採用の法律知識|入社後に経歴詐称が発覚!人事が取るべき具体的な対応策とは?
経歴詐称が発覚した際の対応として、真っ先に思い浮かべるのが「解雇」だという人は多いのではないでしょうか。いかにも妥当な判断のように思えるかもしれませんが、経歴詐称は必ずしも適当な解雇理由として認められるとは限りません。
労働に関する調査研究や情報の収集・整理を行う独立行政法人労働政策研究・研修機構では、経歴詐称が解雇理由となるかどうかについて、以下のような文章を掲載しています。
- 経歴詐称に対する懲戒解雇が有効かどうかの判断は、真実を告知していたならば採用しなかったであろう重大な経歴の詐称であったかどうかを基準とする。
- 学歴や職歴の詐称は、労働力の適正な配置を誤らせるような場合には、懲戒解雇が有効となる。
※【服務規律・懲戒制度等】経歴詐称 | 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 より一部を抜粋
具体的にどういった詐称内容であれば解雇理由となるかは、上記の基準を踏まえて個別に判断されることになります。
過去には税理士の資格を保有していることや、卒業大学を詐称して雇用されたものの、業務遂行に重大な支障を与えたことにはならないとして解雇が無効と判断された裁判事例もあります(中部共石油送事件)。保有資格や学歴の詐称は、いかにも重大な問題のように思えるかもしれませんが、それでも解雇理由となるかどうかは、業務内容や詐称内容を見ながら個別に判断されるもの。採用担当者は、詐称があったからといって必ずしも解雇にはつながらないということを覚えておいたほうがいいでしょう。
経歴詐称内容は懲戒解雇処分の理由に該当しないが、それでも解雇したい場合には普通解雇として対応する必要があります。また、たとえ経歴詐称を理由とした懲戒解雇処分であっても、入社14日以降の解雇は労働基準法上の解雇予告手続きが必要です。
■解雇予告が必要になる期間
- 試用期間中の者 14 日以降
- 4ヶ月以内の季節労働者 契約期間以降
- 契約期間が2ヶ月月以内の者 契約期間以降
- 日雇労働者 1ヶ月以降
経歴詐称が発覚したからといって簡単に従業員を解雇することはできません。もちろん、重大な詐称であればやむを得ず解雇しなければならない場合もありますが、詐称の内容が業務に大きな影響を与えず、企業側としても許容できる範囲内である場合は、そのまま雇用を続けるという選択肢もあります。
ただ、雇用を続ける場合、経歴を詐称した本人のためにも、無条件で見逃すといった対応を取らないことは重要です。まずは本人と話し合い、経歴詐称について反省することを条件に、解雇を猶予しチャンスを与えるといった対応が適切でしょう。
経歴を詐称した社員がいれば、即座に解雇し新規で採用活動を行うのは対応のひとつかもしれませんが、それにはコストや時間がかかってしまいます。詐称の内容や本人の反省度合いと、新規で採用活動を行うために要するコストや時間などを天秤にかけ、個別に判断していくのが現実的な対応策であるといえるかもしれません。
- 人材採用・育成 更新日:2017/06/15
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