6月中旬の内定率調査からみる学生の価値観
2019年卒の大学生・大学院生の6月末時点の内々定率は76.3%(前月末比16.0pt増、前年同日比3.0pt増)となりました。3月調査から各月で前年の内々定率を超え、企業の採用意欲は高く各メディアが報じる通り売り手市場を表した結果になっています。
(2019年卒マイナビ就職内定率調査6月より)
同様に6月末の内定率調査における一人あたりの内定保有社数が2.2社と既に前年の7月末と同じ水準です。現状の数字だけで考えると現時点で企業が内々定を出している学生はその半数を辞退する計算となります。実際、マイナビが企業向けに昨年実施した2018年卒の採用状況を調べる調査では、内定辞退率が3割以上の企業は53.5%に上っています。
※2(2018年卒マイナビ企業新卒内定状況調査28pより)
そのような中でもまだ4割を超える学生が就職活動を継続しており(6月末内定率調査から43.7%が継続※内々定保有で継続する学生含む)19年卒の新規採用を継続する企業もまだ多い現状です。 引き続き採用活動で学生とのコミュニケーションを図るご担当者の方もいれば、内々定者のフォローなど対策に頭を悩ませている方もいるはずです。そこで今回は学生とのコミュニケーションを考える上で参考になりそうなデータをまとめました。
学生の価値観を探るべく、6月中旬に実施した臨時の内定率調査でいくつかの質問を投げかけました。その中から【質問1】「仕事に対するやりがい」(自己のモチベーション)と【質問2】「自分と他人を比較するポイント」(自らをどう評価するか)それぞれの結果を以下の3つの軸でまとめ考察しました。
【質問1】「仕事に対するやりがい」(自己のモチベーション)の質問
質問:今後社会人として仕事をする上で、あなたが「最もやりがいを感じる」と思うものを選択して下さい。
【質問2】「自分と他人を比較するポイント」(自らをどう評価するか)の質問
質問:社会人になった後、友人や同僚と自分をどのような観点で比較すると思いますか。(複数選択)
『軸1』男女(内々定の有無に関わらず全ての学生)
目的:男女での価値観の違いの把握
『軸2』保有している内々定の数(内々定保有者のみ)
目的:内々定を保有する数で学生の考え方に違いがあるかの把握
『軸3』内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の従業員規模(内々定保有者のみ)
目的:勤務する企業の規模で学生の考え方に違いがあるかの把握
これらを把握する事で、就職活動を継続する学生、内々定者、そして新卒で入社するであろう学生といった若い世代の方とのコミュニケーションの参考になるのではと考えました。
■やりがいについて
まず「自己のモチベーション」として感じるであろう「やりがい」を探るべく、「今後社会人として仕事をする上で、あなたが最もやりがいを感じると思うものを選択して下さい」と質問した結果をまとめました。
「軸1.男女について」
男女別に見ると、男子は金銭面や地位を、女子は周囲からの評価を気にしています。性別に因らない生き方がトレンドのように報じられる事も多いと感じますが、「やりがい」という観点では分かり易く男女で傾向が見られます。
「軸2.保有している内々定の数(内々定保有者)」
複数内々定を保有している学生はより金銭面や地位を重視し、また「人間的な成長の実感」も大切にするようです。一方で内々定を1社のみ保有している学生については、やや理系の比率が高い事もあり、専門的な能力の高まりや難しい課題の解決など、スキル面や成果を重視する傾向にありました。
「軸3.内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の従業員規模(内々定保有者)」
小規模の会社に勤務する予定の学生は規模の大きな会社に勤務する学生より「専門的な能力の高まり」や「人脈の広がり」にやりがいを感じる傾向がありました。一方で勤務する会社の規模が大きくなると「出世や役職」にこだわる傾向が高くなるようです。
「今後社会人として仕事をする上で、あなたが最もやりがいを感じると思うものを選択して下さい」 男女(内々定保有者+未内々定者)図1
「今後社会人として仕事をする上で、あなたが最もやりがいを感じると思うものを選択して下さい」 保有している内々定の数(内々定保有者)図2
「今後社会人として仕事をする上で、あなたが最もやりがいを感じると思うものを選択して下さい」 内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の従業員規模(内々定保有者)図3
