「適応力」〜小さな変化を察知して素早く対応する能力〜|ビジネススキルの見極め方
「適応力」という言葉を使う際、適応する対象は仕事や組織、社会、人などさまざまです。
現代のような環境の変化が激しい時代においては、適応力とは「ある環境に対して適切に対応する力」に加えて「環境の『変化』に対応する力」とも言うことができます。刻一刻と情勢が移り変わるため、企業はもちろん、そこで働く人材にも変化に対応するスキルが求められるのは当然のことです。
適応力がある人材は状況に応じて柔軟に行動できるので、どんな環境でも高いパフォーマンスを発揮し、その時々における最善の判断をしていきます。また、周囲の様子を窺いながら物事を進めることにも長けているため、プロジェクトやチームを管理するリーダーポジションにも適任でしょう。
進化論で有名なダーウィンも「最後に生き残るのは、最も強い者でも最も賢い者でもなく、最も変化に対応できた者だ」と言っているように、環境に適応する力はあらゆる場面で役立つもの。転職後の定着率にも関わる大切な要素です。
今回はその「適応力」がいったいどんなところに表れるのか、そしてどういった人材がその力を持っているのか考えていきたいと思います。

適応すること、つまり環境の変化に柔軟に対応できる人は、ほかの人とどのような部分が異なっているのでしょうか。
変化に対応するためには、当然ですが、まず変化の兆しに気づかねばなりません。周りの人でも職場でも仕事でも、短い期間で明らかに変化すればわかりやすいのですが、たいていの場合、変化は徐々にやってきて、気がつけば大きく変化しているものです。
いわゆる「茹でガエル」の理論のように、適応できない人は徐々に変化する周りの状況に気づけず茹で上がってしまう、つまり手を打つには遅すぎる状況に陥ってしまうわけです。
こうならないためには、先入観で物事を見ないことが重要になります。今日は昨日と同じ状況が続いている、という前提を持たずに、常に初見であるかのように物事を見ることができる人は、小さな差異にも気づくことができ、それに対応していくことができるのです。
これは社会の流れや業務を取り巻く状況に敏感であるとも言えます。具体的に仕事の場面に当てはめて考えると、常に移りゆくトレンドをしっかり見据えて商品を考案・販売したり、過去の成功パターンに縛られずに施策を選んだりできるでしょう。
また個人の単位でも、案件の進捗や周りのメンバーの状況を逐一チェックして、トラブルを未然に回避したり、問題が起きても冷静に解決へ導いたりと、その段階ですべき対応を正しく判断していくことができるはずです。

上記では、適応力がある人は「小さな変化に気づきやすい」ということを述べました。しかし、大事なのはその先。新たな環境の変化に対して、最も適切な対応ができるかどうかです。この対応の中では、ときに自分の考えや行動を変えることも求められます。
そのため、採用担当者は、適応力があるかどうかを見極めるひとつの指標として、他者からのフィードバックに対する姿勢を聞くとよいでしょう。
エリン・メイヤーの『異文化理解力』によると、日本人は世界の中でも、他者からの直接的なネガティブフィードバックが嫌いな民族のようです。ストレートな意見が避けられがちな文化がある中で、他者からネガティブなことを含めたフィードバックをしてもらうには、それ相応の受容性の高さが必要でしょう。
素直な意見を、自分への批判や攻撃のように感じて、すぐ反論するような人には、他者はフィードバックをしたいとは思わないはず。耳の痛いことでも受け止め、自分を変えることができる人にしか、他者は忠告などしないものです。
そのため面接などの場面では、これまでに他者からどんなフィードバックを受けた経験があるか、それを踏まえてどのように行動してきたかなどを深堀りすることで、その人の適応力を窺い知ることができるでしょう。
実際に新たな環境に入る前に適応力を見極めるのは少々困難なことですが、相手のそういった側面に着目することで、環境が変わった際にどのように対応していく人材なのかを知る手がかりになります。
ここまで述べてきたとおり、仕事における適応力は、変化に合わせて対応していく能力です。しかしその一方で、管理職やリーダーなどのポジションに就く人材の場合、環境に自らを合わせるだけでなく、環境そのものを自らに合わせて変化させていくことも、ひとつ上の適応力として求められます。
このように、「適応力」はさまざまな要素を含んだ能力と言えます。立場や業務内容によって特に重視すべき部分は異なるため、採用面接の場においては、求職者がどのような適応力を備えているのか聞き分けることが大切です。
- 人材採用・育成 更新日:2018/07/10
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