マネージャーが転職を決めるとき|ある日偶然バーで隣り合わせた、KOMPEITOの同士たち
優秀なリーダー・マネージャークラスの人材に来てもらうには、「彼らが転職を決めたきっかけ」を知り、それをモデルケースとして自社の採用活動に活かせばいい。そんな趣旨から始まった本連載「マネージャーが転職を決めるとき」。
第4回の主人公は、オフィス向けに旬の野菜や果物を届けるサービス「OFFICE DE YASAI(オフィス・デ・ヤサイ)」を運営する、株式会社KOMPEITO(コンペイトウ)のCTO・黒木信吾さん。
もともとはゲーム関連会社や広告代理業など、野菜とは関係のない業界にいた彼。転職のきっかけになったのはなんと「KOMPEITO創業メンバーと、たまたまバーで隣り合わせたこと」だったというから驚きです。
その裏側にはどんなドラマがあったのでしょうか。今回は、黒木さんの個性的なキャリアにスポットライトを当てます。
Qまずは、黒木さんのこれまでのキャリアを簡単に教えてください。
黒木:私はKOMPEITOが4社目で、1社目から現在までずっとWebエンジニアです。
1社目ではモバイルゲームの開発やプロデュースなどをしていました。2社目では日本全国規模で展開している総合ディスカウントストアのシステムを開発・運営する会社に勤務。3社目は広告代理店業やマッチング系サービスなどを主とする会社で働いていました。
そのタイミングで、偶然の出会いがありました。テクノロジーとビジネスをテーマにしたイベントに参加した際、講演していたコルク代表取締役の佐渡島を、知人から紹介されたんです。彼と話をしているうちに、そのビジョンに強く共感し、コルクで働くことを決心しました。
Qそのキャリアから「野菜」を扱うベンチャー企業のCTOに就任、というのは非常に珍しいパターンかと思います。なぜ、KOMPEITOへ転職を?
黒木:順を追ってお話しすると、社会人になって数年くらいしてから芽生えた「地元に貢献したい」という目標が影響しています。私の地元は宮崎なんですが、地元から離れて東京で暮らしたことで、宮崎の良さが少しずつ客観的にわかるようになってきたんです。
それで、「いつかは、自分の地元やそこで暮らす人たちに貢献できるサービスをつくりたい」と考えるようになっていきました。その夢を、30歳までに叶えたいと思ったんです。
2社目への転職を決めたのも、それが理由です。その企業は全国展開している総合ディスカウントストアのシステムを開発・運営していたので、そこでエンジニアとして働くことで地方に住む人たちにも貢献できるのではと考えました。
そして3社目でも、地方にいる方々の役に立てるようなマッチング系サービスを開発していたんです。
地元に住む人たちに貢献すること。その軸を、ずっとブラさずにここまでやってきたわけですね。
Q4社目となるKOMPEITOを知ったきっかけは?
黒木:私はひとり飲みをするのが趣味なんですが、ある日偶然入ったバーで、KOMPEITOの創業メンバーである川岸・渡邉とたまたま隣の席に座ったんです。
Qなんたる偶然! そこで、意気投合したんですか?
黒木:そうなんです。実は、彼らと私は年齢も同じで、その日は非常に話が盛り上がりました。
当時の彼らはまだ起業して間もない時期で、「日本における農業の物流を改革したい」という考えを持っていました。2人はもともと農業系の物流コンサル会社に勤めており、日本の農業が抱える課題を解決したいと思って起業を決めたと、そのとき話してくれたんです。
けれど、彼らは物流についてはスペシャリストですが、ITのことはわかりませんでした。それで、ちょうどエンジニアを探していたんです。
Q偶然に偶然が重なったんですね。とはいえ、バーで会って意気投合したというだけでは、転職を決める決定打にはならなかったと思います。「KOMPEITOでCTOとして働きたい」と思えたのは、この会社にどのような要素があったからなのでしょうか?
黒木:エンジニアは普段、物流コンサルタントと会って話すなんて機会はほとんどありません。だからこそ、2人が語る「野菜の物流を変える」という概念が私にはとても新鮮に映ったんです。
また、創業メンバーと出会ってしばらくの間は、3社目の会社に勤めながらボランティアとしてKOMPEITOを手伝っていたんですが、その業務を通じて2人がどれだけ真剣に物流を変えようとしているのか、ひしひしと伝わってきたんです。「この人たちは本気だ」と思えました。
加えて、「物流 × 野菜 × IT」という領域で働いているエンジニアは、世の中にほとんどいません。だからこそ、その分野を担うことで、自分自身のエンジニアとしての希少価値も上がるのではないかと考えました。
そしてもう1つの理由が、先ほども出てきた「地元に貢献する」ということ。野菜を生産しているのは、当然のことながら、都会よりも地方在住の方が多いです。つまり、物流を改革して野菜の流通量や消費量を上げることは、巡り巡って地方を元気にすることに繋がります。
これらの要素が揃っていたからこそ、KOMPEITOでCTOとして働くことを決めたんです。
黒木さんが持っていた「人生の目標」と、KOMPEITOが目指していた「ビジョン」。それらがピッタリ合ったからこそ、黒木さんにとって同社が魅力的に映ったのですね。
Q最後にもう1つ質問したいのですが、CTOクラスの人材や優秀なエンジニアを採用するとき、企業が気をつけるべきコツのようなものはありますか?
黒木:これは私の主観なんですが、CTOになる人は総じて「困っている人を放っておけない気質」があると思います。たとえば私自身も、エンジニアがいないことによって創業メンバーがどれほど大変な思いをしているか理解できたからこそ、KOMPEITOに興味を持てたんです。
入社したばかりの頃も、「とにかく1日でも早くシステムを開発して、2人に楽をさせてあげたい」と考えていました。
Qなるほど。では、企業の求人記事などでも、ポジティブな情報ばかりではなく自社の持つ課題も積極的に発信していった方がいいのかもしれませんね。
黒木:そうですね。「今のメンバーではこれが実現できないから、力を貸してほしい」と求人記事に書いてあれば、エンジニアは「自分のスキルを使って何ができるだろう」と考えることができますから。そうして考えてもらった内容を、採用面接などで話してもらうといいと思います。
Q他に、エンジニアを採用する際に気をつけるべきことはありますか?
黒木:「自社にはどのようなタイプのエンジニアが必要なのか?」を明確にすることだと思います。
エンジニアにも色々な人がいて、何でもバランス良くこなせるジェネラリストもいれば、特定の分野に特化したスペシャリストもいます。得意とする技術も、エンジニアごとに異なっているでしょう。
だからこそ、たとえば「自社にはまだエンジニアがいないから、幅広い業務をまんべんなくこなせるジェネラリストを採用しよう」とか「サービスを拡大するためにサーバを強化したいから、サーバのスペシャリストを採用しよう」という感じに、方針を決めるといいと思います。
総括すると、エンジニアに対する「期待」と「役割」を明確にすることが、採用では大切なのではないでしょうか。
優秀な人材は、給料や福利厚生の条件だけでは転職を決めません。そうした人たちは、企業理念や事業の社会的意義など、会社の持つ「ミッション」に共感し、自分の働く場所を決めます。
「なかなか良い人が応募してこない」と悩むあなた。まずは、自社がミッションを発信できているか、それが外部に伝わっているか、一度振り返ってみましょう。それが実現できれば、同じ志を持つ仲間は自然と集まってくるはずなのです。そう、かつての黒木さんがそうだったように。
- 人材採用・育成 更新日:2017/06/13
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