働き方改革と併せて進めるべき「休み方改革」
つまり、従業員に与えられたそれぞれの有給休暇日数のうち、毎年「5日」分に関しては、従業員と協議・調整しながら会社側が「●月×日に有給休暇を取得してください」というように休暇期日を指定しなければならなくなるのです。
これにより、企業側は「年次有給休暇の計画的付与制度」を活用するなどして、全社員が5日間の有給取得を完了させなければならないため、社員一人ひとりがきちんと有給を取得しているか経過状況を正確に把握する必要があります。
今回の法制化は、違反すると「従業員1人あたり最大30万円の罰金」が課せられる場合があります。企業1社で1回30万円ではなく「違反者1人あたり30万円」なので、不十分な対応ではかなりの金額を支払わなければならないリスクが生じます。しかも、SNS等ネット社会が発達した昨今、違反すると罰金より怖いのが「訴訟」や「企業名公表」による社会的評価の大幅ダウンです。一旦ブラック企業として烙印を押された企業は、従業員からの信頼を損なうだけでなく、採用難や取引停止など、企業存続に関わるリスクを負うのです。
5日間の強制的な有給休暇取得は罰則を伴った法律のため、導入は必須。従業員への周知説明、社内の勤怠システム改修や計画的な有給消化対策など、法改正に伴って取り組まなければならない課題は多数あります。人事労務担当は対応に追われて多忙を極めるでしょう。
また、2019年4月1日からは大企業を中心として時間外労働の上限規制も厳しくなっています。具体的には、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する必要があります。(※中小企業は2020年4月1日から施行)
このように、一連の働き方改革関連法の施行により、「労働時間の短縮」を伴う「休み方改革」への取り組みは待ったなしとなっているのです。しかし、せっかくなのでこの法改正に対して単に受け身で対応するのではなく、一歩踏み込んで抜本的な「休み方改革」に着手する非常に大きなチャンスと捉えてみてはいかがでしょうか?ここでは、そのための4つのポイントを紹介します。
「休み方改革」を浸透させるためには「現場の休みづらさ」を解消させることが、施策を徹底させる上でポイントとなります。しかし、「休みづらさ」は人事制度だけの問題ではなく、評価制度や上司・所属部署への忖度なども影響している問題です。さらに、企業としては、休暇取得を促進しつつも生産性は維持・向上させなければなりません。つまり、休み方改革とは人事部門だけのミッションではなく、企業として解決すべき経営課題といえます。そのため、時には経営層が自ら先頭に立ち施策を実行する必要性もでてくることでしょう。
その一方で、人事担当者は、経営視点を持って業務に取り組む必要があります。「戦略人事」という言葉があるように、人事の業務を「人事」の括りで片づけるのではなく、経営も視野に入れた考え方を持って進めていくことで、経営者のビジョンと法的な問題、現場の課題感を包括的に解決できる部門として機能するようになることでしょう。
有給休暇を取得すると給与とは別にボーナスや奨励金を支給することで、劇的に有給取得率を向上させた企業がいくつか出てきています。「現金支給」と聞くと一見生々しい感じも受けますが、下記の大手企業2社の効果を考えると、確実に効果が見込めるクレバーな施策と言えそうです。
例えば、データセンター大手のさくらインターネット株式会社では、有給休暇を2日以上連続して取得すると、1日あたり5000円の手当を支払う制度を2009年から実施中。現在では全社員の約8割が活用し、様々な働き方改革、休み方改革を断続的に行ったことで、10年前には20%台だった離職率は1%にまで劇的に低下しています。
また、オリックス株式会社でも5営業日以上連続して有休を取った社員に5万円を支給する「リフレッシュ休暇取得奨励金制度」を2017年4月から実施。制度活用率は初年度から9割以上と好評で、同社の有給取得率も60%台から80%弱まで急上昇しています。
- 労務・制度 更新日:2020/08/06
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