5Gが食の未来を救う!農業・畜産業界における5Gの必要性
特にIoT分野では、5Gの登場を待たずに導入されている事例もあります。総務省の資料「5Gの利活用分野の考え方」では、農業分野における5Gの利活用方法が紹介されており、農業や畜産業分野でも5Gの導入が検討されていることが伺えます。
活用方法としては、例えば農作物の生育状態、気候、市場状況などの情報統合や、ドローンや無人農機などの遠隔制御などが挙げられます。このように5Gを活用することによる品質向上や単価の向上、生産効率向上による経済効果は、合計で4268.2億円にもなると予想されています。
特にドローンや無人農機の遠隔制御は在宅で複数個所の作業を可能にし、食の業界で問題となっている後継者不足や人手不足の克服が期待されています。
飲食業の分野では5Gによるオンライン店舗や、店舗ごとの特色策定支援などの役割が期待されています。
現在、新型コロナウイルスの影響で飲食業は営業の自粛を求められていますが、5Gの通信環境を用いればVRでの店舗運営も十分可能です。従来の通信環境だとオンライン上の会話は途切れがちでしたが、5Gが実用化されることにより、オンライン上での会話もスムーズに実現できるでしょう。さらにUberEATSなどの宅配サービスと連携すれば、オンライン上で注文した料理が自宅に届き、さながら実際の店舗にいるような感覚も味わえるでしょう。
また、小規模店舗で5Gを導入する際には、マーケティングへの活用にも期待が高まります。これまでは、顧客の動向に関するデータをマーケティングに活かすには、費用や手間などのハードルが高いのが実情でした。しかし、5Gが普及すれば顧客データの収集や蓄積・共有が容易になり、コストなどのハードルも下がることが期待されています。
例えば最近よく話題に挙がるのが、ドローンによる空撮データの解析。ドローンによる作物の空撮で、生育状況や生育密度の分布などを効率的に把握できるというものです。確かに空撮が正確にできれば、作物の様子も一目瞭然で、間引きや追肥の判断もしやすくなるでしょう。
しかしながら、そのような最新技術は発展途上のものが多数。ドローンでの空撮をしたはいいものの、解析に時間を要し、その年の農業に活かせなかったという経験談もあるのが実情です。最新技術を用いたサービスを利用する場合は、担当者が現場に足を運んでいるか、本当にそのサービスが必要かなど、様々な観点から利用の判断をすべきでしょう。
また、広大な田畑で5Gを活用しようと考えても、天候が悪化すると5Gの通信ができなくなる、などということも。また、広い店舗などで5Gを利用する場合、通信する機器間に遮へい物が存在すると、通信トラブルに見舞われる場合もあります。高速通信を必要としない場合は、LTEなどの方が使い勝手がよいともいえます。
ローカル5Gの登場などによって、小規模の業態でも5Gのテクノロジーを導入しやすくなってきてはいます。しかしながら、自社の課題解決に5Gが必要かどうかは今一度よく考える必要があるでしょう。
企業の中には、5Gと聞いて何となく導入を決めてしまい、自社の課題解決ではなく5Gの導入自体が目的になってしまうケースもあるかもしれません。流行に踊らされずに自社の課題を見極め、「本当に5Gでなければ解決できない課題なのか」を熟慮できる人材が求められるでしょう。
実際に農業や畜産業へのIT導入事例をみていくと、例えばデータ収集のために複数のセンサーを利用したIoTシステムを構築する場合でも、LPWAの環境などが準備できれば十分である場合が多いです。LPWAとは「Low Power Wide Area」の略で、「低消費電力で長距離の通信」ができる無線通信技術の総称です。最大伝送速度は100bps程度、伝送距離は最大50 km程度ですが、センサーからのデータ収集といった用途であれば十分であり、コストも低く抑えられます。
また、飲食業の店舗内でITを利用する場合でも、大抵の場合はWi-Fi環境があれば十分でしょう。
前述したように、「遮へいされやすい」というミリ波の特性上、現場の環境によってはうまく5Gの無線通信ができないというケースも想定されます。5Gの導入を検討する場合は、綿密な実地調査のコストを見込むことも必要です。
最初から5Gの導入を前提にせず、まずは既存のネットワーク環境でITを導入してみて、どうしても高性能なネットワークが必要であれば5Gへの移行を検討する、という手順がベターでしょう。
- 経営・組織づくり 更新日:2020/07/07
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