エンジニアと1,200回以上の面談を重ねたエージェントが語る。優秀なエンジニアを見極める質問方法
多くのIT企業が直面している大きな課題。それは“エンジニア不足”です。
技術力の有無が企業の競争力に直結する現代において、優秀なエンジニアを確保できるかは死活問題。ですが、「面談で優秀な人かそうでない人かを見抜くのは、正直難しい」とため息をついている人事担当者はたくさんいるはず。
エンジニアの持つ“技術力”は、可視化しづらいスキルのひとつ。そのため、良さそうだから採用してはみたものの、「一緒に働いてみたら全然ダメじゃん・・・」というケースは後を絶ちません。
では、どうやったら面談でそれを見極めることができるのでしょうか?その方法を学ぶには、一にも二にも、スペシャリストの知見を借りるのが一番。そしてその方こそ、今回ご登場いただくギークス株式会社の渋谷さんです。
フリーランスエンジニア&デザイナーを企業の案件・プロジェクトとマッチングする事業を主力とする同社で営業担当として働く彼は、これまでのキャリアの中でなんとエンジニアと1,200回以上もの面談を実施。その圧倒的な経験量から、「エンジニアの採用を成功させる方法論」を導き出してきたのです。
Q多くの人事担当者は、「エンジニアのスキルを面談で見極めることは難しい」と感じています。この原因はどういった部分にあるのでしょうか?
渋谷:人事担当者は、エンジニアとの会話や経歴書、メール、作成されたソースコードのチェックなど、様々な形で意思疎通を図り、そのスキルを推測していきます。
でも、これらはその人の能力を完璧に反映させるものではありません。ここに見極めの難しさがあります。つまり、現在一般的に面接で取り入れられている方法では、計りきれないことがあるという前提を理解しておく必要があるんです。
Q渋谷さんが今まで経験してきた中で、それを象徴するようなエピソードってありますか?
渋谷:あるエンジニアで、あまりお話が得意ではない方がいらっしゃり、何ができるのか、何が得意なのかが面談でなかなか伝わらないということがありました。その場合「コミュニケーションに難あり」と判断されてしまう可能性もありますよね。でも、その方が実際に現場に入ると、すごく技術力があって現場評価が高いことがわかったんです。
そういうエンジニアはまさに「自分のスキルをアピールするのは苦手だけど優秀な方」です。そういったケースがあるからこそ、難しさがありますね。
Q口下手だけど、技術は申し分ない。まさに“職人肌のエンジニア”といった感じですね。そういうタイプのエンジニアで優秀な人を採用するには、どういったことをチェックすると良いのでしょうか?
渋谷:「クライアントのニーズを理解できるか」を確認するのは必須だと思います。コミュニケーションを取るのが苦手な方でも、これができる方は優秀なエンジニアが多いです。
例えば、あるクライアントが「なんとしても○月末にサービスをローンチしたい。それに間に合わせることが最優先だ」と考えているとします。その際に、エンジニアが「予定には無かったけれど、この機能はどうしても実装したい。こだわりたい」と主張してしまうと、問題になってしまいますよね?でも、意外とそれをわかってくれないケースも多くあります。
Qクライアントの目的を理解していないという感じでしょうか。
渋谷:そうですね。クライアントは「決算の時期だから、なんとしても納品を間に合わせたい」「対外的に説明をしてしまっているから、そのスケジュールでローンチせざるを得ない」など、様々な事情があるはずです。そういった部分を、客観的な視点で判断できるかは重要だと思います。
エンジニアの本当の目的とは良いシステムを作ることではなく、会社を成長させていくこと、社会に貢献することであるはずです。「経営に間接的に携わっている」という当事者意識は必要でしょうね。
Qでは、それができるエンジニアかどうか、どうやったら可視化できますか?
渋谷:単刀直入に、エンジニアに「なんのために働いていますか?」「技術はあなたにとって何ですか?」と聞いてしまうのをオススメします。これに対する返答の内容で、なんとなくそのエンジニアの仕事へのスタンスや考え方が見えてきますよ。
それぞれの人には、今まで生きてきた中で形成された価値観がありますから、それを第三者が変えるのは難しい。だからこそ、その人の持っている価値観が企業にマッチしているかを事前に確認しておくべきだと思いますね。
Qでは、コミュニケーションスキルの高いエンジニアを採用するにはどうしたら良いかについても聞かせてください。そもそも、渋谷さんが思う“コミュニケーションスキル”ってどのようなものですか?
渋谷:相手によって伝え方を変えられる。相互理解ができる。物事の本質を理解した上で、すり合わせができるというのは重要ですね。相手のニーズをちゃんとくみ取れると言うか。
仮に、ある制限が課せられた環境に置かれたとき、自分のやりたいことやこだわりに固執しすぎないことが大切でしょう。もし、自分の希望とは違っても、それぞれの企業やチームが採っているプランは、必ず何かの理由があってそうしているわけですから。周囲の環境がどういうルール、条件で成り立っているのかが分析できることは、エンジニアのコミュニケーションスキルの1つと言えます。
自分の要望を全て叶えられればもちろんベストですが、現実的にはそれができるわけではありません。だからこそ、置かれた環境で最大限のパフォーマンスを出せる人かどうか。そして、それがどうしても許容できない場合は、周囲の人が納得いくような形で説得できる人かどうかが大事でしょうね。
Qそれができる方かを見極めるには、どのような質問をすると良いのでしょうか?
渋谷:これは一例ですが、人事担当者が「○○という技術って、どんなものですか?」「最近話題になっている△△って何ですか?」と、わざと知らないフリをして聞いてしまうこともひとつの手段です。それによって、自分と考え方の違う人や、ITリテラシーのない人に対して、どのような説明をするかチェックできますから。
もちろん、やりすぎると「こいつ何もわかってないな」と思われてしまうので、バランスは考えないといけませんけどね(笑)。
Qお話を伺っていると、エンジニアの採用においても「どういった人を採用したいのか」というペルソナ設定が必要な気がしてきました。
渋谷:そうですね。企業によっては、従順に対応してくれる人が必要な場合もあれば、自発的に色々なことをやってくれる人が必要な場合もあります。どちらが良い悪いではなく、そこはマッチング次第でしょう。
企業が求めるエンジニア像を明確に考え、面談したエンジニアがそれに当てはまるかを考えていく。もちろん、1パターンだけでなく、現場の要望に応じて複数パターンのペルソナを設定するケースもあります。
現在エンジニアはどの企業でも引く手あまたなので、ペルソナをひとつに限定しすぎると、採用はなかなか難しいです。だからこそ、その人を“どう生かせるか”という視点を持つことも重要。企業において、人は“パズル”のようなものだと思うんです。全員がかみ合う必要はないですし、必ずしも社風にマッチしていなくて良い。そうした人を採用することは人事担当者として勇気がいりますが、いくつもの個性が会社に存在することが必要ですね。
「どうしたら優秀な人に来てもらえるだろうか」という人事担当者の悩み。それを解決するにはまず、「そもそも自社はどんな人を求めているのか」という問いに答えを出す必要があります。
自社が抱えている問題とは何か。そして、それを埋めてくれるのはどのような人物なのか。あなたは可視化できているでしょうか?そのビジョンが見えていない状態では、採用活動はなかなか成果が上がりません。
欠けているパズルのピース。その一つひとつの形を理解し、それにマッチしたエンジニアを採用する。そうすれば、チームは少しずつ強固なものになっていきます。
そうして完成した絵が、企業の未来を文字通りに“塗り替えて”いくのではないでしょうか。
- 人材採用・育成 2017/03/04
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