■友人と比較する項目について
次に「自己をどう評価するか」という観点で「社会人になった後、友人や同僚と自分をどのような観点で比較すると思いますか。(複数選択)」と質問した結果をまとめました。
「軸1.男女について」
男子は「給与・年収」「貯蓄」「役職や出世」など「仕事のステータスや金銭面」をより気にします。女子は「人間関係」「残業時間の量」や「仕事とプライベートの両立ができているか」の項目についてより気にしています。男子はより「給与」や「役職」といった仕事における結果、女子は「対人関係」や「ワークライフバランス」など環境面をより強く考えています。
「軸2.保有している内々定の数(内々定保有者)」
複数内々定を保有している学生は「給与・年収」「役職や出世」を気にするのと合わせ、「配偶者や子供の有無」も気にしています。特に3社以上内々定を保有している層において顕著な傾向です。3社以上内々定を保有する就職活動にアクティブな層は、仕事とプライベートも含めたライフプランをより具体的にイメージしている傾向がありそうです。
「軸3.内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の従業員規模(内々定保有者)」
従業員規模が大きくなるほど、「給与・年収」「役職や出世」「配偶者や子供の有無」を気にしており、複数内々定を保有している層と同様の傾向です。逆に従業員規模が少なければ少ないほど「会社での人間関係」や「仕事とプライベートの両立ができているか」など「仕事の環境面」や「ワークライフバランス」を気にする傾向があるようです。
「社会人になった後、友人や同僚と自分をどのような観点で比較すると思いますか。(複数選択)」 男女(内々定保有者+未内々定者)図4
「社会人になった後、友人や同僚と自分をどのような観点で比較すると思いますか。(複数選択)」 保有している内々定の数(内々定保有者)図5
「社会人になった後、友人や同僚と自分をどのような観点で比較すると思いますか。(複数選択)」 内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の従業員規模(内々定保有者)図6
「今後社会人として仕事をする上で、あなたが最もやりがいを感じると思うものを選択して下さい」 内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の業種(内々定保有者)図7
「社会人になった後、友人や同僚と自分をどのような観点で比較すると思いますか。(複数選択)」 内々定を受けた企業で入社意思の最も高い企業の業種別 図8
ここまで「男女」「内々定を複数持っているかどうか」「務める予定の会社規模」といった軸で学生に質問した内容をまとめましたが、それぞれの属性によって異なる傾向が見て取れました。
冒頭にも述べた通り、各社採用活動における競争が激しくなっていますので、人事担当者として「若い世代」の価値観や仕事観などをしっかり把握しておく事が必要です。更に新卒学生の採用や内々定後のフォロー、コミュニケーションにおいては若手社員の活用が重要であると感じます。就活生や内々定者とより近い目線、視点を持っている若い世代の社員が、自社で働くやりがい、これまでのキャリアや今後描いているキャリアパスをしっかり伝える機会をより多く設ける事が、学生の興味関心、もしくは就労意欲を高めるきっかけにもなるはずです。その為にも若手社員に対して今回の調査結果のようなデータを共有し、インターンシップの目的や意義の説明を行い、かつ新卒採用における一連の流れや学生に提供している情報をしっかり共有しながら、一人一人の社員にそれらを理解してもらう取り組みが必要だと感じます。
スマホの普及によって多様なメディアから多くの情報を24時間どこでも得られるようになり、様々な価値観を生み出しやすい世の中になったと感じます。表面化しやすい変化し続ける価値観もあれば、そこに隠れた普遍的な価値観もあるはずです。その時代特有の若い世代の特徴と、いつの時代も変わらない考え方をしっかり把握する為に、今後も学生の価値観にアプローチする調査は実施したいと考えています。
最後になりますが、マイナビのHRリサーチでは皆様の参考になるデータを随時リリースしています。
是非下記よりご活用頂き、採用活動にお役立てください。
- 人材採用・育成 更新日:2018/07/06
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