不採用とは言わない――、ソノリテ流の採用面接とは
私たち株式会社ソノリテは、2009年12月に創業したシステム開発会社です。創業当初は若干名のシステムエンジニアを親請けに派遣する下請け零細会社からのスタートでしたが、丸8年で社員数は60名を超えました。
そんな私たちも、多くのIT企業がそうであるように、人材採用については悩み苦しんできました。システムエンジニアは深刻な人財不足業種ということもあり、私も「どうやったら誰も知らないソノリテという会社に、入社してくれるようになるのだろう?」と悩んでいました。そして辿り着いた考えは、「採用にもモダンマーケティングの考え方を取り入れよう」というものです。
モダンマーケティングとは言っても話は単純です。例えば「商品」であれば「商品をどうやって売るか?」というのが古い営業の考え方だとしたら、「どうやってお客様に選ばれる商品を作るか?」と考えるほうがより現代的だと言えますよね。「無理やり売る」のではなく「自然と手に取ってもらう」ことを考える。これがモダンなマーケティングの姿だと思います。ですので、この考え方を採用に応用しました。
「どうやってうちの会社に入社してもらうか?」と考えるよりも、「どうしたら就職希望者に選ばれる会社になれるか?」と考える方がよいだろうと思ったわけです。この気付きから私たちの会社の採用は、経営方針にまで影響を及ぼす大きな概念に変化しました。採用はすべて企業のトップである私が行い、あらゆる採用希望者の「想い」を聞き、「ならばソノリテはどのように変化すべきか?成長すべきか?」を考え、それを実施してきたのです。
その結果、私たちの会社は創業8年で「採用希望者から選ばれるソノリテ」に成長してきたと考えています。そして私たちが「採用希望者から選ばれるソノリテ」を考えるにあたり、キーワードとなったのは、多くの採用希望者がみんな「自分らしく働きたい」と考えているということです。
次に私たちは、エントリー(応募)の敷居を極限まで下げることをしました。私たちはホームページで、「もしうちの会社に興味があったら、会社に遊びに来てください」というメッセージを打ち出したのです。リクルートスーツも着て来なくていいし、履歴書も書かなくていい。ただ会社に遊びに来て一緒にお菓子でも食べながら、働くということについて一緒にお話をしましょう、ということを始めました。
この「敷居を下げる」ことはとても大事で、「面接官」と「採用希望者」が「採用面接」を行うような形式では、希望者の本音が聞けないのです。これはマーケティングで考えれば「顧客の声を聞いていない」に等しい、愚かな行為です。私たちはモダンマーケティングの手法に則り、いかに「採用希望者の声を聞くか」を実現するために、この「エントリーの敷居を下げる」ことを徹底的に行いました。一緒に呑みに行ったり、サバイバルゲームなどをして一緒に遊んだり、そんなことも行いました。
現在、おかげさまで多くの採用希望者がエントリーしてくれる会社に成長しましたが、その中で私たちは「採用活動に『不採用』は無い」という概念に達しました。特徴的なことなので少し解説をしておきます。これはとてもシンプルな発想で、やはり会社を「自分らしく働ける場」にするという信念の下、エントリーしてくれた採用希望者はすべて必ず良いところがあるから、何かその人に合う仕事があるはずだ、という性善説に立つという前提の話になります。
ただ、現実というものがありますから、現在のソノリテではあなたに合った仕事を作り出すことは困難である、ということはやはりあります。でも、そこで「不採用」にはしない。
「現在はあなたと行う仕事は無さそうだけれども、将来はあるかもしれない」。だから「不採用ではない。将来もしあなたにやってほしい仕事ができたら、こちらから声をかけさせてくれ」ということになります。そのように考え、「ソノリテは不採用とは言いません」と、採用希望者の方に説明するようにしています。もちろん採用の人には採用通知を出します。
このような採用方針と「自分らしく働ける会社」であり続けることを行うことのデメリットは、離職率にあると思います。私たちの会社の離職率は低くありません。むしろ私は離職率を低く抑えることを経営KPIから外しました。
なぜならば会社が「多様性」に向かうことで、組織の「同質性」が極めて低くなるので、社員には多様性に耐えうる自立心が求められるのです。また、会社の成長という変化が急速に起るのは、社員にも急速な成長を迫ることでもあると思っています。
私たちの会社には「これが正解だ」というルールがなく、常に変化しており、その中では「こんなはずではなかった」と感じる社員の存在は毎年一定数現れてしまいます。現在はそれを「無理に留めることはお互いによくない」と考えて成長痛と捉えるに至りました。
私たちのやり方は採用が経営方針にまで影響する方法で、成長痛を積極的に起こすものなので、企業が持つ既存のコンピテンシーを教育して社員を育成する方法の企業採用には、育成コストが見合わないかも知れません。積極的な新陳代謝を行えるベンチャーであるからこそできる方法なのかもしれません。
- 人材採用・育成 更新日:2018/10/18
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