「就職活動に対する保護者の意識調査」にみる「母親と子供」の関係
5月にリリースした「2017年度 就職活動に対する保護者の意識調査」(以下、保護者調査)では、「子供の就職活動に関心がある(高い+関心がある)」と回答した保護者は、80.3%と約8割の保護者が子供の就職活動に関心を持っていました。(図1)また、学生を対象とした2017年2月実施の「2018年卒 マイナビ大学生のライフスタイル調査」において「ご両親または保護者の方は、あなたの就職活動に対してどの程度関心を持っていますか」という質問でも「(とても+ある程度)関心がある」と約8割(78.3%)の学生が回答するなど、保護者が自分達の就職活動について「関心」を持っていることは子供も充分理解していました。 関心度の高さでは、「母親」の84.9%が「父親」の78.5%を6.4pt上回っており、同じように子供を持つ母親として私自身とても興味深い結果でしたので、今回のコラムでは「母親」を中心とした就職活動に対する保護者の関わり方について詳しく見ていこうと思います。
改めて保護者調査から母親の関わり方を見てみましょう。まずは、「子供と普段からよく話をする」と思うかについて「母親」は81.7%が「(よく+どちらかというと)話をする」と回答(「父親」57.5%)。就職活動について最も話をするのも、「母親」が最も多く話をする(68.1%)と回答しています。特に「娘を持つ母親」は87.5%が普段から「(よく+どちらかというと)話をする」と回答しており、よりコミュニケーションを多く取っていることがわかります。 また就職活動に関する子供とのやりとりについて聞いた項目でも、いずれも「母親」が「父親」を上回る結果となっています。(図2) 特に注目すべきは「就職活動についての相談を受ける」、「自己分析を手助けするために話を聞く」などの社会人としての情報や経験が必要そうなイメージのある項目でも「母親」との回答が「父親」を大きく上回っていたことです。 2017年6月8日に博報堂生活総合研究所が発表した調査「こども20年変化」(首都圏の小学4年生~中学2年生対象)においても - お母さんは「尊敬する人」:97年 54.8% → 17年 68.1% (+13.3pt) ※過去最高 - お父さんは「尊敬する人」:97年 59.7% → 17年 61.5% (+1.8pt) ※ほぼ変わらず という結果が出ていました。(出所:博報堂生活総合研究所「こども20年変化」) 20年前に比べ働く母親が増えて社会進出していく中での結果ともいえるでしょう。就職活動においても、今後ますます母親の存在感が増していくと推察できます。
「娘を持つ母親」では、「就職活動についての相談を受ける」(76.6%)、「将来お子様がやってみたい仕事について話を聞く」(86.8%)、「就職活動について進捗を聞く」(75.0%)、「どの企業の面接を受けたか聞く」(74.2%)の回答がいずれも7割を超える高い結果が出ました。 青山学院大学 教育心理学研究で発表されている「青年期から成人期への移行期における母娘関係」(水本・山根,2011)の中には、「近年の我が国においては、経済的自立の遅延に伴う娘の母親に対する経済的利得期待の高まりに、長男相続制の崩壊とともに増加する母親の娘に対する将来の世話役割期待が合致して、母と娘はますます互いの距離を縮め、その関係は「一卵性双生児」と言われるほど親密になっている」と記載されており、就職活動に関しても母親は、娘と一緒に就職活動をしているつもりで関わっているのではないかと推察できます。 ちなみに毒親という言葉をご存知でしょうか。毒親とは、子供を自分の思い通りに支配したがる親で過干渉、虐待、ネグレクトなどが特徴にあり、毒親に関する本がベストセラーになったり、ドラマ化されたりもしています。 今回の保護者調査に当てはめてみると、「就職活動についての相談を受ける」(76.8%)、「自分の仕事内容(現在・過去)について話す」(68.8%)、「どのような企業や業界の仕事に就いてほしいか話す」(60.9%)に対する「娘を持つ母親」の回答はいずれも6割を超えています。あくまでも見方によってですが、相談を受けた際に自分の経験を話し、自分の希望を伝える・・・・・・娘のためにと思っていたことが結果として娘を支配しているとも考えられます。実際にはそんな関係ばかりではないと思いますが、母親である筆者もまた多少なりとも心あたりがあります。 以上のように「娘を持つ母親」は「毒親」でもそうでなくても、娘の就職活動に高い関心があり、娘への関わり行動や支援において二人三脚の就職活動をめざしているようにも推察できます。
