キャリアステージ別に考える女性が活躍する職場づくり
女性の活躍が評価されにくい背景として、長時間労働をよしとする日本の根強い慣習が挙げられます。長時間労働をする社員が多い会社では、就労時間が長いほど忠誠心が高いという認識を持たれ、評価も高まりがちです。
長時間労働を評価するわけではなくとも、忠誠心や業務に対しての意欲が高いということが評価に紐づいてくると、家事・出産・育児・介護などを家の中で主として担当することを想定している女性たちは、どうしても男性に比べて昇進のハンディを背負うことになり、昇進に対しての意欲も少しずつ失われていくという現象が起きてしまいます。
このような現状からも、働いた時間ではなく出した成果に応じて公平に評価できるかが、組織文化を作るうえで重要な論点となります。男性のほうが優遇されていると感じる女性が職場にいる場合、どのような時にそれを感じるのかを調査し、その要因が「就業時間に紐づく評価」なのかを明らかにする必要があるでしょう。
また、男女差を感じにくい職場づくりをするには、若いうちから女性に責任ある仕事を任せる機会をつくることが非常に効果的です。スタッフ期の女性に責任ある仕事を任せることは、後のリーダー期・マネージャー期にも非常に良い影響を及ぼします。責任ある仕事を任せ、本人への期待を示すことで、より強い成長意欲を持つことができます。
人を育てる栄養剤になる「期待」を、出産・育児・介護の時期を迎える前の段階で示すことができれば、後々の昇進への意欲やキャリア志向を育てることが可能になります。
いまだに、女性がリーダーになる機会が多いとは言えない日本では、女性は組織の中でリーダーシップを取りチームを率いるためのトレーニングをする必要があり、その時期が遅れれば遅れるほど、後に及ぼすポジティブな効果は薄まっていきます。まだ吸収力の高い若手のうちに、女性に責任のある業務を任せることは非常に効果的だと言えるでしょう。
男女別にみると女性リーダーが抱く苦手意識の特徴は「葛藤や衝突に耐えること」「不確実・曖昧な状況下に耐えること」などが挙げられています。
評価者ではないが指揮命令者ではあることへの葛藤や、年上メンバーとの衝突など、リーダーになるとさまざまなシチュエーションに遭遇しますが、それまでリーダーとしての役割や矢面に立つ役割を担ってこなかった多くの女性にとって、こうした葛藤や衝突には慣れていないことが多く、経験値が低いことで苦手意識が強く出ているのかもしれません。
「不確実・曖昧な状況下に耐えること」も同様です。今まで上司が決めた方針や判断に従って業務を行ってきたスタッフ期とは違い、自分で判断をしなければいけない機会が増え、不確実・曖昧な状況に遭遇することも多くなります。そのため、こちらも同様に経験値不足が女性の苦手意識を強めている可能性があります。
人事・上司の立場から女性リーダーをサポートする際には、「最近経験した葛藤・衝突」「曖昧な状況に陥った際の判断について悩んでいること」などをヒアリングしながら進めると良いかもしれません。このようなリーダー期に入ってからのサポートはもちろんですが、可能であればスタッフ期のうちから昇進対象者には、一般的な女性リーダーが苦手に感じるポイントを事前に伝えておき、イメージトレーニングを行ってもらうことが理想的です。こうすることで、女性リーダーにとっては有効なメンタルフォローになるはずです。
併せて、女性リーダーからマネージャーに上がるためには、サポーターとなる役員クラスの存在が必要です。多くの女性マネージャーは、そういったサポーターの存在に助けられたという実感を持っています。ただし、サポーターからの支援の受け方によっては、一歩間違えるとその支援が裏目に出てしまうことがあります。
自分の力で同僚からの信頼を得るべきタイミングにおいてサポーターの力を頼ってしまうと、昇進するどころか逆に社内で孤立してしまい、コミュニケーションが円滑にいかず、結果として支援が自身の成果に結びつきにくくなる可能性もあります。サポーターの支援を受ける側の心得として、サポーターに対して距離の取り方・対峙方法・コミュニケーション方法・感謝の伝え方について、きちんとわきまえなければいけません。
実際、ステージ別の女性の残業時間アンケート調査では、月残業時間が30時間以上の女性の割合が、スタッフ期が16.5%に対し、リーダー期になると21.2%、マネージャー期は32.1%と、ステージが上がるごとに女性の残業時間の比率が増えていっています。日本企業に染み付いた“労働時間の長さが評価に繋がる”という慣習が、女性たちの昇進意欲を阻む背景にもなっているようです。
とはいえ、人事や上司の立場からすると、女性にもマネージャー職への意欲を持ってもらわなければいけません。そこで、本人へ内示を出す際に心がけておきたいのは、「会社として女性役職者を生み出す動きとは関係なく、あなたの実力を評価して推薦したい」、つまり「祭り上げを行っている」のではないということを伝えること。そして、「なぜあなたなのか」を伝えるようにしてください。
どの部分を評価して推薦したかをエピソードも含めて伝え、マネージャーに昇進するうえで女性が懸念している「労働時間」の問題を含め、懸念点があればサポートしていくというメッセージを投げかけてみてください。
いかがでしたでしょうか。女性がそれぞれのステージにおいてどのような課題を感じ、会社にどのようなサポートを望んでいるかについて、考えてみました。
男女ともに、昇進するには役員クラスの自分を引き上げてくれるサポーターの存在が大きなカギとなっています。サポーターの立場である(男性)役員陣も、女性を推薦することに対して心理的バイアスがかかり、「周囲にも見てわかるほどの成果をだし、“誰が見ても昇進させて当然”という状況までいかなければ、正直なところ女性の部下を推薦しづらい。」という意見を抱く人もいると想定されます。
このように、男性に比べて女性が昇進するためのハードルはまだまだ高く、数値目標を設定してでも推進しなければ、この文化や慣習は変革できないというのも納得できます。女性の管理職・役員が増えてくれば次第に社内の女性昇進に対する認識も変化していくはずです。人事の皆さんの体制作りと、上司の皆さんの公平な評価を基盤として、社内の女性活躍推進を進めていただければと思います。
次回は、子育てを行いながら働く女性“ワーキングマザー”のサポート体制について、考えていきたいと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2020/05/21
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