的になるなど風土改革に繋がった事例が注目されました。
その他の注目企業の取り組み事例として、不妊治療に対しての会社としてのサポートや、残業軽減することが出来た分の残業代(年間10億円)を全額社員に還元するもの、保育費用としてベビーシッター代の補助や家事代行サービスに対しての補助などを行っているもの、保育所への入所に向けた支援として保活(保育所に入るための活動)の外部サービスを利用できる制度、育休中に受講した自己学習のための研修費用の一部を会社が負担する制度があったりなど、非常にユニークな制度が注目企業のコーナーにて紹介されています。
- 労務・制度 更新日:2019/08/29
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