マネージャーが転職を決めるとき|コルクCTOを突き動かしたのは、「未来を編集する男」の言葉
リーダー・マネージャークラスの人材を採用する。
これは、多くの人事担当者にとって絶対に叶えたい目標。そして同時に、叶えるのが非常に難しい目標でもあります。なぜなら、そうした人材は企業における事業の根幹を担っており、簡単には他社へ移ってくれないからです。
ではどうすれば、彼らを採用できる可能性が高まるのでしょうか。その1つとして「リーダー・マネージャークラスの人材が、転職を決めた理由や経緯を知る」という方法があります。つまり、過去の事例をモデルケースとすることで、自社の採用活動にそのノウハウを活かせるというわけです。
今回ご登場いただくのは、2016年10月に漫画家や小説家などのエージェント事業を行う「株式会社コルク」の取締役CTOに就任した萬田大作( @daisakku )さん。
彼がコルクへの転職を決めたのは、いったいなぜだったのでしょうか。そして、萬田さんの考える「企業が採用を成功させる方法」とは。その秘密を、あたかも小説のページを1枚ずつめくるように、言葉にしてもらいました。
Q萬田さんがコルクへの転職を決めたのは、何がきっかけだったのでしょうか?
萬田:もともと私は、ある企業で新規事業の開発を担当していました。でも、「5年経ったら辞めよう」と思っていたんです。だからこそ、4年が過ぎたくらいの頃に、自分で会社を立ち上げるか他社でCTOとして働こうと考え、情報収集をしていました。
そのタイミングで、偶然の出会いがありました。テクノロジーとビジネスをテーマにしたイベントに参加した際、講演していたコルク代表取締役の佐渡島を、知人から紹介されたんです。彼と話をしているうちに、そのビジョンに強く共感し、コルクで働くことを決心しました。
Q萬田さんの心が動いたのは、どうしてなのでしょうか?
萬田:佐渡島の持つ「未来を編集(※)する力」に惹かれたのが大きいです。
※編集…書籍や文章、映像などの素材を、取捨選択し、構成を考え、配置・調整して1つの作品にしていくこと。
Q未来を編集する力……とは、具体的にどういうことでしょうか?
萬田:彼はとにかく、未来のビジョンを考えながら計画を立てたり、話をしたりするのが上手いんです。たとえば、佐渡島がコルクを立ち上げたのは約5年前なのですが、その段階で既に「テクノロジーを活用してクリエイターや作品を世に広める」というコンセプトを確立させていました。
近年、ようやくメディア業界もテクノロジーが重要視され、エンジニアの募集に力を入れ始めています。時代の変化にいち早く気づきそれを具現化する。これが、彼の持つ「未来を編集する力」の一例です。
Q他社よりも、遥かに早いスピード感で未来の事業を描いていたわけですね。
萬田:はい。それに加えて、私自身が年間200冊くらい本を読む、大の本好きであること。そして、「IT×出版」という領域が、まだ競合他社が登場していないブルーオーシャンのビジネスだったことなどもあり、「この会社で働けば、間違いなく事業は成長するし面白くなるだろう」と考えたことも決め手になりました。
Q多くの企業は、佐渡島さんのように優秀な人材を惹きつけるようなカリスマはいない、というのが実状かと思います。そのような企業は、どうやって採用力を強化していけばいいのでしょうか。
萬田:「企業の文化を作る」というのが大事だと思います。そして、それを実現するには企業のビジョンを明確に定義することが必要です。ビジョンが定まっているからこそ、社員全員が同じ方向を向いて仕事をすることができ、文化が醸成されていきますから。
たとえば、コルクの行動指針は「さらけだす・やりすぎる・まきこむ」というものです。さらけだすと、人は情報開示してくれる。やりすぎると、もっと手伝ってくれる。巻きこむと、世の中が変わる。
この内容に決めるために、佐渡島を含めたメンバーたちと数多くの議論を重ねました。「コルクの目指すべき世界観とは、どのようなものだろう?」とアイデアを出し合いながら。
Q確かに、このビジョンがあることで、社員は何を行動指針にしたらいいのかがクリアになりますね。同時に、求職者から見ても「どういう企業文化なのか」が一目瞭然になるように思います。
萬田:そうですね。これは「企業の文化を編集する行為」と言えるかもしれません。同様に、私たちは採用ページに記載する文言にも細心の注意を払い、アップデートを続けています。
例を挙げると、私たちは「求める人物像」の欄に「ネット時代の新しいエンターテイメントの世界を、コルクというチームで作っていきたい人」と書いています。でも、以前はそうではなく、「ネット時代の新しいエンターテイメントの世界が“好きな人”」と書いていました。
なぜ変更したかというと、コルクに入社するということはエンターテイメントが好きだけでは駄目で、「作りたい」と考えられる必要があるからなんです。「どんな人に入社してほしいのか」を徹底的に吟味し、それに合わせた募集要項にすることが重要だと思いますね。
採用ページまでも、丁寧に編集する。これがコルク流なのですね。
Q萬田さんが転職を決めた理由。そして、コルクの企業理念や採用ページの作り方など、とても参考になりました。最後は、優秀なCTOやエンジニアを採用するために、企業はどのようなことをすべきか、お聞かせください。
萬田:佐渡島がCTOを探していた時期に実践していたことが参考になるかもしれません。実は、佐渡島は私を探し当てるまでに、とにかく大勢のエンジニアやCTOと会って、会って、会いまくったそうです。それから、エンジニアが集まる勉強会にも、CTOを探すために講師として何回も参加したといいます。
Qそこまでやっていたんですか!多くの採用担当者は、「良いCTOやエンジニアが採用できない」と悩んではいても、自発的に会おうとはしないですよね。
萬田:はい。採用を成功させるには、会う人の数を増やすことが効果的だと思うんです。それと似た施策として「エンジニアを紹介してもらえる機会を増やす」という手段もあります。これは、私が実際に普段やっていることです。
Q具体的には、どうやって増やしているのですか?
萬田:いろんな人に、「エンジニアの人を紹介して!」と言いまくっています(笑)。シンプルな方法ですけど、それだけで紹介してもらえる機会ってすごく増えるんですよ。
佐渡島はよく「編集とは、集めて削って並び替えること」と話しているんですが、きっと採用もそれと同じ。会う人の数を増やし(集めて)、どの人が必要かを見極め(削って)、どのような配置にするかを考える(並び替える)。そうすることで、企業の採用力って少しずつ高まっていくと思うんです。
萬田さんが転職を決めた理由。彼が考える採用活動のあり方。そのいずれも、「編集」というキーワードは大きな意味を持っていました。彼が語ってくれたように、企業の方針や採用プロセスを編集するということは、採用活動においても重要なのかもしれません。
アイデアを集め、必要なものだけを取捨選択し、優先順位をつける。
そうすることで、目指すべきビジョンは明確になり、採用の成功率は高まっていくのではないでしょうか。
- 人材採用・育成 更新日:2017/06/13
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