尖った企業理念を持つ会社|働きやすさで注目されるサイボウズへ「理念に共感する人」が集まる理由――サイボウズ株式会社
「チームワークあふれる社会を創る」という理念を掲げるサイボウズは、これを実現するために「世界で一番使われるグループウェアメーカーになる」こと、そして自らが「チームワークあふれる会社を創る」という明確な目標を置いています。
100人100通りと言われる柔軟な働き方を実現しているのも、この理念と目標があってこそ。社外へ向けた広報・PRも、すべてが理念の延長線上にあるといいます。
そんな同社が採用活動で重視していることも、やはり理念。事業支援本部・人事部採用担当の武部美紀さんは「スキルや経験がいかに魅力的でも、理念への共感がなければ採用できない」と言いきります。サイボウズにとって、理念とはなんなのか。
そして中途採用へどのような影響をもたらしているのか。お話をうかがいました。
Q「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念は、創業当初から掲げられていたのでしょうか?
いえ。現在の理念が形となったのは2007年頃です。当時は企業買収を繰り返して売り上げ拡大を追いかけていましたが、結果として、長続きしない事業が乱立するなどの混乱を招いていました。
社員は遅くまで残業し、有給も取りにくいという、いわゆる「ブラック企業」状態。離職率は28パーセントにまで高まっていました。こうした状況を変えるため、代表取締役社長の青野慶久を中心に「一点突破でグループウェアに集中しよう」と決断し、理念を見直しました。
Q理念を見直した背景には、事業再編だけでなく働き方への課題もあったと。
そうですね。メンバーが次々と辞めていく負の連鎖を食い止めるために、仕事内容や役職、給料体系などを見直したのですが、それでも離職の波はとどまらなかったんです。いろいろなことを試した末に行き着いたのが理念の見直しだったと聞いています。
「この会社で、このメンバーで働きたいと思える理由はなんだろう?」ということを考えて、目指すべき方向性を一つにする必要がありました。チームワークあふれる社会を創る。そのために世界一使われるグループウェアメーカーになる。だから、まずは自分たちがチームワークあふれる会社を創る。そんなメッセージを社内に発信していきました。
Qサイボウズの中途採用では、理念をどのように位置づけていますか?
いちばん大切にしている「最上位概念」ですね。もちろん中途採用ではスキルや経験を問いますが、それらがいくら魅力的な人でも、理念への共感がなければ採用に至りません。
面接では「なぜサイボウズなのか」「サイボウズで何をやりたいのか」といったことを、理念を軸にして聞きます。トップの青野はもちろん、役員や本部長、部長、人事のメンバー、現場のリーダークラスまで、この軸がぶれないように目線を合わせています。
実は私自身の入社動機もそうだったんですが、自社メディアの『サイボウズ式』や青野の著書を見て共感を覚え、応募してくださる方も増えていますね。理念に共感していただくためには、まずサイボウズを理解していただくことが重要です。この傾向はとても好ましいことだと思っています。
Q確かにサイボウズは、理念や自社について積極的に発信されている印象があります。
人事としては、「コーポレートブランディング部」の存在がとても大きいです。『サイボウズ式』の運営などを司っている部署ですが、社外への発信には人事のやりたいことや思いも汲んでもらっています。
ちなみに、発信している内容はすべて「チームワークあふれる社会を創る」ということにつながっているんですよ。話題になったkintoneの広告メッセージもそうですね。開発チームや営業チームも同様で、日頃お客さまと話していることも、すべて理念につながるように強く意識しています。
製品も、ブランディングも、そして採用メッセージも、やっていることすべてに一貫性を持たせる。これが理念の機能ではないでしょうか。
Q理念に共感して応募する人が増えることによって、採用にはどのようなプラスの効果が生まれていますか?
積極的なメッセージングによって知名度が高まり、たくさんの方にご応募いただけるようになりました。ご自身でコーポレートサイトの採用情報を探し、応募してくださる方も増えていますね。
人材紹介会社など外部ルートからの応募者と比べると、コーポレートサイトからの応募者のほうが合格率が高いという事実もあります。後者にはサイボウズに強い興味を持ち、理念に共感してくださっている方が多いからでしょう。
また、社員の紹介による「リファラル採用」も増えていて、エンジニアの採用では特に効果的だと感じています。ミートアップなどの技術系イベントを通じてサイボウズに興味を持ってもらい、入社につながるケースも多いです。
Qサイボウズは「最長6年間の育児・介護休暇制度」や、在宅勤務や短時間勤務を選択できる「ウルトラワーク」など、多様な働き方を推進していることでも知られています。こうした環境や制度を目的に応募してくる人も多いのではないでしょうか?
「一人ひとりに合った働き方ができる会社」として認知されていることは、もちろんとても良いことだと考えています。実際にその認識で応募してくださる方も多いのですが、それ自体が目的だと、入社後のミスマッチにつながります。単純に「副業がしたくて」「短時間勤務がしたくて」というだけの動機だと、採用は難しいというのが本音です。
働きやすい制度や環境は、あくまでも高いパフォーマンスを出してもらうためのものです。「理念に向かっていくためにこの働き方が必要な理由」を語れなければ、活躍できないかもしれません。
Q入社後に「どれだけ理念に共感し、近づくためのアクションができているか」を評価することも重要ですね。
はい。サイボウズは一般的な「職級」や「等級」、「給与レンジ」がなく、フラットな組織を作っています。かつては目標管理制度や絶対評価、相対評価といった仕組みを持っていたのですが、議論の結果、多様な働き方を認めていくためには不要だと判断して廃止しました。
ノルマはなく、成果主義でもありません。その代わりに「自分で仕事の貢献度を示し、価値を生み出し続ける」ことが強く求められます。
その貢献度を図るために「アクション5+1」と呼ぶ行動指針を設け、信頼を獲得するために必要な「覚悟」と「スキル」を明示しています(上図参照)。覚悟の根底には「理想への共感」を置いていて、メンバーは自分がどれだけ理念を意識し、アクションできているかを自己評価しています。
Q理念をさらに定着させ、発展させるために取り組んでいることはありますか?
月1回開催している全社ミーティングでは、青野が直接、戦略や直近の振り返りについて話します。この中で「私たちは何のために活動しているのか」という、理念に絡むメッセージを常に発信しています。
とは言え、人が増えていけばいくほど理念の解釈も自然と広がっていくもの。だからこそ、青野自身が積極的に外部インタビューに応えたり、著書で自らの考えを伝えたりすることは、根底にあるブレない思いを社内外へ伝えていくためにとても重要だと考えています。これは『サイボウズ式』などで発信している社員の思いについても同様です。
こうしたメッセージを読んで、直感的に「いいな」と思ってくださる方なら、サイボウズで一緒にやる意味があるはず。これからも理念に共感する人が集まり、発展し続ける組織でありたいと思っています。
- 経営・組織づくり 更新日:2018/06/19
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