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部下を変える前に自分から変わる!組織を強くするリーダーになる方法

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理想の組織をつくる「インクルージョンマネジメント」

Q今井さんが考える理想的なリーダー像を教えてください。

今井:みなさんがよく言うリーダーとは、役職が高い人のこと。ですが、私はそういう人たちをリーダーと呼びません。私が考える理想的なリーダー像とは、「目の前の現実をコミュニケーションによって変えられる人」と定義しています。自らの発信力によって、目の前に起こる問題を所有せず課題に変えて解決していきます。

その際に大切なことの一つが、自分自身がどうしていきたいのか、どうなりたいのかを自らしっかり言えること。でも、これが意外と言えないんです。例えば、リーダーとしてVisionを語る際に、会社の目標はこうで、職責はこうで、ということを言える人は多いです。けれど、役職は置いといて、あなた自身は半年後、1年後にどうなっていたいのかを問うと、ほとんどの人が答えられない。これは役職に依存している証拠なのです。

株式会社自分の代表取締役は“自分”という意識でビジョンを描くことが大切。自分自身をマネジメントできる人こそ、組織の中でしっかりとマネジメントできるリーダーであると、私はリーダーの条件として提示しています。

Qリーダーが育つには組織環境がとても重要だと思うのですが、理想とする組織の形を教えてください。

今井:「ダイバーシティ」という言葉が少し前に広がりました。直訳すると“多様性”。多様な人材を積極的に活用しようという意味で、人材育成の場面で使われてきました。しかし、私たちはその先の組織の在り方をずっと考えてきた。それが「インクルージョンマネジメント」です。直訳すると“包括・包含”。社員さん、パート・アルバイトさん一人ひとりの経験や能力の現在地、それぞれが持つ考え方を認めて、組織全体で受け入れ、最大限に活かせるようにしようという人材育成の新たな形です。

ダイバーシティは群れを作ったり、多様な考え方を認め合う。その反面、自分に合わない群れが出てきた時に、現場ではそれを一旦は客観的に受け入れますが、主体的にはならず自分とは違うものとして捉えてしまうところもあります。それに対し、インクルージョンマネジメントは、相手の考え方を“私たちの掲げている目的を意識した目標に活かす”という考え方の基、どういう風に各々を活かすと相乗効果が生まれるのだろう、という攻めの考え方。一人ひとりの個は独立していますが、お互いの良さ(強み)を認めて掛け算のように相乗効果を発揮し、協力し合っていく。そんな組織が、理想の形だと思っています。

組織で起きる問題の8割がコミュニケーション

Q自社が、自律した組織になっているかどうかを見極める方法があれば教えてください。

今井:自律した組織かどうかを見極める方法に「意識の成長モデル」というものがあります。これは、現場で働く社員さん、パート・アルバイトさんがどんな言葉を使っているのかで判断するもの。

段階が5つあり、第1段階は「依存」です。私たちはこれを“ぶら下がり依存”と言っていますが、キーワードは「あなた」。

例えば、「会社が◯◯してくれない」「上司が◯◯してくれない」「時間がない」「予算がない」「採用したくても人がいない」という自分を会話の主体に入れない状態。これが依存状態の組織です。

続いて、第2段階は「積極的依存」。積極的依存の社員さん、パート・アルバイトさんがよく使う言葉のキーワードは「私はあなたから」。英語はすべての文法に“I”とか“YOU”とか“THEY”を使いますが、日本語は主語が消える省略文化。だから、積極的依存の人が使う「学ばせてください」「教えてください」という言葉の裏には「あなたから聞きたい」や「あなたから学びたい」など、“私はあなたから”という意味が隠されています。こういう言葉を使っている人が多い組織は一段階上がっていると判断できます。

第3段階は「自立」。キーワードは「私自身が」です。でもここはまだ“自分がもっと上手くなりたい”とか、“自分がもっと知識をつけて評価されたい”といった一人称の段階。「任せてください」「やらせてください」などがキーワード。

これを超えた第4段階が「自律」になり、キーワードが「おかげ様で」に変わります。「自律」に上がると、自分だけがこの仕事をしているのではなく、多くの人の力をお借りして仕事が成り立っていると考えるようになる。この律するほうの自律が芽生えると、相手を意識しだすのでチームという考え方が芽生えます。周りの皆さんに対して「〇〇さんのおかげで~」「〇〇さんの力があってこそ」など、おかげ様という意味がたくさん感じられるキーワードが聞こえてくるようになります。

