<学生が求めるインターンシップ>について考える
新卒採用のスケジュールが、広報活動開始3月、選考開始6月と短期間となっている現在、課題となっているのは、学生と企業間における、短期間でより高い精度のマッチングについてです。学生側から見ると、「業界・企業研究」を行う充分な時間がとれずに、入社後のミスマッチを助長する可能性が懸念され、企業側は企業認知機会の不足や業界・企業理解不足を懸念する声が多くあります。現在、これら双方の課題解決の一つとして「インターンシップ」が期待されています。 そこで今回のコラムでは、「2017年度マイナビ大学生インターンシップ調査」より、「学生が求めるインターンシップ」について考察していこうと思います。
学生のインターンシップ参加率は、過去最高の72.2%にのぼり、広報活動開始以前の業界・企業理解の機会としての役割を担い始めているようです。では、学生が興味を持つインターンシップはどんなものでしょうか。 以下のグラフは、学生に尋ねた「最も興味を持つインターンシップの内容(単数回答)」と、「最も印象に残った企業のインターンシッププログラム内容(複数回答)」になります。

最も興味を持つインターンシップの内容としては、「実際の現場での仕事体験」(37.7%)がトップ、「実際の仕事のシミュレーション」(18.2%)が続きます。いずれも「実際の」仕事に関わる内容で、就職してからのイメージをより明確に描けるプログラムに多くの学生はより興味を持っていることがうかがえます。それに対して、実際に参加した最も印象に残った企業のプログラム内容(複数回答)においては「グループワーク(企画立案、課題解決、プレゼンなど)」(56.6%)が最も多く、この後に「人事や社員の講義・レクチャー」(37.2%)、「若手社員との交流会」(30.2%)など比較的短期間でも開催できるプログラムが続いています。単数回答と複数回答の違いはあれど、例年同様、学生が興味を持つプログラムの内容とは乖離が見られました。
学生は、参加したインターンシップをどう感じていたのでしょうか。 ここでもう少し深く掘り下げるために自由記述で回答してもらった「これまでにインターンシップに参加して、よかったと思った点や期待はずれだった点」について、最も興味を持つインターンシップでトップの「体験型」と、最も印象に残った企業のインターンシッププログラムでトップとなっている「グループワーク型」について回答されているものを中心にピックアップしてみました。
体験型
「2017年度マイナビ大学生インターンシップ調査」で、学生が最も興味を持つインターンシップの内容でトップであった、「体験型」においても期待はずれだったものは多くありました。
<不十分なプログラム>
・職場体験と言いながら、実際にデスクを並べただけで、業務には関われなかった点。【文系男子】
・体験型とはいえ、雑用っぽい作業しかなかったため、考えて動けるものが欲しかった。【文系女子】
・体験できる業務が限られており、あまり深くまで体験できなかった。【理系男子】
・あまり実際の業務内容について体験できなかった。【文系女子】
・一般的な業務の体験はさせて貰えるものの、その企業独自の仕事や社風を知ることが出来なかった。【理系女子】
などの回答をみると、単純作業の業務体験だけでは物足りないと感じているようです。もちろん受け入れ側としては普段の業務で学生ができそうなものをプログラムとして用意されていると思うのですが、その前後の流れも分からず、作業の意味を見出しづらい学生には不満が残っているのだと推察されます。
<交流不十分>
・社員との交流があまりなく、淡々と仕事をこなすだけだった。【理系男子】
・もう少し会話をしてみたかった。【理系男子】
・配属部署によっては社員の方が学生の対応をする時間が無く、待たされるといった場面があった。【理系男子】
・仕事の体験を主にさせていただいたが、もっとスタッフの方のお話を伺う交流の時間を設けられると嬉しかった。【文系女子】
体験型のインターンシップなので、社員交流が不十分だという回答は少なかったのですが、それでも交流機会が少ない場合は、学生は期待はずれだと感じています。
グループワーク型
<不十分なプログラム>
・実体験を伴わない机上の空論のグループワーク。【文系男子】
・グループワークの内容が他会社と似通っていたこと。【文系女子】
・グループワークを行ったが、そこから業務内容を詳しく知ることはできなかった。【文系女子】
・グループワーク中心で職場体験という実感が薄かった。【理系女子】
・グループワークの内容が実際の仕事内容と異なっていた。【理系男子】
・グループワークの内容が浅くて学べることが少なかった。【理系男子】
・グループワークがメインで、働く姿が想像できないインターン。【理系女子】
短期間のインターンシップではグループワークが多くなりがちです。 その企業での業務体験の実感が持てない、働く姿がイメージできない、さらに課題やテーマにその企業ならではの独自性がなければ、場所とメンバーが変わっただけのワークになってしまうこと。もありそうです。同じ業界を志望している学生同士だと別の会社で同じようなテーマでまたもや同じグループでワークか!ということもあるのかもしれません。
グループワークに対する、フィードバックについてもピックアップしてみましょう。
<不十分なフィードバック>
・グループワークのみで、フィードバックがなかったもの。【文系女子】
・グループワークのフィードバックをしてくれず、ただやりっぱなしになってしまうこと。【文系男子】
・社員からのフィードバックが、学生同士のミーティングでも発言されるような内容であまり参考にならなかった。【文系女子】
・グループのフィードバックだけはあったが個人のフィードバックがなかった点。【理系女子】
・社員からのフィードバックやグループワーク最中のアドバイスをもっとしてほしかった。【理系女子】
