Talent Without Borders:グローバルな採用活動を考える
戦略を思い描くことは簡単ではありませんが、ほんとうに難しいのはそれを実行することです。戦略を立てるときには「どのように」目標を達成するかということに重点を置かねばなりません。そして戦略のなかには、誰が、どこで、いつ、どのように採用を行うかが含まれているべきです。
さらに、グローバルな採用戦略では、文化的価値観の違い、国による管理体制の違い、法律的な違いを考慮する必要があります。グローバルな採用活動では、才能を個人の性質と考えずに、企業の資産として考えます。
その発想の転換ができれば、採用戦略が、金融戦略やブランド戦略と同じように重要なものであると気づくでしょう。
才能を企業の資産として考えるために、次のようなフレームワークの例が紹介されています。
測定方法
- 最も情報の多い尺度を選ぶ(できれば間隔尺度か比例尺度がよい)。
- 測定しようとしているもののコンセプトに合っているもの。
- どの言語、どの文化でも使えるもの。
信頼性
次のような形式のなかから、適するものを使って信頼性を確認。
- 各形式を使って信頼性を確認したときのスコアが、しきい値に達するかどうか
- 文化を越えて同じような信頼性を見込むことができるか
という点を確認してください。
再テスト法
期間を空けて同じテストを再度実施し、一回目と二回目のテスト結果を比較する方法。一回目と二回目の結果が一致すれば信頼性が高いということになりますが、一回目の記憶が二回目に影響があったり、期間を空けている間にその人の考えに変化があったりすると正確な結果が出ないという欠点があります。
内的整合性
ある性質や態度を測定するための、複数の質問に対する回答に相関性があれば、その質問には内的整合性があるということになります。
検者間信頼性
複数の検者の測定結果が、どれくらい一致するか比較します。
評価者内信頼性
1人の検者が測定を繰り返したときに値がどれくらい一致するかを見ます。
妥当性
次のような形式のなかから、適するものを使って妥当性を確認。
- 次のような形式のなかから、適するものを使って妥当性を確認。
- 言語や文化の違いが妥当性の根拠に影響していないか。
という点を確認してください。
基準関連妥当性
一連の質問に答えた結果を、関連のある別のテスト結果(外的基準)と比較したとき相関するかどうか。
内容的妥当性
質問内容に自分の調べたいことが含まれているかどうか。
構成概念妥当性
テストを全体的に見て、個々の因子の組み合わせが意図するものを測定できているかどうか。
客観性
- 目標と制約条件を決める。
- 主観的尺度の代わりに客観的尺度を使うことが適しているか考える。
- もし主観的尺度と客観的尺度の両方を使う場合、それらに十分な信頼性と妥当性があるか。
文化的等価
- ほかの言語でテストを用意する場合、その翻訳が専門家によるものかどうか。
- 必要な文化、国、言語に対応しているか、パイロットテストが済んでいるか。
- エラーが全て修正されているか。
才能を獲得したあとに起こる様々なことについて考えてみましょう。主に6つの人材管理の活動があります。
1.入社し職場に打ち解ける
候補者から従業員への移り変わり。最初の数か月間に、組織の価値観、文化、温度、戦略などを受け入れます。
2.昇進と社内移動
職場で空きのあるポジションに昇進という形で社員を配置することがあります。社内移動は、従業員が組織に慣れていることや、外部から人を雇うよりコストが低くパフォーマンスが上がりやすいことが利点ですが、変化が起きにくいといった欠点もあります。
3.サクセッションプラン
現在と未来の企業戦略に沿って、十分な人材のパイプラインを作っておくことを念頭に人材育成をします。ときには、現在空いているポジションのためではなく将来を見据えた採用も必要です。また、内部昇進と外部からの採用のバランスを考える必要があります。
4.発展・進化
従業員の才能を進化させるために長期的なアプローチをします。従業員の才能は、職務上の経験、ほかの社員との交流、研修などの場面で進化します。
5.エンゲージメント
従業員が組織や仕事に持っている熱意を向上させます。
6.雇用の継続
職場に留まる人の3つの特徴は、人や場所につながりがあること、企業や働く地域が合っていること、自分を捧げるものがあることです。例えば、家族がいる場所に暮らし、子供の学費のために収入を得たいという人は、その条件に合った仕事を辞めにくくなります。採用活動で候補者の条件を確認することや、人材と仕事のミスマッチによる退職、解雇などを減らすことで、長く雇用する努力をします。
採用活動や選考方法は国によって様々に違います。現地の方法を取り入れるにしても、世界共通のユニバーサルな方法で採用活動をするにしても、まず、その違いを理解したうえで戦略を立てることが重要です。そして、世界に点在する才能ある人材を、どこで発掘するか見極めることが勝因となります。
書籍情報:
Talent Without Borders: Global Talent Acquisition for Competitive Advantage
著者:Robert E. Ployhart / Jeff A. Weekley ほか
出版社:Oxford University Press (初版2018/4/2)
ISBN-10:0199746893
ISBN-13:978-0199746897
- 人材採用・育成 更新日:2020/09/10
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