中小企業採用担当が、最初に意識すべき、たった2つの心得(前編)
この事例の失敗はどこにあったのか、わかりますでしょうか。Aさんの昇格が決定したタイミングで求人を見直すべきだったのでしょうか。実はそうではありません。
社長の考えていた『責任者』とはどういう人物だったのか、しっかりと採用担当が把握できていなかったことが一番の問題点です。『責任者』とか『マネジメント』といった言葉は日常的に使いがちですが、組織の課題によって求める人物像は変わります。
Aさんは、後輩の面倒見がよく、気さくで人当たりの良い人柄で、対人能力に優れた人物でした。一方で、几帳面さが足らず、業務進捗管理やルールを順守するといった部分が弱いところがありました。コミュニケーション能力に長けているAさんが右腕についている状況であれば、Aさんが苦手とする管理能力がある方を責任者に据えれば組織としては回るでしょう。BさんはAさんとは全く逆のタイプでしたので、Bさんが上司として入る場合には適切だったかもしれません。
これに対して、Aさん昇格後の場合は状況が変わります。
AさんとBさんの能力の補完関係はそのままにはなりますが、責任者経験がある人を単純に採用してしまうと、役職を重視するがあまり役職者として入社できないことにストレスを感じてしまいがちです。重要な視点として、新任管理者のAさんをしっかりとサポートできる謙虚な人物かどうか。という見極めが重要になったのです。
では、どうすれば適切な『求める人物像』を押さえ続けることができるでしょうか。
それは、社長以下経営陣とのコミュニケーションを密に取り、会社の考えを深く理解することにあります。 Aさんはなぜ昇格することになったのでしょう。単純にいつ補充できるかわからない責任者を待つ余裕がなかったからなのか、それとも能力開発の一環として思い切って抜擢したからなのか。
仮に前者のような状況であれば、転職エージェントを使うなど、採用コストをかけてでも優秀な人材をすぐに迎える必要があったかもしれません。後者であれば、Aさんには今後どういう成長を期待していて、そのためにはどういう右腕が必要かを知る必要があります。
社長とのコミュニケーションが取れていない採用担当にとっては、Aさんが昇格したタイミングで振り回されたと感じることもあるかもしれません。でも、しっかりとコミュニケーションが取れていれば柔軟に対処が可能です。
採用業務は作業になってはいけません。経営において採用は最も重要な意思決定ですので、積極的に社長とのコミュニケーションを取ることを意識してください。
今回は応募者が集まりましたが、市場や競合といった外部環境の変化が激しいIT業界において、毎回同じように応募者が集まる保証はありません。会社説明会といった入口の段階で辞退が一定数ある場合の理由は、求人原稿の内容が実態とかけ離れているか、社内の印象が応募者のイメージと違ったかのどちらかです。
応募者は来社するまでに求人内容は勿論のこと、ホームページやニュースの記事を読み、会社で働く人をイメージします。A社に応募しようとする人は明るくエネルギッシュな社風で一緒に成長したいと考えます。
ところが、会社説明会は一方的に話をじっと聞いているだけで緊張感がある。プレゼンターの採用担当者も下を向いて原稿を読んでいて距離感がある。このような状況では、事前にイメージしていた社風とギャップを感じてしまいます。
では、どうすれば改善できるでしょうか。
まずはすぐにできるテクニックとしては、スクール形式の席配置を座談会形式に変えて車座にすると応募者との距離感が近づきます。可能であればイメージを伝えやすくするために動画を流す、先輩社員を同席させるなどの工夫も効果的です。プレゼンの準備をすればするほど本番で過度な緊張をしてしまう採用担当者は多いので注意が必要です。採用担当者が緊張していると緊張感のある会社説明会になってしまい逆効果です。
そして、最も改善すべき点は、原稿を読み上げるのではなく、採用担当者が自分の言葉で素直に会社をアピールすることです。日本語文法が多少おかしくとも、本気で伝えようとすると言葉以上の感情がにじみ出てくるものです。パワーポイント資料がしっかりしすぎているとスライドの文字に目を奪われてしまいます。A社のようなベンチャー企業であれば、人をアピールしたいところなので、資料は最低限でよく、プレゼンターを見てもらえるようにしましょう。
採用担当者は思っている以上に見られています。会社のあるべき人物像を採用するためには、採用担当自身があるべき人物像である必要があります。 明るく元気でフランクな企業イメージ通りの人が採用担当として出てきたら、「イメージ通りの会社だ!」と応募者が感じ、志望度はぐっと高まるでしょう。
会社の顔として採用担当が最も会社のあるべき人物像を体現していなければなりません。応募者にとって一般社員も部長も関係がなく、いかにそこで働いている人が魅力的かを判断します。採用担当者は応募者にとって会社全体を把握する窓口なのです。
採用人数をKPIとしてやみくもに採用活動をすることを一度止めて、自分自身が会社のあるべき人物像になっているか向き合ってみましょう。社長の想いを最も理解し、最もあるべき人物であろうとすれば、自然と視座が高まります。
面接官は応募者が本心で話しているかを確認しますが、同じように応募者も貴方を見ています。 「貴方のような方と仕事したいと思ったので御社を志望しました」と言ってもらえる採用担当者になってください。
- 人材採用・育成 更新日:2019/12/10
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