人事スペシャリスト・CA曽山哲人が解説!採用したい人が見つかる7つの質問&チェックポイント
「良い人材となかなか巡り合えない……」
そんな悩みを抱えている人事担当者は少なからずいるはず。もちろん、これにはさまざまな原因が考えられますが、採用側がすぐに実践できる対処法のひとつに「面接で“良い質問”を投げかける」があります。
良い質問とは、「優秀な人材かどうかを見極められる質問」のこと。ともあれ、言うだけなら簡単。いざ面接となると、そんなにうまく思いつかないものです。だから、他社の人事担当者はいったいどんな質問をしているのか、知りたくありませんか?
そこで今回は、サイバーエージェント取締役・人事管轄の曽山哲人さんに登場していただきました。『強みを活かす』『クリエイティブ人事 個人を伸ばす、チームを活かす』などの著書で知られる、有名人事の曽山さん。サイバーエージェントの人事の屋台骨を支えてきた彼は、採用・育成のスペシャリストです。
曽山さんが考える、採用面接の良い質問とはどのようなものでしょうか?
Q曽山さんが採用面接で最初に投げかける質問って何でしょうか?
曽山:まず聞くのは「サイバーエージェントとの最初の出合いはいつですか?」ですね。サイバーエージェントの場合、サービスのユーザーになったことで知ったという人は多いですし、ニュースで知ったという人もいます。
どんなきっかけだったから良いとか、早いほど良いというわけではなく、単に接点を聞く。そうすることで入口がわかるので、相手が自社にどんなイメージを持っているのか想像しやすいんです。そうして、深掘りしていきます。
そうすると「売り上げをアップさせたい」「代表自身の名前を売りたい」など様々な答えが返ってきます。今回のケースだと「採用を成功させたい」になるでしょう。
Qそこから入ると、話を広げやすい気がしますね。
曽山:たとえば、AbemaTVでサイバーエージェントを知ったならば、「なぜ働きたいという考えに至ったのか?」を深掘りするんです。
「新しいサービスだし、日本には類似したものがないからです」と答えていただいた場合、サービスの価値を理解してくれているなと感じられる。「僕もその仲間になりたいんです」と続けば、チャレンジ精神があることもわかります。
人から入社を勧められて採用面接に来た場合も同様です。勧められたとはいえ「なぜエントリーする気になったのか?」を深掘りすると、その人の働く場所に対する考え方や、新しいことへの意欲が見えてくるんです。自発的に来ていないから駄目ということは決してありません。
Qでは、その次はどんな質問がいいのでしょう?
曽山:意欲に関してもっと深掘りしたいので、「自社でどんなことをしたいですか?」と聞きますね。たとえば、AbemaTVでサイバーエージェントと出合って、業務にも興味がある人の場合は「AbemaTVでどんなことをしたいですか?」と聞くようにしています。
Q入社後のことをどのくらい考えているかがわかりますね。
曽山:この質問をすることで、どれだけその会社や部署のことを調べてきているのかという本気度がわかります。もし、確実な情報源が得られなかったとしても、どれだけリアリティを持ってイメージしているのかを可視化できます。
求職者のイメージと実際の業務とのズレもわかるので、職種のミスマッチも防げる可能性があるんです。
Q「会社の事をよく調べているな」と感じる人ってどんな人ですか?
曽山:サイバーエージェントの過去事例を話すと、採用面接の前に社員と直接会って情報を得ている人がいました。知り合いのツテをたどって会っていたんです。こういう人は本気度も高いですし、業務のイメージをすごく膨らませているなと感じます。
Q入社後の業務を具体的にイメージできていることが大事なのですね。
曽山:そうですね。自分がどうなりたいのかという“ビジョン”の有無が大事です。それを具体的に描けているほうがいいと思っています。ただ、一口にビジョンと言っても、「自分」「組織」「社会」のどの領域を見ているかによっても、求職者のマインドは違います。
Qどのくらい広い視野で考えているか、ということでしょうか?
曽山:広いほど良いというわけではないですが、サイバーエージェントとしては「社長になりたい」「出世したい」という“自分”ビジョンが具体的な人よりも、「チームでこういうことがしたい」「会社でこうしたい」という“組織”ビジョンが具体的な人のほうが、会社の持つマインドにマッチしているなと思います。
一番すごいのは、社会ビジョンを持ちながらリアルなイメージを持てている人。「僕はまだ何もできていないので、この会社で具体的にこんなことをしたい」と言ってもらえると、魅力的に感じますね。
ただし、見たいのはあくまでも“本気度”です。自分ビジョンにしろ社会ビジョンにしろ、話の中に本気が見えるかどうかが重要になってきます。サイバーエージェントでは若手社員に新規事業を任せることも多いので、このように採用面接でマインドを見るのは必須です。
ここで意思表示できる人なら、入社後に任せられることも多いですし、その分フィードバックをもらえる機会も増えます。成長もきっと早いですよ。
Q相手の特性(粘り強い、性格が素直など)を知るために、どんな質問をしていますか?