フィードバックがないのはもちろんのこと、あったとしてもその中味についても当たり障りのないものでは学生にとっては意義のあるインターンシップとはならないようです。フィードバックを行う社員の視点・態度などにも気を配る必要がありそうです。
体験型
<プログラム>
・企業の人と同じ仕事をさせてもらうことにより、働くことのイメージがわいた。【理系女子】
・実際の業務を経験させてもらえて、職場の雰囲気なども分かって良かった。【理系女子】
・実際の現場でしか仕事内容は理解できないと思うから体験できてよかった。【理系女子】
・業務体験により理解が深まった点。【文系女子】
・働く場を体験することで、自分の適性を判断できたこと。【文系女子】
・実際に課題として仕事をいただけてとても勉強になった。改めて自分がやりたい仕事を再確認できた。【文系女子】
・仕事内容を体験させてもらえるインターンシップでは、自分が興味をもてるのか、実際に経験してみて、想像より自分に適しているかどうか判断できる。【理系男子】
・その企業でしか経験できないようなことをたくさんできたこと。【文系男子】
体験型では、実際の仕事や職場を体験することで、「業務理解」「自分に適性があるか」「入社後の働く姿をイメージ」など、企業研究や適性について深めることができたものが「良かった」と評価されています。
<交流>
・社会人の方とお話しする機会が多く資料等だけでは分からないようなことを質問することができた。【文系女子】
・社員の方々と話をすることができ、職場の雰囲気が分かり、その企業への志望度がアップした。【理系男子】
・様々な年代、役職の方と話すことでよりその企業について知ることができた。【理系男子】
・自身の希望する職種の方からの生の声を聞けたこと。【理系男子】
・若手社員さんとの交流や、各業務班長との交流。様々な方と交流することで、それぞれの立場からの意見を聞くことができ、自分にとってたいへん参考になった。【文系男子】
社員との交流は、企業や業務内容を知るだけでなく実際の職場の雰囲気といった紙やインターネットでは伝わらない活きた情報を得ることができ、学生の志望度にも影響を及ぼすようです。
グループワーク型
<プログラム>
・実際の仕事内容に近い形でのグループワークを行うことでこの業界が普段何をやっているのかをよく知ることができた。【文系男子】
・実際の職場でグループワークや現場見学をすることで働くことに対する具体的なイメージができた。【理系男子】
・その会社の経営理念に基づく業務を実際にグループワークを通じ体験できたことで、理解度が深まっただけでなく志望度が上がった。【文系女子】
・グループワークなどを、実際に業務内容を一部だとしても体験できた点。【文系男子】
・実際社員の方がやっている様な仕事を簡略化したものをグループワークで体験できとても貴重な経験ができてよかった。【文系女子】
・グループワークを通じ実務について理解を深めることができた点。また、自身の知識がどれほどその仕事に直結し役に立つのかを知れた点。【文系男子】
・グループワークを通じて自分は何が得意なのかを改めて認識することができた。【理系女子】
グループワークにおいても、実際の業務に関連する課題であれば、学生は「業務理解」「自分に適性があるか」「入社後の働く姿をイメージ」など体験型と同様の成果を感じています。
<フィードバック>
・グループワークのフィードバックを社員の方からいただくことで、自分たちでは気づくことのできない視点を得ることができた。【理系女子】
・フィードバックを頂いたことで、新たな自分の長所と短所を発見することができ、改善点が見つけられたこと。【文系女子】
・グループワークを行い、その後に各個人にフィードバックがもらえたこと。自分の長所短所を考えるきっかけ、参考になった。【文系男子】
・社員の方々からフィードバックをいただくことで思いつかなかったアイデアや至らない点に気付くことができ、考え方の幅が広がった。【理系男子】
・グループワークを通して、その業種のことを考える中で、様々な有効なアドバイスをいただいて、就職活動だけでなくこれからの自分自身へと役に立った。【文系女子】
自己分析や視野を広げることができ、就職活動やその先の自分のためにもなると思えるような的確なフィードバックは学生の心に響いています。
体験型では、プログラムと社員との交流、グループワーク型では、プログラムとフィードバックに絞って学生の声をピックアップしてきました。 それぞれを比較して見えてきたのは、体験型、グループワーク型に関わらず、プログラム設計の充実と社員と学生とのコミュニケーションの重要性です。実際の業務・職場体験、実際の業務に関連するワークなどにより、学生にそこで働く自分をイメージさせ、適性の有無を判断できるようなプログラムを用意すること。社員と学生とのコミュニケーションにおいて、職場の雰囲気や業務に関する活きた情報を聞けるようにすること。更には、的確なフィードバックにより、学生に社会人の視点を持たせ、視野を広げさせ、自己分析にも一役買えるような配慮があれば、期間や形式に関係なく学生が求めるインターンシップの一つになるのではないでしょうか。 もちろん、自由回答の中には「自己分析に役立った」、「エントリーシートの書き方を教わった」、「グループワーク、ディスカッションでの自分の立ち位置、振舞い方がわかった」等の、就職活動の準備として役に立ったという回答もありました。この辺りはまた、機会があればご紹介したいと
思います。
学生が求めるインターンシップのプログラム内容については、2018年5月14日発表予定 の「学生が選ぶインターンシップアワード」(1月31日まで企業自薦受付中)で具体的な事例をご確認いただくことができます。是非ご覧ください。
- 人材採用・育成 更新日:2017/12/27
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