経営と人材をつなげるビジネスメディア

MENU CLOSE
1 ty_keiei_t01_t06_human-resource-business-partner_210428 column_management c_keywordc_ikusei

守りの人事から攻めの人事の時代へ!HRビジネスパートナー(HRBP)とは

/news/news_file/file/t-ty_keiei_t01_t06_human-resource-business-partner_210428_top.jpg 1

ビジネスをとりまく環境が速いスピードで変化し続けるようになった現代において、経営戦略のみならず、人事戦略もスピード感を持って変化し続けなければいけません。そこで必要とされるようになったのがHRBP(Human Resource Business Partner/ヒューマン リソースビジネス パートナー)です。

しかし、実際にどのようなことをするのか、どのようなポジションに立つのかなど、しっかりと理解できていない部分も多いのではないでしょうか。そこで、攻めの時代を生き抜くため、企業に必要なHRビジネスパートナー(HRBP)について解説していきます。

HRビジネスパートナー(HRBP)とは

HRビジネスパートナー(以下HRBP)は、1990年代にミシガン大学ビジネススクール教授であるデイビッド・ウルリッチ氏が提唱した4つの人事機能「HRBP」「変革エージェント」「管理エキスパート」「従業員チャンピオン」のひとつで、企業の経営幹部と同じ視点に立ち戦略的な人事目標を設定・遂行する人事のプロフェッショナルのことです。

経営戦略や事業戦略において、人事部門の価値提供が重要であることを綴ったウルリッチ氏の著書「MBAの人材戦略」で紹介されてから、多くの欧米企業でHRBPモデルをベースにした人事部門がつくられてきました。日本においても、新たな人事の在り方として注目されています。

HRBPとは経営に資するパートナーのこと

企業が成長し続けるためには経営戦略や事業戦略の変革は必要不可欠です。これらの時代背景から、企業が求める人事部門の役割は、オペレーションに特化した業務担当ではなく、よりストラテジーに注力したポジションへと変化する必要があります。

HRBPは、事業計画に深く関わり、人事戦略で、経営陣や事業責任者を支えるビジネスパートナーとしての役割を果たします。

従来の人事と比較する企業成長への貢献度

国内における従来の人事部門は、給与・福利厚生などの労務管理や採用・人材教育など業務別に分けたタスク型組織が主流であり、それぞれに割り当てられたタスクを遂行するために必要な人員で構成されていました。

一方、HRBPは人材を管理する従来のオペレーションを中心とした人事ではなく、経営戦略と人事マネジメントを連動させながら、経営視点に立った方策を創り出すことで価値を提供する存在です。

固定観念に縛られず、経営目標を達成するために、以下の役割で企業の成長に貢献します。

  • 経営目標達成のための人事戦略の立案
  • 経営と現場のパイプ役となり、経営側の戦略を現場へと反映させる。

HRBPと従来の人事との違い

HRBP
従来の人事
役割 経営目標達成に向けた人事戦略を立案し、事業計画の達成に貢献する 人事制度をつくり、採用や人材育成、労務管理を効率的に行う
経営・事業との関係 経営と現場のパイプ役となり、経営側への提案、現場への戦略の浸透を行う 経営陣・事業サイドから降りてくる計画を遂行する
求められるスタイル 戦略立案・提案を行い改革を行う「攻めの人事」 効率を高め、ミスを減らす「守りの人事」
必要なスキル 経営戦略・事業に関する知識。人事・労務管理に関する知識 人事・労務管理に関する知識

企業がHRBPを必要とする背景

日本の企業でHRBPが注目される背景は、ビジネスをとりまく環境が変化したことに起因します。

少子高齢化による労働人口の減少で、人材の獲得が年々激化していき、ますます人材の獲得が難しくなっている状況の中、企業は求職者から選ばれる立場へ変化しています。

また、グローバル化の進展により、多様な背景を持った人材の活用や、コロナ禍のような突発的な事態への対応、DXの進展による専門人材の不足、ChatGPTを始めとしたAIの急速な発展による人材戦略の見直しなど、予測不能な事態に企業は素早く対応しなければなりません。

経営陣からの指示を実行することを目的とした人事部門では、これらの急速な社会の変化に、対応できず遅れをとってしまう現実があります。そのため、経営視点と現場の視点で柔軟な人事戦略を立案できるHRBPが必要とされています。

