テレワークにおける勤怠管理と従業員の信頼関係
従業員が長時間テレワークをして残業代を稼ぐ発想にならないためには、就業規則でテレワークの勤務時間についてきちんと規定を作ることが必要です。
「テレワークの場合は残業代がつかない」と言われることがあります。しかし、会社側が労働時間を把握できるという前提で、法定労働時間を超えて働く場合は、従業員は残業代を請求することができます。テレワークの場合、従業員が会社からの指示にすぐ応答できる状況にあることや、時間外にも業務の指示を受けることがあるので、労働時間が長くなるケースも少なくありません。
したがって、必要な残業時間はテレワークであっても認める必要があります。 テレワークに伴って導入・運用できる可能性がある制度としては、以下の制度があります。
事業場外みなし労働時間制が適用されるのは「労働時間の算定が客観的に困難な業務」ですが、現在では様々な勤怠管理のツールがあるので、要件に当てはまらない場合も考えられます。
さらに、スマホやパソコンでテレワークの社員とすぐに連絡が取れる状態になっている場合も、要件に当てはまらなくなってしまうでしょう。
現実の運用としては、裁量労働制(適用業種は限定的)、またはフレックスタイム制度を導入するなどして労働時間に関するルールを構築していくことになるでしょう。フレックスタイム制度の導入の際には、就業規則などへの規定や、労使協定が必要です。導入の際には、社会保険労務士に相談することをおすすめします。
急速にテレワークが拡大したこともあり、就業規則の見直しに動いている企業は多いです。実際、筆者の知っている何人かの社会保険労務士は、現在就業規則の見直しの相談で忙しいそうです。また、厚生労働省の助成金(テレワークコース)の受給相談を受けることもあるとのことでした。急なテレワークの導入で大変な状況ですが、このような状況下だからこそ、働き方を前向きに変化させていきたいですね。
これらのソフトには、給与計算機能や年末調整、マイナンバーの管理機能などと連動させることができるソフトもあります。給与計算や年末調整のシステムをまだ導入していない場合は、勤怠管理のツールと共に導入しても良いでしょう。便利なツールを使って、労働時間の検証を行いましょう。
働き方別必須ポイント
下記の働き方は、通常の労働時間制度と違いますので、以下の点に気をつけてください。
裁量労働制・・・業務を進める方法や手段、時間配分などを労働者自身で決めて働くスタイルです。専門業務型裁量労働制は研究者や士業など19の業務に限定されています。企画業務型裁量労働制は、業務が所属する事業場の運営に関するものであり、企画立案などの業務であって、企画・立案・調査・分析についての実施時期や方法を労働者が決められることが要件です。つまり、どの会社でも導入できる働き方ではありません。専門業務型の場合は業種が、企画業務型の場合は何についての企画で進め方や方法を労働者に任せられるのかという点に注意が必要です。
→労働時間が長くなってしまいがち(そして労働時間が何時間であってもみなし労働時間分労働したことになる)なので、労働時間を把握し、業務量に見合っているかどうかを検証する必要があります。健康面も含めて管理が必要です。
事業場外みなし労働時間制・・・みなし労働時間制の一つですが、職種による制限はありません。しかし、使用者の指揮監督が及ばない業務であることが必要です。労働時間を算定しづらい部分に関してみなし労働時間を採用する仕組みです。時間外労働、深夜労働、休日労働の全てに関して割増賃金を払わなければいけません。
→この働き方の場合は、所定労働時間以外の労働時間の部分をきちんと把握しておく必要があります。
フレックスタイム制度・・・会社が決めたコアタイムに就業していれば始業時間と就業時間を自由に決められます。ただし、所定労働時間分(1日あたり8時間)働かないといけないので、フレックスタイムで出勤が遅くなると、退勤も遅くなってしまいます。労働者からすれば、労働時間の開始と終了の時刻については自分で決められても、労働時間そのものの長さは決められません。
→労働時間そのものの長さは所定労働時間通りになります。しかし、労働者の出勤、退勤の時間がバラバラですので、朝礼や早出命令ができなくなります。顧客からの連絡があった時も、何時に出勤するかわからないと、対応に困るでしょう。勤務実態把握が複雑になりますので、社内でいつ誰が出勤するか報告・共有する仕組みづくりが必要です。
- 人材採用・育成 更新日:2020/07/15
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