子供への就職支援として行った行動において、資金的な援助以外で「娘を持つ母親」と「息子を持つ母親」の支援について比較してみました。「子供の自己分析を手伝う」「子供の履歴書やエントリーシートの添削」「筆記試験の勉強を手伝う」「面接対策を手伝う」などは「娘を持つ母親」の方が「息子を持つ母親」よりも高い割合を示しており、直接的な支援を行うことが多いようです。一方「検索サイトや就職情報サイトで企業を調べる」「知り合いの親同士で情報交換を行う」「保護者対象の就職セミナーに参加」などは「息子を持つ母親」の方が高い割合を示していて、(図3)直接的な支援よりも情報収集など間接的な支援を行うことが多いようです。「息子を持つ母親」は、異性ということもあり大学生になれば一緒に行動ということはあまりありません。息子が嫌がるとわかっているからです。 子供が娘でも息子でも心配なことには変わりはないので、息子とは一定距離を保ちつつ就職活動について支援をしているようです。情報を収集し、我が子が就職活動のノウハウやスケジュールなどの部分で大きくはみ出していなければ直接的なアクションは起こさず見守り行動を続けます。それが、息子の自立を促す、母と息子のよき距離感であるのでしょう。母と娘の場合は、同性として通じ合うことも多く、母親の人生がひとつのモデルケースとなることから、直接的なやりとりや支援があっても良好な関係が保たれるのではないでしょうか。
子供が内定を獲得するまでは、売り手市場と言われる就職活動であったとしても、親はその環境を厳しいと感じていました。(図4)晴れて内定を獲得した後、子供の晴れ舞台を見たいと思うのかについて「子供の入社式や内定式に同席が可能だった場合、出席したいと思いますか」と質問したところ、「出席したい(出席したい+どちらかというと出席したい)」という保護者は、全体で19.5%。「娘を持つ母親」でさえも「出席したい」との回答は25.0%です。「息子を持つ母親」は17.3%で、息子を持つ父親(19.5%)、娘を持つ父親(18.4%)よりも少ない結果となりました。(図5) 「出席したい」と回答した母親の、「子供の就職活動にどの程度関心」があるかという質問への回答をみると、母親全体比+10.0ptの94.9%が「(高い+関心)関心がある」という回答をしており、さらに「就職活動の相談を受ける」も76.2%(母親全体比+11.1pt)、「進捗状況を都度聞く」も77.9%(母親全体比+5.0pt)と、入社式や内定式に参加したいと考える母親は、就職活動中の子供への関わり行動や支援も非常に多かったといえます。
上記の結果は多くの保護者が子供が内定を獲得することで一安心し心配から開放され、後のことは子供自身の問題と考えているからなのでしょうか。もしくは社会人として子供の自立への一歩であるわけですから、親が付き添うのもどうかと考えた結果なのかもしれません。このあたりは、逆に学生に、「親が入社式や内定式に参加することをどう思うか」を今後直接調査してみたいと思います。 筆者が就職活動をしていたのは、バブルの時期。今回の調査にご協力をいただいた保護者の方々と同じ世代です。あの頃、自分の両親に就職活動について相談していたでしょうか。両親も進捗などを聞いてきただろうかと当時を思い起こすと「否」。両親には内定後に事後報告でした。保護者の就職活動についての関わり方は、景気や時代などの環境や親子関係の変化などによって変わってくるのかもしれません。今回の調査で、他にも自宅・自宅外、専業主婦と働く母。働く母でも正規・非正規・パートアルバイトなどの雇用環境によって回答に違いがありました。機会があればまたご紹介したいと思います。
- 人材採用・育成 更新日:2017/07/06
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