企業がHRBPに期待すること

企業がHRBPに期待することは、人事戦略の側面から企業の成長に貢献することです。

そのため、HRBPには、経営・事業戦略の知識が必要です。経営陣のビジョンを理解し、現場の課題を抽出し、戦略を立案して経営陣に提案する能力が求められます。

人事部門のスペシャリストでも経営や現場の知識がなければ、十分な活躍ができないことも想定されます。HRBPは、人事経験者からの抜粋ではなく、事業サイドから優秀な人材を抜粋する企業もあります。

企業の中でHRBPが担う役割・存在価値

前出のミシガン大学ビジネススクール教授であるデイビッド・ウルリッチ氏は、人事部門が果たす役割を4つに分類しています。

1.HRBP(戦略パートナー) 人事戦略を提案する経営陣のパートナー
2.人事管理のエキスパート 労務管理や採用管理・人材育成を行う、従来の人事部門
3.従業員のチャンピオン 従業員の代表として現場の意見をとりまとめ、経営層に伝える役割
4.変革のエージェント 経営者の代理人として人事領域の変革を担う

HRBPは、上記「人事管理のエキスパート」「従業員のチャンピオン」「変革のエージェント」から情報を集め、「人事戦略を立案して経営陣に提案する役割」を果たします。

もちろん、これらの役割を担う人材が社内にいない場合もあり、実際にはHRBPが、その役割を兼務することもあります。

HRBPは、企業成長を促進させる攻めの採用を実現

ビジネスをとりまく環境が速いスピードで変化する中、企業は成長していかなければなりません。この変化に対応するには「守りの人事」では十分に対応できないでしょう。

例えば、年功序列の組織を重視して、若手の給与を抑えた組織運営を続けた場合、優秀な人材が獲得できず、また、若手人材がライバル企業に転職をしてしまうリスクがあります。

HRBPは、このような企業環境の変化を把握して、企業の人事制度や給与制度、人材育成、採用制度のイノベーションを起こす役割をはたします。

HRBPに必要な能力

攻めの人事を実現する上で、HRBPのポジションを担う人材の選出は重要です。これまでの人事に必要とされていた能力だけではなく、対人折衝力や経営視点に必要なビジネス感覚がなければ務まりません。では、HRBPにおいてどのような能力が必要なのか紹介します。

人事のプロフェッショナル

人事担当として必要な法律や労務、採用や人材育成に関する知識はもちろんのこと、都度発生する人事課題を解決する能力が必要です。

また、対話による人材マネジメントや育成といったメンタリングを通じて、個々の能力とモチベーションを引き出すスキルが求められます。

コミュニケーションスキル

HRBPは、経営と現場の橋渡しを担います。現場でのヒアリングや調査は必須スキルといえます。現場から信頼を得なければ正しい情報を集め、課題を洗い出すことはできません。積極的に現場の従業員と会話し、傾聴し、話かけやすい存在になることが重要です。

また、経営陣に対しても、信頼を得なければ、戦略の実行はかないません。経営層に対しても物怖じせず積極的にアプローチできる能力が求められます。

ビジネス理解と現場理解

変化する環境の中、スピード感を持って経営陣に戦略を提案するには、経営に対する知識・事業に対する知識が必要です。また、実際にビジネスの現場で何が起こっているのか、現場の情報やマーケットの動向をキャッチする洞察力や情報収集を常に行う能力も求められます。

現実的なHRBP担当者とは

ここまで、HRBP担当者に、求められるスキルを紹介しました。実際のところ人事のプロフェッショナルであり、経営の知見がある人材を社内で見つけられないことも多いでしょう。採用市場に適切な人材がいれば良いのですが、うまく採用ができないこともあります。

HRBPを担当する人材が、見つからない場合は、外部のコンサルタントを起用する方法や、社内の人材をHRBPへと育成する方法があります。

既に現場の事業責任者で活躍している人材は、コミュニケーション能力に優れ、PL(損益計算書)を管理し、ビジネスにも精通している人材も多いでしょう。この人材をHRBP担当者に起用し、本人の学習や周囲のサポートで、人事や経営の知識を補っていけば、その任務を果たしてくれるでしょう。

CHROとHRBPの違いは?