そして最後の第5段階が「相互効力感(相互依存)」。これが上述でもご説明したインクルージョンマネジメントです。キーワードは「私たちだからできる」。“高い目的に共感し、高い目標もこのメンバーだからできるよね”という達成までのストーリーを描けるのが「相互効力感」です。

第4段階の「自律」はストーリーの手前。「可能性を感じる」「コラボしたら良い仕事ができるかも」という位置になります。

このように、自社の組織状態を把握することは、人材育成を行なっていく上でとても重要なこと。なぜなら、人はルールではなく“環境=場”に影響されるからです。もし、組織の状態が悪く、人材が育たない環境が生まれている場合は、会社の体質を根本から変えていかなければいけません。

Q具体的にどのようなことをすれば体質を根本から変えていけるのでしょうか?

今井:癖の集合体が習慣です。「感情の癖」「思考の癖」「行動の癖」「口癖」の“癖”を変えていくことが、根づいている体質をガラリと変える治療法です。例えば、Aくんは今日すごく忙しい。5つのタスクを持っていて、夜は予定があるから定時で帰らなければいけない。そのことは上司も知っている。その上で朝、「おはよう。悪いんだけど、今日の16時までにこの仕事できるかな」とリーダーにお願いされたとします。横には同期のBくんもいて、Bくんはまだまだタスクに余力がある。もしも今、Aくんが自分だとしたら、仕事をお願いされたときにどんな感情が生まれますか?

きっとネガティブな感情が生まれますよね。「なんで自分ばかりに仕事を振るんだろう…B君はやってないのに…」。この感情のまま行動したら、行動の質は低くなる。「とりあえず終わらせればいいや」となるのです。おそらく、リーダーへの報告も「終わりました」と機械的一編通りに冷たい口調になるのではないでしょうか。

では、同じシチュエーションで「おはよう。今日、5つの仕事がある中で悪いんだけど、すごく良い仕事が入って1つお願いしたいんだ。俺もできるし、Bくんもその資格を持っているから任せれば間違いなくできるんだけど、次のポジションを狙っているAくんにとって絶対にいい経験になると思って。どう?チャレンジしてくれるかな」とリーダーからお願いされたら、どんな感情が生まれるでしょうか?

きっとポジティブな感情が生まれますよね。「上司が自分のことを気にかけてくれていて、成長して欲しいという期待を感じるからこそ、チャンスに応えたい!」。この感情を持って行動したら、行動の質は明らかに変わります。

今回の伝え方で大切な事実は1つ。リーダーはAくんに対して仕事を振ることをしたかった。そのためにリーダーは何をしたかというと、“コミュニケーション”を使ってAくんの「視座」という意識の位置(どの立ち位置から物事を捉えるのか)を変えたのです。これがマネジメントの上手なリーダー。下手なリーダーは「Aくん、悪い、これやっといて」と言うだけ。マネジメントが下手なリーダーほど、言葉を省略するのです。

以上の話からわかることは、リーダーのコミュニケーションの質によって、組織は強くも弱くもなるということ。会社で起きている問題の8割は、コミュニケーションが原因です。

質の高いコミュニケーションを習慣化できれば、組織は強くなり、人材が育つ会社へと変わっていけるのです。

Q「コミュニケーション」という言葉自体の認識のズレも原因にあるのではないでしょうか?

今井:それも大いにあると思います。「コミュニケーション」はすごく簡単な言葉。なので、意味や価値を同じように捉えられていないことがあります。共通言語化できているかというと、おそらくできていない。上手くいってない会社ほど、そういうことが起きているんです。同じ言葉を使っているのに共通理解、共通認識が違うことで、行動レベルにもズレが生じてしまう。そうなると、リーダーは部下に対して「俺の言っていることが、なぜわからないんだ!」と怒鳴る。そして部下には「言われた通りに仕事しているのに怒るなんて」という感情が生まれ、徐々に組織がガタガタになっていくのです。

例えば、リーダーが新入社員のOJTを担当したとします。最後に「教えたこと、きちんと理解できたかな?」と聞くとする。当然、新入社員は「わかりました!」と答えます。でも実際のところ、10学んだうちの半分くらいしか理解できていません。しかし、教えたリーダーは「わかりました!」という発信された言葉じりを信じるので、教えたことができないと、最初は「どうしてできなかったの?」と優しく聞きますが、それが続くと「なぜできないんだ!」と強く言うようになるのです。部下はその度に「すみません」と謝り、最悪の場合は仕事が嫌になって退職。リーダーにとっても、部下にとっても、会社にとっても、幸せとは言えないループにハマってしまうケースが多々あります。

