魅力的な人材から内定承諾を得るために人事が取り組むべき「CX(候補者体験)」とは
「この会社に入社して良かった」と社員一人ひとりが感じてくれる会社作りがしたい。人事に携わっている方であれば、そんな志をお持ちの方は多いのではないでしょうか? 採用CX(候補者体験)とは、応募者が会社を認知してから選考を終えるまでのあらゆる体験のことを指します。その体験を通じて、入社するかしないかに関係なく「この会社と出会ってよかった。意味があった」「この会社の選考を受けてみて良かった」「他の人もこの会社の選考受けてみたらいいのに」と思える応募者を増やすことが目的です。
CX(候補者体験)を意識して、応募者にも会社のファンになってもらうことで、会社の人気が高まったり、質の良い人材が集まりやすくなったり、またクロージング力も底上げされたりと、採用力の向上が期待されます。
例えば、皆さんが自社で行っている選考では、10人中何人の応募者が自社のファンになってくれているでしょうか? CX(候補者体験)の対象には、まだ応募に至っていない潜在層も含まれますし、皆さんが選考で見送りと判断した人材もターゲットに入ります。「過去、現在、未来と、選考プロセスに関わる全ての人が、自社のファンになってくれる選考ができているかどうか」という点が、ひとつの指標になるでしょう。
応募者が企業を認知するときの手段は、大きく分けるとオンラインかオフラインの2つです。オンラインのタッチポイントは、例えば自社メディア・SNS・WEB広告などがあります。オフラインは、自社で行うセミナーやイベント(採用向け・事業向け)、他社が行うセミナーやイベント、人材紹介企業への会社説明活動などが当てはまります。
オンラインのほうが手段の数としては多くなりますが、オフラインは人を介して認知が行われるので、一つひとつの影響度は大きくなる傾向があります。バランスをみて対策を検討していきましょう。
認知フェーズでは、「すぐに転職したい」と考えている転職顕在層だけでなく、「良い会社や求人があれば転職を検討する」と考えている転職潜在層にもアプローチを行っていきます。
見極めフェーズのタッチポイントは、選考中のコミュニケーションに尽きます。募集をかけているポジションに応じたペルソナを設定していると思いますので、そのペルソナに沿って見極めを行ってください。ここで忘れてはいけないのは、見極めを行った結果「NG」と判断した応募者であっても“この会社の選考を受けて良かった”と思ってもらえるように意識することです。
面接中に応募者を見送りにしようと決断した際、採用担当としては「早く面談を終わらせたい」「期待していたのに、残念だったな」などと考えてしまうこともあると思いますが、CX(候補者体験)を意識して頂ければと思います。選考中のコミュニケーションにおけるCX(候補者体験)の具体例は後程ご紹介します。
選考のフェーズでは、「面接に来た応募者に飲み物を出す」、「清潔でいい香りのするオフィスでおもてなしをする」など、職場環境に関するタッチポイントはイメージしやすいでしょう。では、社員の印象というタッチポイントをCX(候補者体験)として考えてみるとどうなるでしょうか。
アイスブレイクや質問力・回答力といった面接官の能力面については、その能力を高めるための努力を面接官自身が行う必要があります。特に人事以外の社員が面接に入る場合は注意が必要です。CX(候補者体験)の意識が薄い面接官だと、見極めのために必要な情報が手に入れば、「はい、もういいですよ(こちらが知りたい情報は聞いたから、もう終わらせよう)」と選考を終了してしまいがちになります。応募者からすれば「いつ選考結果が来るのかもよくわからない」という状態のまま、面接が終わってしまうこともあるかもしれません。
このように、面接の終わらせ方や次選考へのつなぎ方などが、雑になっていないでしょうか? 選考フェーズでは、採用担当者だけでなく面接官となる人全員が候補者目線に立ち、CX(候補者体験)を意識する必要があります。面接官となる人全てに対して、目的や具体的な手法について共有していきましょう。
クロージングの段階で最も重要なのが“特別感”です。企業によっては、内定通知と同時にプレゼントやケーキを用意するところもあるようですが、これも特別感を演出する手法のひとつです。そのほかにも、若い採用担当者が即日内定を出す際に、一度面接から離席し、あえて応募者にとっての待ち時間を設けたあとに「上司から許可が出た!」と言って部屋に入り、内定提示をするという手法もあると聞きます。
その応募者に対して、「内定が特別なものである」ということを伝えることが重要になってきます。もちろん、サプライズ感のある演出でなくても、内定までのスピードが速いというだけで応募者は嬉しいものです。即戦力への内定の出し方・未経験でも優秀な人材への内定の出し方など、ステージに応じた内定提示方法を検討してみてください。
入社前には、クロージングフェーズで払拭した不安が再発している可能性があります。そのため、不安や疑問がないかどうかを再確認する意味でも、連絡を事前にとっていただきたいと思います。特にクロージングに苦労した応募者に対しては、こまめに連絡を取るようにしましょう。
歓迎の伝え方や、入社後のスケジュールを事前に伝えておくことも効果的です。入社後のスケジュールについては、当日・一週間・一か月程度の目安でおおよその流れを説明します。研修内容としては、企業文化や事業内容の説明などを中心に、社員の個性について紹介するのも良いかもしれません。フォロー体制はオンボーディングを意識し、メンター制度を取り入れたり、ランチミーティングや1on1などでコミュニケーションの接点を多く持ったりするよう努めましょう。
今回はCX(候補者体験)のタッチポイントや具体例についてお伝えしてきました。 採用選考の過程には多くのタッチポイントが存在するため、優先順位を明確にして取り組む必要があります。応募者の「あったらいいな」という気持ちに応えることや、他社との差別化を図ることも大事ですが、それよりも重要なポイントが疎かになってしまうと「最悪な企業だった。受けなければよかった」という印象を与えてしまい、口コミによって悪いイメージが広まってしまう恐れもあります。
ここで言う重要なポイントとは、「スピード」や「時間」です。「応募した後に1週間も連絡がない」、「面接後になかなか連絡が来ない」、「内定をもらうまでに1か月も要した」、「面接に来たのに面接官がなかなか来なくて、もう15分も待っている」など、せっかく応募してもらったにもかかわらず、こちらの都合で応募者の時間をロスさせてしまうと、ファンになってもらえないどころか、悪い印象を持たれる可能性が高いです。買い手市場が進む可能性がある現状だからこそ、就職活動を真剣に行う応募者一人ひとりに対して、真摯に向き合える企業かどうかが問われてきます。
これから応募者が増加し人事にとって対応するだけでも大変な状況が続くと思われますが、数年後売り手市場に転換した際にどんな企業文化やブランドを作り上げておけるかが勝負になるでしょう。今のうちに数年後を見越して、採用力を高める種まきを行ってみてはいかがでしょうか。
- 人材採用・育成 更新日:2020/08/12
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