「座右の銘」に見る就活を乗り切るための学生の知恵
8月末に実施した「マイナビ学生就職モニター調査 8月の活動状況」では、就職活動の振り返りの一環として「あなたの『就活中の座右の銘』を教えてください」という質問をしました。するとその答えには、就職活動を乗り切るための知恵が詰まっていました。ここでは多くの就活生が挙げたものを中心に紹介していきたいと思います。就活生たちがどのような思いを抱いて就職活動をしていたのか、その一端を垣間見ることができるでしょう。
「座右の銘」を日々の教訓として、常に目に付くところに掲げておくなら、「四文字熟語」は最適サイズです。学校で習って深い意味を知っているものもあるし、筆で書いて壁に貼れば道場のような雰囲気で見栄えがします。そんな「四文字熟語」を座右の銘として挙げた就活生は148名いました。
順位 | 座右の銘:四文字熟語 | 票数 |
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1位 | |
28票 |
2位 | |
11票 |
3位 | |
9票 |
4位 | |
8票 |
5位 | |
7票 |
座右の銘として挙がった四文字熟語で最も多かったのは「一期一会」、茶道の心得から出た言葉です。企業の採用担当者やセミナー会場で話した先輩社員、インターンシップやグループディスカッションで一緒だった同じ立場の就活生など、就職活動は多くの人との「出会い」であふれています。その一つ一つを一生に一度の貴重な出会いと考えて大切にすることが、就職活動そのものや、さらにその後の社会人生活をより良くすることにつながっていくということです。 インターンシップや面接で経験を積み重ね、内々定獲得に向かって進歩していく様子を表す「日進月歩」。面接での受け答えや、エントリーシートの記入を「一生懸命」やった就活生もいます。目的の達成を目指して自らに厳しい試練を課す「臥薪嘗胆」(中国の史書「十八史略」より)は、「お祈り」された悔しさを糧にさらに努力して、内々定獲得にまい進する様子でしょうか。情報の洪水に巻き込まれず、当初の第一志望を貫く就活生は「初志貫徹」を挙げました。
就職活動は、学生生活から一歩踏み出して、社会に出ていく過程です。現在の形式のような就職活動ではなかった時代でも、若者にとって社会に出ていくことは一つの大きな壁を乗り越える機会でした。昔から語り継がれる「故事」や「ことわざ」の中には、この壁を乗り越えた先人たちの知恵が詰まっています。「故事・ことわざ」を座右の銘に挙げた就活生は187名いました(「四文字熟語」の「故事・ことわざ」は除く)。
順位 | 座右の銘:故事・ことわざ | 票数 |
---|---|---|
1位 | 41票 | |
2位 | 七転び八起き | 13票 |
3位 | 継続は力なり | 12票 |
4位 | 11票 | |
5位 | 笑う門には福来たる | 10票 |
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も」は江戸時代後期の米沢藩主、上杉鷹山の言葉から。その気になって活動すれば、内々定獲得という目的は「成る」という、まさに就職活動を体現する座右の銘です。「為せば成る」だけの人や「成らぬは人の為さぬなりけり」まで書いた人なども合わせて、最も多い41名の就活生が挙げました。 何度選考に落ちても、また立ち上がって次にチャレンジする「七転び八起き」。エントリーシート対策や面接対策を日々積み重ね、内々定獲得につながる能力を身に付ける「継続は力なり」。面接に遅刻したが理由を正直に話して好印象を与えられたなど、不幸が幸に、幸が不幸につながることもあるから、それで一喜一憂するにはあたらないとする「人間万事塞翁が馬」(『准南子』より)。面接には笑顔で挑もうという「笑う門には福来たる」(いろはがるた(京都)の1つ)。就活生が挙げる「故事ことわざ」からは、就職活動の様々な場面が思い起こされます。
偉人の言葉や映画の主人公のセリフに進むべき道を見出した就活生もいます。中にはテレビ番組でインタビューされた一般の方の口から見事に的を射たフレーズが飛び出す場合もあるようです。ここでは「座右の銘」に挙がった、言い得て妙な「名言」について見ていきたいと思います。
意志のある所には道がある Where there's a will, there's a way. |
8票 |
こういう仕事がやりたいという確固としたイメージと、なんとしてもその仕事に就くんだという強固な意志があれば、自分が本当に望む仕事を得ることができる。リンカーン(アメリカ合衆国第16代大統領)の言葉を挙げた就活生は、強い意志を持って就職活動に挑みました。
死ぬこと以外かすり傷 | 8票 |
明日は明日の風が吹く | 6票 |
すごくあこがれていた企業の一次面接であっけなく落ちたり、採用担当者の辛口の言葉に心を傷つけられたりしても、死ぬわけじゃないんだから、きっと回復する。明日になれば、また新たな気持ちで次の企業の面接に向かえる。立ち直りの早さは就職活動において有力な武器になります。前者はテレビのバラエティ番組の街頭インタビューがきっかけでツイッターなどで話題になった言葉。
明日やろうは馬鹿野郎 | 5票 |
今日からエントリーの受付だけど気が進まないから明日やろう。明日面接だけど今から準備すると気が滅入るから明朝やろう。そんなことでは馬鹿を見る。思い立ったが吉日、「いつやるか?今でしょ。」(1票)です。ドラマ「プロポーズ大作戦」の台詞より。
やらずに後悔よりやって後悔 It's better to regret what you have done than what you haven't. |
9票 |
見逃し三振より空振り三振 | 2票 |
悪い印象を与えるかもしれないから第一志望の企業のインターンシップに参加しないほうがいい、競争率が高いから志望業界を変えて活動しよう、質問したいけど見当違いだと思われるかもしれないからやめておこう。思い切ってやって失敗し「ああ、やっちまった!」と後悔するのが怖いと思う場面は、就職活動中にもよくあるようです。でも、あとになって「あのときやっておけばよかった!」と後悔するより、やって後悔する方が良い、というのがこのフレーズ。野球で言うと「バットを振らなきゃヒットはないんだから、思い切って振っていけ」となります。「あのときちゃんと質問すればよかった」「ダメ元で面接を受けておけばよかった」と後悔しないよう、ここぞという場面では、勇気を振り絞って一歩踏み出そう。といったところで、最後は将棋の羽生善治竜王の言葉で締めたいと思います。
運命は勇者に微笑む | 2票 |
▶やらずに後悔よりやって後悔:多くの人が同様の言葉を残しており、特定できず。
▶It's better to regret what you have done than what you haven't.:英国の広告クリエイター、Paul Ardenの著書より。
▶見逃し三振より空振り三振:さまざまな野球の指導者の方の言葉として紹介されている。
●参考文献
『三省堂国語辞典』第六版 三省堂
『新明解故事ことわざ辞典』第二版 三省堂編修所 編
『用例でわかることわざ辞典』改訂第2版 学研辞典編集部 編
- 人材採用・育成 更新日:2018/09/26
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