働き方コンサルに聞く!働き方改革に失敗する企業と成功する企業の差とは
働き方改革が“目的”の企業の場合、夜8時にオフィスを消灯したり、在宅勤務制度を取り入れたり、最新のAIやクラウドを導入したりして、形ばかりの改革をしがちです。このような企業は、働き方改革を“目的”にしてしまっている。実際、フタを開けてみるとAIは使われていなかったり、クラウドの利用率は5%未満だったり、在宅勤務制度も同じように5%未満。何の成果もあげられていない状態になっているのです。
夜8時にオフィスを消灯する取り組みも、早く帰らせる目的だけのもの。仕事が終わってないのに帰らされる社員は、制度に腹落ちしていません。そうなると何が起きるかというと、消灯後に近くのカフェへパソコンを持ち込んで仕事する人がたくさん出てきます。こういう状況が続いてしまうと社員のモチベーションは低下し、生産性も下がってしまうのです。これが働き方改革に失敗する企業の特徴です。
働き方改革に成功している企業では、「会社が成長して、儲け続けて、社員が働きがいを持てて、幸せになれる」という目的のもとに“手段”として働き方を変える取り組みをしています。
例えば、明日5億円の商談があれば、ある程度残業をして資料作成などをしてしっかり備えるべきです。その代わり商談が終わったら代休を取るむとか、有給休暇の取得を推奨するとかして、目的に合わせて労働時間をコントロールするというのが成果も出やすく、社員のモチベーションも高まりやすい。働き方改革を“目的”ではなく“手段”として行なっている企業は、社員が重要な経営資源であることを伝え、十分な休息を取るように推奨した上で、社員に自由と責任を渡す。継続的に長時間労働が続けば、その根本原因を探り社員と一緒に解決していく。そうすることで結果的に業務効率が高まり、長時間労働が改善されるのです。これが働き方改革に成功する企業の特徴です。
私がコンサルティングしている各企業の方々にまずアドバイスするのは、どうやって働き方改革をするのかという“HOW”のところをすぐに考えるのではなく、あなたの会社がなぜ働き方改革をしなければならないのか、なぜ長時間労働が発生するのかという”WHY”を最初に突き詰めましょうとお話します。そうすると課題に対する根本原因にたどり着き、本質的な改革ができる。なぜやるかを社員が腹落ちすれば、行動も意識も変わります。
失敗している多くの企業では、5年後の会社のあるべき姿とか、社員の理想の働き方とか、どういう人物像が人材として必要とか、そういうことを考えずに働き方改革を始めます。要は“根本原因”が見つかってもないのに、表面的な解決をしてしまい、途中経過を振り返ることもない。だから、社員も腹落ちせず、いつまでたっても達成感がないのです。
このような社員が腹落ちせず働き方改革を続けた場合、大体9ヶ月で社員が行動を止める傾向にあります。人は自分にメリットを感じられないことは続けられません。ですから、社員にメリットを感じさせる働き方改革を行うことで、成功に近づくことができます。
働き方改革が成功する取り組みの一つとして中小企業の方々にもオススメしたいのが、「内省タイム」です。内省タイムとはどういうことか説明すると、全社員が週1回15分間、1週間の仕事を振り返る時間を作るというもの。金曜の午後3時に設定する企業が多いのですが、この15分間の振り返りによって、必要なかった会議や資料、その作成にかけた時間などがわかる。この振り返りを行うだけで、導入したすべての企業で15%の業務時間カットを実現しています。
調査に参加してくれたのは、クライアント26社の合計16万人の社員。なかには最大22%も業務時間をカットできたクライアントもいました。資料作成や会議などは、終わってから振り返らないと、それが成功したか失敗したかわかりません。きちんと振り返ることで無駄な仕事が見え、質の高い仕事ができるようになるのです。毎週の15分間の振り返りは、来週からできる効果的な取り組みです。
共通している一番多い無駄は「社内会議」です。大手企業より中小企業のほうが社内会議は多く、その中でも最も必要ないのが「会議のための会議のための会議」。経営会議のための事前打ち合わせの為の会議をしようとか、課長に見せるための資料を確認するための会議をしようとか、そういったものですね。これはすぐにでも削ることができます。
