メンタリングを成功させる10のステップ
まずはメンティーを理解することから始めます。メンティーとの会話のなかで、どのようなスキルを伸ばしたいのか、現状にどう感じているか、将来の目標などを聞き出します。メンティーからメンターへの質問を受けつけてもいいでしょう。どのようにしてメンターがいまのキャリアを築いたか、メンターがいま注目していることや面白いと感じていることなど、メンティーには聞きたいことがいろいろあるはずです。
信頼関係を築くためには、メンティーとの共通点を見つけることも効果的です。まったく違う立場にいるメンターとメンティーでも、地方都市の出身だったり、好きなスポーツが同じだったりという、なんらかの共通点を見つけられるのではないでしょうか。
また、指導のゴールや、指導方法、スケジュールなど、メンティーを成長させるための計画は、メンターから一方的に提案するのではなく、必ずメンティーと相談の上で決めます。
新しいスキル、仕事に対する姿勢、洞察力、知識など、このメンタリングが終わったときに何を獲得しているか目標を決めます。メンターの役目は、目標を明確で現実的にするのを助け、達成するまでメンティーを導くことです。
例えば3年後に専門家としてどのようになっていたいかメンティーに聞き、大まかな目標が出てきたとしましょう。まずメンターは、メンティーの現在のスキルと目標を比較して、どれくらいのギャップがあるかを分析し、達成可能な目標になるよう調整を手伝います。そして、何をどう学べばメンティーが目標を達成できるかを提案。そのとき、目標を達成したことがはっきりと分かるように、メンターが目標を具体的に評価できる形に整えることがポイントです。また限られた時間のなかで目標を達成するため、学ぶことの優先順位を考えます。
アクサロッド氏は、メンタリングに自己認識やプラス思考といった日常的な心理学や脳神経学のテクニックを使うことの重要性について、2018年にタイで起きた事件を例に挙げて説明しています。サッカー少年12人とコーチが雨で水量が増した洞窟に閉じ込められてしまったこの事件を覚えていらっしゃる人も多いでしょう。
仏教の瞑想を習っていたコーチは、約2週間、食料がない暗闇のなかで少年たちを励まし続けました。人間が陥りやすい、パニック、怒り、恐れ、攻撃といった感情に支配されず、冷静さと決意を保てたことが生存につながったのです。このようにメンターが心理学のテクニックを使えると、メンティーに直接的でポジティブな影響を与えることができます。
日常の心理学を使ってメンティーの成長を促すには、まずメンター自身が、自分の長所短所をはじめ、物事に対する姿勢や、物の見方が分かっていること、すなわち自己認識ができていることが必要です。その上で、メンティーの思考パターン、ストレスや困難に対する対処法、コミュニケーションの方法などについて探ります。それらの情報を元に、メンティーの自己認識を助けます。
- 日誌をつける -自分を客観的に見つめることができるようになり、自己反省の習慣がつきます。
- メンティーに、ほかの人の指導をさせてみる -自分が得た知識や技術をほかの人に教えることで、しっかりと身に付きます。チームリーダー、マネージャー、指導者を目指しているメンティーには特に効果的です。
- メンターとメンティーの立場を入れ替えてみる -メンティーが得意なことをメンターに教えます。対人関係のスキルを向上させたり、得意な分野についてさらに学んだりする機会になります。
- 専門家にインタビューをする -メンティーが伸ばしたいと思っている技術を持った専門家にインタビューする機会を与えることで、技術的な知識のアップや展望につながります。
- 気になる施設、企業などを見学する -工場見学や職場見学は、興味を持っているビジネスがどのように機能しているのか知る機会になります。
- アイデアを図式化する -アイデアを簡単な図や表を使って表すことで、会話のきっかけとなったり、新しい視点を提供したりできます。身につけておくと役立つスキルです。
- ロールプレイ・リハーサル -商談やプレゼンテーションに挑む前にロールプレイングやリハーサルをすると、頭で考えていたことを体で感じることができ、より具体的な対策ができます。
- 専門家が話すビデオを見る -インターネットを検索するだけでも、世界中の専門家のスピーチを聞くことができます。ロールモデルのアイデアを聞くことはもちろん、プレゼンテーションや話し方の参考にもなります。
- 同僚との共同作業 -共同作業を通して、対人コミュニケーションや説明責任を共有することを学んだり、適応性を向上させたりできます。
- ボランティアに参加する -現在の仕事では体験できない経験を積むことができます。
- 視点を変える -ある問題について自分の視点を書き出し、次にほかの人の立場からその問題を考えてみる「リフレーミング」をしてみるといいでしょう。もっと広く考えることや、バイアスについて理解すること、ほかの人と上手にコラボレーションすることを学ぶことができます。
メンターとメンティーの関係性が上手くいかないこともあります。例えば、世代や性別、文化の違いなどが障害になるかもしれません。その場合、メンティーがいる世界を理解するよう努力しましょう。直接聞かなくても、文化、宗教、世代について学ぶことはできます。これらは、メンティーに直接関係ないと思うかもしれませんが、理解をする助けになるものです。
メンターとメンティーが離れた場所に住んでいる場合は、すれ違いが起こりやすくなります。テクノロジーを使ったメンタリングは可能ですが、優れた機材とメンターの技術力が必要です。また、目標が高すぎたり、状況が変わったりすることで、メンティーが目標に興味を持てなくなってしまうこともあります。前に進まないときには方向性が正しいか話し合い、調整することが必要です。そして、効果的なメンタリングをするためには、親しくなってもメンターとメンティーの間の境界線を崩してはいけません。
- 労務・制度 更新日:2020/07/02
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