曽山:成功体験を聞いています。ただ、「成功体験」という単語を出すと身構えてしまうんですよ。「これ、成功って言っていいのかな」といった風に。なので、「ご自身が今までで一番『やったな!』と思えたことって何ですか?」という言い回しにしていますね。
これなら、成功か否かに左右されず「やった!」という自分自身の感情を優先したエピソードが引き出せます。と同時に、何をもって成功・成長としているのか、相手の価値観もわかるんです。
ダイエット部が始動した2013年頃は、「社会保険が破綻するのではないか」と言われ始めていた時期です。その前提があったため、“健康”のために努力している企業は、メディアとしても取り上げやすかったんだと思います。
このように、「世の中で何が話題になっているのか」をキャッチして、それに関連して自社の情報を発信する。それを意識するだけでも、メディアから取り上げてもらえる確率はずいぶん上がるんです。加えて、この「見せ方を工夫する」ということが、自ずと企業のブランディングにもつながってきます。
Qここで深掘りする場合は、話をどう展開させれば良いのでしょう?
曽山:成功までの過程は大変だったはずなので、「具体的にどんなことをして、どんな成果を出したのか?」は聞くべきでしょうね。そこでようやく、相手の特性が見えてきます。
Qその特性は、入社後の働きぶりにも反映されますか?
曽山:されますね。もちろん採用面接で100%わかることは絶対ないんですが、求職者がこれまで実際にやってきたことなので、業務にも高い確率で反映されます。
あと、この質問では相手の持つ「価値をアピールする力」も見ることができます。見ず知らずの私に「すごいですね!」って言わせるほどの言語化スキルって、実はすごい武器なんです。
Qでは逆に、失敗体験を聞くことは?
曽山:私は聞いていますね。これも感情面からアプローチして「辛かった出来事は何がありますか?」と質問するようにしています。人間って、生きていれば何かしら壁にぶつかるじゃないですか。それがどんな壁だったのかを聞くことで、その人のストレスへの対処法を知ることができます。
Qなるほど。その上でどうリカバリしたのかまで聞くと、より深く理解できますね。
曽山:そうなんですよ。たとえば新規事業を立ち上げたとき、逃げずに乗り越えられるかどうかもわかります。私たちの場合、新しいものを生み出すときはゼロからのスタートなので。何もかも成功するなんて思っていないんです。
チャレンジには失敗がつきものだし、失敗は財産。だからこそ、失敗をどう受け止め乗り越えているのか知ることで、成功体験とは違ったその人の強みがわかります。
曽山:「最近ハマっていることは何ですか?」「マイブームはなんですか?」と聞くこともあります。人となりを知るには良い方法なんです。しかも、これが結構楽しい。たとえば、アニメや音楽、登山と、私が全然知らない話が度々出てくるんです。
そうすると私も気になるので、音楽なら「何というアーティストが好きなんですか?」と聞いて深掘ります。その回答から、相手の特性や性格が見えてきます。
Qたとえば、どのように?
曽山:好きなことになるとスイッチが入るタイプなんだな、他の人とコミュニケーションを取ることが好きなんだな、色々なことに興味を持っているんだな、とかですね。その特性が仕事に反映されるケースも多いです。
趣味やマイブームへの姿勢と仕事への姿勢に差があるときは、「趣味には熱心だけど、仕事にはわりとドライですよね」と聞いたりします。すると、その人の仕事とプライベートに対する価値観が見えて、なるほどうまく切り替えているんだなと、わかったりします。
Q「絶対にチケットを取る!」という粘り強さは、仕事でも活きるかもしれないですね。ともあれ、これまで真面目な面接をしていた企業がいきなりラフな質問をするのは、ちょっと抵抗があるかもしれません。
曽山:ここまで砕けた話でなくても、「前職の一週間の流れは?」「朝はどう過ごしていましたか?」といった話でもいいと思いますよ。異業種からの転職なら、こういう質問から生活スタイルがわかることも多いでしょうし、話も広がりやすいです。
Q他には、どういった質問をしていますか?
曽山:「この会社に入るにあたり、不安ってありますか?」は、意図的に聞いています。入社後に起こるであろうリスクをどう捉えているかがわかりますね。です。
Qどういった答えが好例なのでしょうか?
曽山:たとえば、「新規事業を立ち上げると、未経験の新卒社員から他社で経験を積んだ中途社員まで一通りいるチームになるので、チームビルディングには不安を感じます。なので私はこういう工夫をしたいです」という答えです。
この場合、業務内容のリサーチのほかにリスクの対処法まで冷静にイメージできているじゃないですか。こういう人はすごいなと思いますね。あとは、時間が許せば最後に「他に何か質問はありますか?」も聞くことにしています。その人が他に抱えている不安や、興味がより詳しくわかるので。
Q求職者の中には、話すのが苦手な人もいますよね。そうした人を面接する際のコツはありますか?
