数カ月の苦労が・・・内定辞退による絶望を2度と経験しないための基本のキ
先日、御社より内定をいただきましたが、一身上の事情により、
恐縮ではありますが、内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。
内定辞退メールを開いたときの、あの絶望感。人事の仕事に携わるあなたは覚えているでしょう。書類選考、面接、内定後のやり取り……。全てにかけたコストが水の泡になるのは、何度経験しても慣れないものです。
内定辞退を防ぐには、人事担当者は社員の持つマインドや仕事のやりがいといった自社の魅力を、求職者に伝えてあげる必要があります。しかし、あなたは採用プロセスにおいて、本当にそれをきちんと出来ていたでしょうか?
実は、内定辞退の主たる原因は、「内定者と企業とのコミュニケーションの齟齬」にあります。だからこそ、内定辞退を防止するには、この齟齬を取り除くことが第一歩。
以下のチェックリストに1つでも当てはまったら、そのコミュニケーションはNGです!
まず、採用担当者として意識してほしいこと。それは、採用面接は「選考の場」のみならず「伝達の場」でもあるということです。例えば、勤務形態や勤務地、報酬、担当業務などの細かい条件面は、できるだけ詳しく現実に沿った情報を伝えることが重要になります。
既にその企業で働いているあなたは「当たり前」だと思っている情報も、求人広告の内容しか知らない求職者にはほぼ伝わっていないと意識しておくべきです。「営業の場合は転勤もある」「繁忙期には残業が多くなる」といったリアルな話をきちんとしておくことで、求職者は仕事内容をぐっと理解しやすくなりますし、入社後のトラブルを未然に防ぐことにもなります。
また、その際に注意したいのが、「転勤もあるけど大丈夫ですか?」「ノルマはないですが、給与は成果に多少左右されることをご了承いただけますか?」といった、はいorいいえで回答できる聞き方をなるべくしないこと。採用側としては誠実に事実を伝え、それでもいいか確認しているだけなのですが、採用してほしいと思っている求職者は多少難しい条件でも「大丈夫です!」と答えてしまうからです。
ここで「大丈夫」と答えた求職者は、思いがけず自分を追いこむことになり、内定が決まってから急に不安がこみ上げてきます。その結果、交渉や相談の余地がある内容でも、「今さら言い出せないから……」という理由で内定を辞退してしまうのです。採用担当者は確認や質問のつもりでも、求職者にとっては“尋問”のように感じるケースもあることを心に留めておきましょう。
内定承諾書の授与や内定式、内定後の面談・研修など、内定後の接触頻度を上げることで自社に来てもらおうとする企業は多いようです。しかし、こうした「接点を増やし、繋ぎ止める」活動は内定者への精神的負担になる場合もあり、内定辞退防止の決め手とまでは言えません。
では、どういった方針を採ればいいのでしょうか?実は、内定辞退防止のために企業側が努力すべきポイントは、採用活動を通じて企業と求職者との間に「帰属意識=エンゲージメント」を芽生えさせることです。エンゲージメントとは、「関与すること」「没頭すること」「約束すること」という意味を持つ言葉。かつてよく用いられていた「忠誠心=ロイヤリティ」という言葉とは違い、「雇用者と従業員が対等な立場で、ともに成長できるよう約束を交わす」というニュアンスを含んでいます。
エンゲージメントを強固なものにするために有効なのは、先ほど話した内定式や内定後の面談・研修などを、接触頻度を増やすためではなく、「就職後に適切なポジションとタスクを与えられて仕事をする自分をイメージしてもらうため」に実施することです。未来の仕事に触れる体験は、内定者の仕事への責任感やモチベーションを高めることに繋がります。
「辞退されないように」「早く仕事を覚えさせるために」という企業側の視点ではなく、「仕事に対する思いを明確にするために」「新しい仕事に対する不安を取り除くために」という内定者側の視点に立つことで、内定式や内定後の面談・研修の内容やカリキュラム、接し方が変わってくるはずです。
エンゲージメントを高めるために採用担当者が面接ですべきことは、自分自身の業務内容や経験、やりがい、情熱を語ること。なぜなら、求職者、内定者が企業に良いイメージを持ち、その企業のファンになってくれるためには「いま働いている社員が楽しそうか、やりがいを持っているか」が大きく影響するからです。
思い出してみてください。あなたが買い物をするとき、食事をするときに参考にするのは“口コミ”や“レビュー”ではないでしょうか。実は就職先も同じなのです。企業から提供される上っ面の綺麗な情報よりも、中で仕事をする人のリアルな肉声の方が、より説得力を持った情報になります。
採用活動中の求職者は、採用担当者との面談を通じてその会社を知ることになります。たとえ面談中の短い時間でも、あなた自身のポジティブな情報を伝えることができれば、それが求職者にとって「企業そのもののポジティブな印象」に繋がるのです。
内定後に職場を体験する機会を設けたほうがいいのも、働いている人たちを見て「この会社で働いてみたい」というモチベーションが生まれるからでもあります。結局は、働いている社員が活気を持っていることが何よりも大事なのです。
内定辞退を防止する方法というと、内定を出してからの施策のように考えがち。ですが実は、内定辞退の可能性の芽は募集や面談などの段階で既に顔を出しています。
採用活動は、採用側から見れば「会社に役立つ戦力や優秀な人材を見つけるためのイベント」かもしれません。しかし、求職者側にとっては「自分の人生の役に立つ会社。働きたいと思える会社を見つけるためのイベント」です。採用側、求職者側どちらの視点が欠けていても、内定辞退のリスクは高まります。
内定を与えてから慌てて対応するのではなく、計画的にエンゲージメントを高め、「絶対にこの会社に入りたい!」と思ってもらえるような採用活動をすることが重要。そうすれば、採用側、求職者側の両方にとって納得のいく採用活動を実現できます。
- 人材採用・育成 更新日:2017/03/07
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