新時代のロボット技術「RPA」はホワイトカラーの業務をどう変えるか
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、読んで字のごとく、ロボットによる仕事、特にいわゆるホワイトカラー業務の自動化や効率化のことです。
ただし、ここで言うロボットは、これまでブルーカラーの工場などでの業務の代替をしてきたような機械的な産業用ロボットというよりも、ホワイトカラーの知的業務を代替するソフトウェア(ソフトウェアロボット)のことを主に意味します。デジタルレイバーとかデジタルワークフォース(仮想知的労働者)などと呼ばれることもあります。
日本ではまだ耳慣れない言葉かもしれませんが、欧米では既に市場が確立しつつあり、早晩、日本においても常識になっていくと思われます。
昨今ではソフトウェアロボットやデジタルレイバーなどは、全部ひっくるめてAI(人工知能)と呼ぶ場合も多いですが、RPAはあらかじめ決められた何らかのルールやアルゴリズムに基づいて知的作業をこなしていくものとされます。
一方で、狭義のAIは自身で大量のデータを分析して、何らかの発見を行ってアウトプットすることで、行うこと自体を自己改善していくプロセスを持っているものとされます。実際に働く人に大きな影響を与えるほどに浸透してきているのは、本稿のテーマであるRPAです。
RPA導入のメリットは明確です。まずは、人が介在しないことにより、大幅な人件費の削減ができることです。一般的にはRPAのコストは、人の10%〜30%程度と言われており、これまでコストダウンのためにアウトソーシングしてきた新興国の人件費よりも安い場合が多いのです。
しかも、ソフトウェアロボットは24時間365日休みませんので、スピードアップにもなりますし、最初の設定さえきちんとしていれば、ミスもほとんど起こりません(設定がおかしければ、すべてミスになりますが)。しかも、後述のように既にさまざまなRPAソフトウェアが存在しており、導入も容易になってきています。一方でデメリットはあまりないとされています。
RPAソフトウェアは、これまでのプログラミングベースでの自動化ではなく、容易なユーザーインターフェイスでの利用が可能になっています。たとえば利用の際に、プログラミングのスキルは必要なく、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)でアイコンをドラッグ&ドロップするなどの簡単な操作によって直感的に作業ができることが特徴です。
つまりRPAを導入する人事部などの部署が、システム部門や外部ベンダーを頼ることなく、ある程度セルフサービスで行うことが可能になるということです。
システム部門担当者も社内のITリテラシーの低い部署のサポートをするという低付加価値の作業から解放され、リソースをもっと戦略的なITシステム開発にさけるというメリットにもつながります。当然ながらプログラミングを必要としないため、準備にかかる工数もほとんどありません。
一方で、広がっていくRPAについて、誰しもが楽観的に思っているわけではありません。昨今のAIに関する報道や主張の背景に見え隠れしているように、「AI(ここではRPA)に仕事を乗っ取られる」という恐怖の感情を持つ人も多いことでしょう。
というのも、RPAには知的単純作業を、人間はその代わりに創造的な仕事をと言われても、自分の創造性に自信を持てる人がどれだけいるかということです。「単純作業をやらされているから創造性を発揮できない」のか、「単純作業しかできない」のかわからないのです。つまり、RPAやAIの隆盛は、単純に失業を生み出すだけではないかと恐れる人は一定数いることでしょう。
しかし、これは後戻りできない流れですから、これからの人事担当者はRPAやAIにはできない創造性を発揮できるように能力を磨くしかありません。
このようなRPAの隆盛の中、人事担当者は何をなすべきでしょうか。ひとつは、RPAによる知的労働作業の代替を見越して、「残る仕事」≒創造性や判断力などが必要な業務ができるような人材を、頑張って採用したり育成したりすることです。ニーズが減っていくことがわかっている仕事に適した人材を、短期的に必要だからと言って、多量に採用していては待ち構えているのは大変なリストラです。
RPAの進展をきちんと予測して、人員計画や人材ポートフォリオを作っていくことができれば、そうした悲劇を起こさなくてすみます。また、受動的に世の中のRPAの進展を待っているのでなく、先んじて自社の業務内容をきちんと把握し、RPAにできるものとしにくいものに振り分けしていくことで、その人員計画の精度が上がっていき、新卒や中途他、様々な採用チャネルからどれぐらい人材を採ればよいのか正確にわかり、適切なリソース(マンパワーやお金)で人材獲得ができるようになることでしょう。
あのドラッカーも「変化をマネジメントする最良の方法は、自ら変化を作り出すことである」と述べています。RPAはおそらく不可逆な進歩でしょうから、どうせ変わるなら自ら先頭に立って導入を進めていくべきでしょう。
- 人材採用・育成 更新日:2018/07/19
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