曽山:ゆっくり時間をかけることですね。相手から「ちょっと考えていいですか?」と言われたら、「どうぞ遠慮なく考えてください」と待ちます。
たくさん質問をすることに重きをおかず、数を減らしてもいいからじっくり向き合うのがいいと思います。というのも、私たちは採用面接をするうえで“コミュニケーションスキル”を判断材料にしないようにしているんです。大切なのは、求職者の内面です。
サイバーエージェントにも、話しがうまい人もいればそうじゃない人もいます。そして、そうじゃない人の中にも、優秀な人はたくさんいます。だから、そこで判断してはいけないんですよ。
Q口下手だけど優秀な人を見分けるために、おすすめの質問はありますか?
曽山:「将来成し遂げたいことはなんですか?」と聞いてみるといいですよ。優秀な人なら、きっと答えが返ってきます。たとえば、「僕の技術を使って世界を豊かにしたいです」と返ってきたら、「具体的にはどんなことを?」「達成するとどんな世界になるんですか?」と深掘りしていきます。
Qそうすると、求職者の本気度がわかりますね
曽山:「僕の技術を使って世界を豊かにしたいです」なんて、野望を抱いていなければ言い切れないですよ。そして言い切ったからには、きっと具体的なビジョンがあるはず。そこを聞き出すことが大事です。
「志望動機はなんですか?」はNG。形式的な質問はしない。
Qここまでいろんなお話を伺いましたが、形式的な質問をしていないのが印象的です。成功体験や失敗体験もあえて言い回しを変えていますし。
曽山:そうですね。志望動機や自己PRのように、形式的な質問って効果が今一つなんですよ。なぜかというと、面接を受ける前に準備できてしまうから。そうすると、人となりがわかりにくくなってしまうんですよね。だから、決まりきった質問はしないようにしています。雑談くらいの雰囲気がベストなんですね。
Q予定調和でない面接だからこそ、本音が聞ける。そうすれば、入社後のミスマッチも少なくなりますね。
曽山:深掘りは“映像化”できるまでやること
Q最後に、今回聞いたお話の中でポイントとなる“深掘り”の仕方についても伺いたいです。要は、一問一答のようなやり取りでは駄目ということでしょうか?
曽山:そうですね。質問して、回答をもらって、そこで終わりというやり方は本当にやめたほうが良いです。くり返しになりますが、大事なのは人となりを知ること。
人は、興味を持ってくれた人に興味を持つので、まずは面接官が求職者に興味を持たないと採用活動として失敗なんですよ。なので、回答をもらったらこちらもイメージを膨らませましょう。そこで重要なのが、「面接官が頭の中でビジュアライズ(映像化)できるまで、詳しく話を聞く」ということです。
Qというと、具体的にはどういうことですか?
曽山:たとえば、営業職の面接で「僕はMVPを獲ったことがあります」という回答があったします。それだけでは月間のMVPなのか年間のMVPなのか、はたまた全社のなかでMVPを獲ったのかわかりませんよね。ビジュアライズするには、要素が少なすぎるんですよ。
そこで、「どの部門のMVPなんですか?」「何人中何人が獲ったんですか?」「競った仲間は全員同じ世代ですか?」「すごいですね、どんな工夫や努力をしたんですか?」といろんな方向から質問して、映像のぼんやりしている部分をはっきりさせていきます。
Q頭のなかに描くことを意識すると、質問も浮かびやすいかもしれませんね。それに、求職者は「興味を持ってくれてるからもっと詳しく伝えなければ」と思うから、聞き出しやすくなりそうです。こういった面接テクニックは、曽山さんが自身の経験の中で自然と身につけたのでしょうか?
曽山:一番は、サイバーエージェント社長の藤田晋の考え方が影響していますね。藤田も元々は人材関連の会社にいたことがあるので「人となりが最もよく見えるのは雑談だ」と導き出したようです。それに、一緒に働きたいと思えるか働きたいと思ってもらえるかという相性を確認する意味でも、こういった面接のほうがわかりやすいですよ。
“人となり”を知ることで、採用を成功させよう
会社の業績だけでなく、社員個人の活躍も目覚ましいサイバーエージェント。その根幹を支える曽山さんは、「人となりを知る事が最優先」「話の内容をビジュアライズする」というシンプルかつ効果的なメソッドのもと、優秀な人材を見極めていました。
曽山さんが明かした方法論を参考に、効果の高い採用面接を実現しましょう。
<質問&観点のまとめ>
① 会社との出会いを知る質問
「自社との最初の出合いはいつですか?」
② 本気度をはかる質問
「自社でどんなことをしたいですか?」
③ 成功体験を導く質問
「一番『やったな!』と思えた出来事は?」
「辛かったことは?」 ⑤ 特性や性格を把握する質問
「最近ハマっていることは?」 ⑥ リスクと向き合う質問
「入社するにあたり不安なことは?」 ⑦ 口下手な光る原石を見つける質問
「どうぞ遠慮なく考えてください」
- 人材採用・育成 更新日:2017/09/22
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