CHROとは、「Chief Human Resource Officer」の略称であり、日本語では人事部門の最高責任者を指します。つまり、人事部長、人事部門の取締役、執行役員などといった「役職名」をいいかえた言葉です。

一般的な人事部長との違いは、経営陣の一人として経営に参加する役割を担うことです。
CHROは、経営陣の立場で、人事にまつわる戦略の策定や実施、人材採用や育成、人事制度、組織つくりを統括します。

一方、HRBPは、「職務名」になります。例えば、営業職、人事職、事務職と同様に「HRBP職」という担当を表します。

HRBPを導入するためのポイント

HRBPで何を達成したいのか? 初期の目標を設定する

HRBPは、人事戦略における課題を解決に導く役割を果たしますが、人事課題は多岐にわたります。また、ノウハウも確立されていないため、多くの課題解決を目標にすることは困難です。

漠然と導入して「効果がわからない」という結果にならないためにも、

まず、多くの人事課題の中で、HRBP導入で解決したい課題を一つに絞り込み、その課題解決のための担当としてHRBPを導入しましょう。

組織体制を考える

組織体制の検討を行います。HRBP機能をどの部署に付与するのか、社長直下、経営企画室、人事部門、事業部ごとなど、いくつかのパターンが考えられます。自社の組織を考慮し、HRBPが最も動きやすい組織の傘下にHRBPの機能を設置しましょう。

HRBP導入方法を検討する

HRBPで解決すべき課題が決定次第、どのような方法でHRBPを導入するのか検討しましょう。導入方法は「社内で適した人材を探し抜擢する」「転職市場でスキルを持った人材を採用する」「外部のコンサルタントに依頼する」の3パターンが考えられます。

ただし、HRBPは日本で始まったばかりの取り組みのため、社内でノウハウを持った人材が存在しない場合や、転職市場でも人材マッチングができるか不透明です。

これらの手段がとれない場合は、外部のコンサルタントに依頼し、将来的にHRBP人材に育てたい社員を担当者に就けて、人材育成をしながら導入していく方法が考えられます。

経営層がHRBPを意識して活躍できる環境をつくる

HRBPは、現場の課題をすくい上げ、改善案を経営層に提案する機能を持ちます。ときには、経営層にとって耳が痛い話かもしれませんが、経営層は、HRBPと積極的にコミュニケーションをとり、HRBPの役割を理解し、活躍しやすい環境をつくることを意識しましょう。

HRBPの導入事例

ここでは、HRBPを導入している企業の事例を紹介します。

企業文化を伝承できる組織創り

大手IT企業である株式会社ディー・エヌ・エーは、2014年より、HRBPを導入しています。きっかけは、事業が多角化して、異業種からの転職人材も増えていくなかで、企業文化を把握していない役職者が増え、組織が複雑化したことです。

企業文化を理解している各事業部の部長格以上をHRBPに任命し、現場への企業文化の浸透や現場の人事課題解決の役割を担っています。

人材の自律的成長を目指す体制を構築

食品大手であるカゴメ株式会社は、「人材の自律的成長」を目的に2017年よりHRBP機能を導入しています。

HRBPの担当に、経営とのパイプと、従業員の成長を促せる人間性を備えた経験豊富な人材を起用。HRBPは、現場の人事課題を解決しながら、会社の成長に資する個人の自律的な成長を促す役割を担っています。

素早い組織編成のためにHRBPを活用

大手IT企業のLINE株式会社は、HRBPをクイックで柔軟な組織編成を実現するために活用しています。LINE株式会社では「顧客ありき」でのサービス展開を意識しているため、ビジネスの立ち上げと、それに伴う組織編成が早いサイクルで行われています。

年24回、組織更新の機会がある中で、HRBPは、常に現場の状況・人材を把握し、経営方針を遂行できる最適な体制つくりに貢献しています。

戦略人事を実現させる経営パートナーが企業に必要な時代

企業をとりまく環境が急速に変化する中、長期的に企業を成長させるためには、生き残りのための「戦略」と、経営課題の解決に向けた「視点」を増やすことが大切です。

HRBPは、人材活用の視点で、経営に新たな視点をもたらし、企業の成長に直結する攻めの人事戦略を実現します。

従業員ひとりひとりの個性や能力を引き出しながら経営目標の達成に向けて旗を振る戦略人事は、経営者のビジネスパートナーとして今後も活躍の場を広げていくでしょう。
急速な社会変化に対応できる企業となるため、HRBPの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

  • 経営・組織づくり 更新日:2023/10/03
  • いま注目のテーマ

RECOMMENDED

  • ログイン

    ログインすると、採用に便利な資料をご覧いただけます。

    ログイン
  • 新規会員登録

    会員登録がまだの方はこちら。

    新規会員登録

関連記事