「忍耐力」~苦しい局面に耐え、成功の芽を育てる能力~|ビジネススキルの見極め方
最近ベストセラーとなった「やり抜く力 GRIT」(ダイヤモンド社)では、成功するために大切なのは、才能よりも「情熱」と「粘り強さ」(≒「忍耐力」)による「やり抜く力」であるという主張がなされていました。
この主張は、多くのビジネスマンが賛同するところでしょう。仕事をしていれば、つらい局面や苦しい局面はいくらでも訪れます。そんなとき、「やり抜く力」がなければ、その困難を乗り越えて結果を残すことは不可能です。
にもかかわらず、「近ごろの若者はこらえ性がない」と、忍耐力の低下を嘆く声が増えてきました。もし本当であれば、これは若者たちの「やり抜く力」が減退しているということ。由々しき事態です。
しかし実際のところは、そうではないと私は考えます。なぜなら、新卒3年目までの離職率はここ30年ぐらいずっと3割程度で変化はなく、最近になってこらえ性がなくなってきているとは言い切れないからです。
では、なぜ「近ごろの若者は~」と言われてしまうのでしょうか。この原因は、「こらえ性」≒「忍耐力」という言葉の意味合いが過去と現在で変化しているためだと思います。
「○○力」の詳細について解説する本連載。今回はこの「忍耐力」について考えてみたいと思います。
くり返しに耐える力を持つ人には、大きく分けて3つのパターンがあります。
1つ目は、「意味づけ力のある人」です。これは、日々の行動は単純なくり返しであっても、その先に得られる結果が何かを考えて、自分のやっていることに意味づけをし、モチベーションを維持する力のことです。
かつて、アメリカのケネディ大統領がNASAの門番の方に、「あなたは何をしているのか?」と尋ねたところ、「私は人類を月に送る手伝いをしている」と答えたそうです。これは、意味づけ力を持つ人の回答パターンとして非常にわかりやすい例でしょう。
2つ目は、「フロー状態に入れる人」です。これは「時間の感覚がなくなるほど、その行為に没頭してしまう状態」のことを意味し、この状態になると高い集中力やそれに伴う高いパフォーマンスが生まれるとされています。
この状態が生まれるには、いくつか条件があります。「適切な難易度のタスクであること」「自分でコントロールできる感覚があること」「やったことに対するフィードバックがあること」「注意を妨げられないように周囲の雑音などからシャットアウトされていること」などです。
逆に言えば、「こうした状態となるように、タスクや環境を適切な状態に調整できるスキル」を身につけている人は、くり返しの作業に没頭できるのです。
3つ目は、「曖昧耐性の低い人」です。曖昧耐性とは文字通り、「曖昧なことに耐える力」を指します。
それが低い人は、「楽観」よりも「慎重」、「変化」よりも「秩序」、「多様性」よりも「一様性」、「未知」よりも「既知」を好むという特徴があります。そうした人は、「くり返しが心地良い」というケースが多いのです。
「失敗に耐える力」を持った人にも、いくつかパターンがあります。
1つ目は、「ベーシックトラスト(世界に対する基本的信頼感)」を持っている人です。ベーシックトラストとは、「努力は報われる」「未来は明るい」「人は信じるに足るものである」など、世界に対してポジティブな見方を持ち、他人を信頼できる能力のことです。
ベーシックトラストのある人は、成功率が限りなく低い新規事業の立ち上げや新商品の開発など、たくさん失敗をする仕事にも耐えることができます。「いつかはきっとうまくいく」と希望を失わないからです。
また、先ほども出てきた「意味づけ力」のある人も、失敗に耐える力を持っています。かつてエジソンが「私は失敗したことがない。1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ」と言ったように、失敗に対して適切な意味づけができれば、ショックに打ちひしがれてしまうことはないからです。
- 人材採用・育成 更新日:2017/11/16
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