この状態がなぜ起こったのか、わかりますよね。言葉では言っていても、その裏側にある共通理解、共通認識の欠如によるものから生まれます。そして、この共通理解と共通認識は目には見えにくいものなのです。これがコミュニケーションの難しいところ。多くの人は目で見えるものや聞こえるものに重きを置くので、目の前で起きていることで判断しがちです。でも、マネジメントが上手なリーダーは「そうだよな、俺も新人の頃、聞かれたら“わかりました!”としか答えられなかったよな」と、相手の気持ちと理解力、それを判断する新入社員の基準に沿って考えられるので、(玄人の自分の基準ではなく)コミュニケーションを取れるので認識のズレが生じないのです。共通言語を浸透させる為には、前提として共通理解と共通認識をしっかりと整備することから全ては始まるということがポイント。そして、その共通言語が機能するからこそ、共通行動に繋がり、高い成果が常に発揮されるのです。

そんな、奥底にあるコミュニケーションの意味や価値、その人の捉え方や感じ方を私の会社では5つのステップに分けています。

組織を強くするリーダーの技術

Q5つのステップについて詳しく教えてください。

今井:例えば、新卒は入社したばかりの時は会社の知識を持ってないし、技術力もない。でもやる気はある状態。これが1つ目の「無意識の無能」というステップです。

入社して3ヶ月くらいすると何となく自分に期待されている業務が頭でわかりますが、実際にお客様の前で100%応えられるかというと応えられない状態。これは2つ目の「有意識の無能」というステップです。

次の3つ目のステップが「有意識の有能」。頭で理解できていて、意識すればできる。でも、スピードが伴っていないため、まだプロとしては物足りない状態です。

4つ目のステップが「無意識の有能」。経験というものが裏打ちされて、意識しなくても体が動く状態です。つまり、プロ(玄人)レベル。

そして5つ目のステップが「有意識の無意識の有能」。自分がなぜ自然とプロレベルの質の良い仕事ができているのかをしっかりと論理的に説明できる状態。ようするに、再現性が高い。これができるリーダーが、強い組織をつくれるリーダーです。

Q5つのステップを参考に人材育成を行なっていく際、大切にすべきポイントはなんでしょうか?

今井:人材育成は“(リーダー)1対10(部下)”という見方で行うのではなく、“1対1が10組”という見方で行うことが大切です。例えば、「相手を認めること」を企業内の方針として決めたとします。「今週から褒める月間を始めます!」と言って実施し、すべての社員さん、パート・アルバイトさんを褒める。でも、その中には、まだ仕事がちゃんとできない“無意識の無能”のステップから無意識の有能までのステップにいる様々な段階の社員さん、パート・アルバイトさんがいます。それなのに褒めるというルールをリーダーから言われたからという理由だけで、相手の現在地を考えずに全員一律に同じようにただ「良いね~!」「がんばってね~」と褒めてしまっては、後々に矛盾を生み、結果的に育成は失敗に終わる。言われた側は、「いったい、何について褒めてくれたんだろう?」「私の何を褒めてくれたんだろう…なんか、適当に言われた…」と感じてしまうのです。

部下一人ひとりがどのステップにいて、どういうアプローチでコミュニケーションを取っていけばいいのか、ということを丁寧に1対1で向き合って行なっていく。これが人材育成ではとても重要です。

リーダーが部下一人ひとりのステップを把握して、それに合わせたコミュニケーションを取ることで組織は強くなっていくのですね。人材育成で思うような結果が出ていないリーダーは、自分自身のやり方を見つめ直すところから始めることが必要だと感じました。本日はありがとうございました。

思いやりのあるコミュニケーションを

伝えたことを理解してくれない。教えたことができない。何度注意しても同じミスを繰り返す。そのような状態が続いている場合は、一方通行のコミュニケーションが原因にあります。物事の判断基準を自分に置いたり、自分の成功したやり方を押しつけたり、自分が言われてきたことを同じように言ったり。それでは、高いパフォーマンスを発揮できる組織はつくれません。

一人ひとり時間をかけて、相手に合わせたコミュニケーションを取っていく。一見、非効率のように思えますが、個々の意識が高まり、結果的に良い影響を及ぼします。組織を強くするリーダーを目指しているみなさんは是非、今井さんがお話してくださった内容を意識して、コミュニケーションを大切にしてみてはいかがでしょうか。

  • 人材採用・育成 更新日:2019/06/27
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