あとは、毎週月曜の朝に集められて、今日は何を話そうかというところからスタートする「目的の決まっていない会議」。日本では4割もあると言われています。目的が決まっていないのに集められるのは非常に効率が悪いので、ある企業ではアジェンダ(目的や参加者など)が決まっていない会議は開催禁止にしています。
またある企業では、24時間前に会議の目的、意思決定内容、参加者を呼んだ理由を周知していない会議は出席禁止にしました。そうしたら本当にみんな出席しなくて主催者は激怒していましたが、出席しなくても売り上げへの影響はゼロ。無駄な会議が減った分、参加予定だった社員は自分の仕事に専念することができ、業務効率は高まりました。労働時間のダイエットに、社内会議の見直しはとても効果的です。
その結果、見えてきた法則は意思決定者はシンプルな資料が大好きということ。1スライド105文字以内、フォントサイズは18ポイント以上、色は3色以内の資料を好むことがわかったのです。この法則を見つけてから、伝えたい資料ではなく、伝わってほしい大切な部分だけをまとめた資料を作れば良いことがわかり、資料の作成時間はすごく減りました。“伝える資料”だと文字が多くなってしまうので、“伝わる資料”に転換することが業務改善に効果的なポイントです。
また、「1スライド105文字以内、フォントサイズは18ポイント以上、色は3色以内」という法則がどれほど効果的か、コンサルティングファーム8社の合計9000人に実験しました。コンサルタントの資料は平均して1スライド600文字くらい入っています。それを、スライドの中の大切な105文字だけに絞り、提案内容は一緒で資料の作り方だけを変えていきましょうと、3ヶ月だけトライしてもらいました。すると、成約率は22%上がり、作成時間は20%減少したのです。最初の頃は大抵抗していたコンサルタントの方々は今、法則に則った資料作成で高いパフォーマンスを発揮し続けています。
もう一つあげるなら「メール」です。ベンチャーはチャットでのやり取りのほうが多いですが、そうではない中小企業はまだまだメール文化。メールの中でも世界一無駄なのは「メール見ていますか?」というメールです。そういう無駄なメールが各企業で数%流通していました。原因は、いつ返信が来るかわからないために待ち時間が発生し、業務が滞ってしまうから。その点、チャットはレスポンスが早く、相手がオンラインかオフラインかわかるので待ち時間が少ない。お客様にはメールで良いと思いますが、社内はメールからチャットに移行したほうが効率的です。
もし、社内的にメールを辞められないのであれば、CCのルールを決めることが大切。CCは少しでも送る必要があると思うと、みんな入れてしまう傾向にあります。そこを改善するために、CCを入れるかどうかの判断基準を会社で決められていれば、メールの流通量を減らすことができるのです。「社内会議」「資料作成」「メール」と、特に疑問を持たずにいた業務の中に、改革ポイントは隠れているのです。どの取り組みもまずは2ヶ月やってみてください。もし成果が出なければ、元に戻す。業績が落ちてしまったら意味がありません。働き方改革に大切なのは、会社の業績が上がって、社員が幸せになれることですから。
様々な制度を導入しても、取り組み方を間違えれば働き方改革は失敗に終わってしまいます。働き方改革を行う理由をきちんと考え、そのためにどんな制度を導入するのかを検討していくことが大切。より成功率を高めるためには、人事部だけで行うのではなく、社長も巻き込むことが成功への近道です。とはいえ、多忙な社長に直接お願いするのは難しいもの。そんな時はまず、社長との距離が近い社長室や経営企画室を巻き込むのがオススメです。実際に、人事部だけで行った働き方改革の成功率は低く、社長室や経営企画室を巻き込んで行った働き方改革の成功率は4倍も違ったとの結果も出ています。働き方改革は人事施策ではなく経営改革ですので、部署を横断して取り組んでみてはいかがでしょうか。
- 労務・制度 更新日:2019/07/30
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-