新人の採用担当者が最初に培うべき3つの力
こんにちは。村西と申します。今回は、新人の採用担当者が最初に培うべき力をまとめました。
まず前提として、採用担当者は、「採用活動とは何か」、「自身の役割が何か」を正しく認識する必要があります。事業者目線で採用活動を説明すると、将来の企業価値を向上させるために、募集コストを投じて「経営資源を獲得」することです。
一方、応募者目線ではどうでしょう。応募者は、自身の時間という貴重な資源を、入社した企業で消費します。応募者目線で説明すると、採用活動とはキャリアの構築や生きがいなど、自分自身の人生を充実させるために、働く時間を投じて、「将来の職務技術を獲得」することなのです。
事業者側と応募者側では、採用に求める意味合いはそれぞれ異なります。採用担当者はまず、両者が共感する接点を見出し、相互に理解を深める状況を作る必要があります。そして、相思相愛の状態へ導き、双方のモチベーションを極大化することが、採用担当者の大切な役割です。
知名度が高くない企業の場合、応募者に自社を発見させ、その存在を知ってもらうことから全ては始まります。その際、応募者が検索したくなるキーワードを保有しているかどうかで発見率も変わってきます。働く場所としての企業の魅力は、採用する側が決めるものではなく、応募者、つまり働き手が感じるものです。そして自分にとっての魅力が十分に分かる企業にのみ応募しますが、それは企業規模や給料などの物理的なものだけとは限りません。
例えば、「まだ着手出来ていない課題や商品などを手掛け、市場に浸透させることが求められる」など、組織や顧客からの要望や仕事のミッション、「限られた顧客や関係者と深く関わることが求められる」などは、心理的な志向性であり、人それぞれの受け取り方が違う魅力ポイントだと言えます。
企業が考えるべき魅力要因は、全ての人にとって魅力に感じる内容でなくてもかまいません。自社で働いて欲しい期待人材を明確にして、その人たちが志向すること、魅力に感じることをできるだけ具体的に、事実情報をもとに語っていくこと。すなわち、応募者が体験したくなるような価値やベネフィット(利益)を、客観性のある内容で発信することがとても大切なのです。
採用担当者としての客観性を養うためには、応募者の主観を正しく認識する必要があります。応募者にとって客観的であるには、相手に「会社側の主観の押し付け」と感じさせないこと。
とはいえ客観性が高すぎても単なる事実の伝言になってしまいます。それでは他社と差別化されないうえ、応募者に自社の特徴を印象付けることへはつながりません。そんな時は一度、事実を抽象化し、自分なりの言葉で意味付けをしてから、再び具体化して表現するとよいでしょう。例えば次のようなイメージです。
次に「選ぶ」についてですが、学歴や保有資格、語学力や職務経歴などの必要要件を、新人へ伝えることは簡単です。しかし、印象管理が出きているか、応答に論理性を感じられるかなど、「先輩の面接を見て覚えろ」と言うだけでは、自信をもって見極める選球眼はなかなか身に付きません。
自社にフィットする人材を見極めるには、応募者が「できること(能力)」と「やりたいこと(志向性)」の2点を確認する必要があります。「できること」の確認は、言い換えると、自社の成果につながる能力を、応募者の思考と行動事実から把握することです。それにはまず、
- 募集職種において、求める人材に期待する成果や、成果につながる能力を具体的にどう定義したか。
- ①をどのようなプロセスで導き出したか。
を、面接官自身が語れることが大切ですが、そのためにはビジネスそのものへの理解が不可欠です。例えば営業職なら、
- 商品特性(有形or無形、産業財or消費財など)、顧客特性(法人or個人、特定業界or業界全般など)、競合特性(大手or中小、現在の競合or未来の競合など)による期待行動の違い
- 自社の事業全体のビジネスプロセスにおける、前後の機能との関係や動き方
を押さえ、期待する成果や必要能力、適合する性格や志向を明文化するとよいでしょう。
期待する成果の定義は、単なる定量的な数字目標ではありません。例えば営業職の面接で、
- 商品を売り出していくうえでの戦略特性から、自社商品の競争優位性や顧客への働きかけの訴求ポイントを見極める力を保有しているか
- 顧客が購買の意思決定をする際に大切にする要件と、自社製品が適合しない状況において、顧客に今までに見えていなかった視点や判断軸をどのように与えてきたか、その働きかけの技術が自分の中で汎用化されているか
また、「やりたいこと」とは、本人が最も重視している志向性や、具体的に得たいベネフィットを確認することです。前述の通り、応募者は働く時間を投じて「将来の職務技術」など、自分自身にとっての利益を求めています。当社が期待する「やるべきこと」とかけ離れていては、両者が不幸になります。
例えば中長期的に、市場価値が高い専門性を身につけ、スキルベースのキャリアを歩みたいと考える応募者が、時間をかけて顧客との関係性を高める職務にどこまでの喜びを感じるでしょうか。求める業務と本人の志向性が乖離していると感じた際は、応募者との「幸せな別れ」を意識し、応募者が進むべきキャリアの方向性に自ら気づくことができるような場にすることが大切です。
「選ぶ」ことは企業側だけでなく、応募者側も行っています。入社してほしい応募者との相互理解を深め、相思相愛の状態へ導くためにも、選択基準は明確にしておきたいところです。
「どこで働くかより、誰と働くか」とよく言われますが、人の魅力は、意思決定において大きな誘因材料となります。採用担当者が一緒に働くわけでなくとも、その対応が応募者に強い影響を与えることに変わりはありません。では、口説く際に何を押さえておけばよいのでしょうか。
応募者にとって、転職活動は人生の転機となる大きな出来事です。誰もが、人から強要されることなく、自分で納得して意思決定したいと思っています。そこで大切なことは、採用プロセスという短い期間で、いかに相手と関係性を築くことができるかです。関係性が弱い状態では、どれほどいい話をしたところで、与える影響の範囲は少ないでしょう。 関係性を築く力を身に付けるには、次の3点を磨く必要があります。
人間性と返報性を磨くには、他者と関わり、評価や賞賛、フィードバックを受ける機会を多数つくることです。そうすることにより、自分の優れている点を実感したり、行動に手ごたえを感じたりすることができます。
また、専門性を磨くには、特定知識のインプット以前に、組織や周囲から期待される役割を認識するセンスが必要です。仮に深い知識を有していたとしても、組織で期待される貢献の方向性と乖離していると、周囲と信頼関係は築けませんし、貢献した実感も、成長機会を得ることもできないでしょう。
組織と個人はお互いに影響を受け、連携しあう関係です。組織での相手の立場を理解したうえで、彼らにどう映っているかを常に意識し、共感度を高めていくことが、相手に対する魅力を決定付けます。
採用担当者には、応募者を感化する力が求められます。応募者にとって採用担当者は、単なる選考官ではありません。応募者のキャリアについて共に考え、相互理解を深められる「素敵で頼りになる存在」を目指しましょう。
- 人材採用・育成 更新日:2020/09/23
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