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新卒採用にも使える!リファラル採用の制度設計と運用のポイント

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ここ数年、新卒採用は「売り手市場」が続いています。従来の採用活動だけでは求める人材を獲得するのが年々厳しくなるなかで、新たな採用手段として注目を集めているのが「リファラル採用」です。 リファラル採用といえば、中途採用の方法というイメージがあるかもしれません。しかし、有能な人材を獲得できる手段として、最近では新卒採用で導入する企業も現れています。 ここでは、リファラル採用の基本的な知識をお伝えするとともに、新卒採用でも活かせる制度設計や運用のポイントなども紹介します。
英語のリファラル(referral)には、「紹介」「推薦」といった意味があります。リファラル採用とは、「社員の人的ネットワークを駆使して、自社が求める人材を紹介・推薦してもらう採用方法」のことです。
リファラル採用と似ている新卒採用活動に、「リクルーター制度」があります。自社の社員が、出身大学やサークルのOB・OGなどの人脈を生かして学生や大学関係者にアプローチする人材発掘法ですが、この対象者を集団ではなく「個人」「より身近な人物」にターゲットを据えたのがリファラル採用です。
リファラル採用で獲得した人材は、紹介してくれた社員と同じ専門知識や関心を持っていることが多く、即戦力として働ける人材を獲得しやすいという一面があります。このため、リファラル採用は中途採用に有効とされますが、アイデア次第では新卒採用においても有効です。 最近の学生も、身近な友人や先輩などから志望企業の情報を得たり、相談したりしながら就職先を選ぶ傾向はあります。新卒3年目ぐらいまでの若手社員であれば、大学時代の後輩とのつながりもあるでしょうし、それを生かしてリファラル採用もできるでしょう。
また、SNSの普及により内定者からその企業について紹介してもらうといった、リファラル採用につながりやすいコミュニティも広がっています。
このように、若手社員や内定者に協力してもらうことで、新卒でもリファラル採用で求める人材獲得につなげるチャンスがあるのです。
リファラル採用に注力する企業は、近年増加傾向にあります。その背景には、労働人口の減少による「人材確保が難しくなっている」ことや、「採用のミスマッチが多い」ことが一因として挙げられます。
新卒・中途を問わず採用の売り手市場が続き、人材確保の競争が激化するなかで、自社の求める適性やスキルを持った人材の採用は年々難しくなっています。これまでと同じような採用活動をしていても人員が集まるとは限らず、企業としては母集団形成のために新たな取り組みをする必要が出てきました。
内定者数が募集人員を満たしたとしても、入社を辞退されることもあります。「2020年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」では、国内約3,000社の企業の半数以上が「内定辞退率が30%を超える」と答えています。
入社後も安心とはいえません。適性が合わなかったり、入社前とのギャップが大きかったりするなどの理由で、早期退職をする社員が出ることも考えられます。雇用のミスマッチによる損失は、企業にとって計り知れません。
これに対し、社員からの紹介で新卒者・求職者を募れるリファラル採用であれば、紹介した社員が自社の事業内容や企業風土を新卒者・求職者にある程度伝えているため、内定辞退や早期離職を低減させる効果があります。また、人事や採用担当者も紹介してくれた社員を通じて新卒者・求職者のパーソナルな情報を得ているため、適性やスキルを把握しやすいという点でもリファラル採用が有効だといえます。

内定者にリファラル採用を促す企業もある


自社の社員だけでなく、内定者の人脈を生かして新卒の人材を紹介してもらうリファラル採用を行う企業もあります。
たとえば、内定者とその同級生など学生と一緒に参加できる交流会を開催し、同じ出身大学の若手社員が中心となってコミュニケーションを深めながら、企業のアピールや学生の情報を入手するといった活動をしている企業もあります。また別の企業では、内定者研修でリファラル活動をチーム対抗戦で行い、優勝チームにはご褒美をプレゼントするというところもあります。
このように、信頼できそうな内定者に依頼して、大学のゼミや研究室などの友人や後輩に自社のアピールポイントを伝えてもらうことで、学生を紹介してくれる可能性が高まります。また紹介した内定者も、組織の一員として「会社のためになることをした」と誇りに感じるでしょうから、内定辞退や早期離職の抑止にも効果的です。
リファラル採用は、このような「つながり」を醸成し、さらに後輩とのつながりを連鎖的に続けていくことにより、持続可能な新卒採用を実現していくことも期待できるのです。

マッチング精度が高く早期離職が少ない


リファラル採用で募った新卒者・求職者は、紹介者(自社の社員)から事業内容や社風など、さまざまな情報を与えられていますので、理想と現実のギャップが起きにくいという特徴があります。
新卒者・求職者も、入社した段階で友人や知人がいる環境ですから、人間関係になじめず早期離職するといったリスクも低減できます。
人事担当者にとっても、多くの新卒者・求職者から選考するのではなく、一人の新卒者・求職者に時間をかけられるため、新卒者・求職者がどのような人物かをしっかり見極めて採用することも可能でしょう。

採用コストが抑えられる


人材を紹介するのは社員ですから、求人広告の出稿費や人材エージェントの紹介料なども不要です。
なお、リファラル採用に取り組んでいる企業では、紹介してくれた社員に報酬を支給する制度を設けるところもあります。また、採用担当者などを交えて食事会を開くなど交際費が別途かかるケースもあります。
こうした経費を踏まえても、従来の採用活動のように会社説明会や書類選考、面接などの日程調整といった負担を考えれば、リファラル採用では大幅なコスト圧縮が期待できます。

専門性の高い人材確保にも有効


専門知識を求められる職種などでは、同じ知識やスキルを持った人材を社員に紹介してもらうことで、即戦力のある人材獲得も期待できます。どれだけの知識があるかわからない人材を獲得するよりも、社員教育にかける手間やコストを抑えられるといったメリットもあります。
企業に多様なメリットをもたらすリファラル採用ですが、慎重に進めないと、採用活動だけでなく事業にも影響をおよぼすことがあります。リファラル採用を検討する際は、以下の注意点があることも理解しておきましょう。

紹介者の理解度に依存しやすい


紹介してくれる社員が、企業が求める人物像を正確に把握していないと、かえって雇用のミスマッチを生じさせる可能性があります。
よくあるのが、他部署で人材を募集しているケース。仕事内容や求めるスキルなどを詳しく知らない社員が不正確な情報を新卒者・求職者に伝え、面接時や入社してから「聞いていたことと違う」と内定辞退や早期離職につながるリスクもあります。 紹介してくれる社員に対して、企業が求める人材や募集内容などの情報を正確に周知させることが大切です。

人材に偏りが出てしまう

上記とは逆に、紹介者の所属部署で募集する場合、似たようなタイプの人材が集まりやすくなることもあります。多様な個性の人材をそろえたほうが新しいアイデアを生み出したり、活発な議論ができたり、切磋琢磨できる環境がつくりやすくなりますので、上手にコントロールする必要が出てくるでしょう。

採用計画が立てにくい


リファラル採用は、大量の人材を集める手段には適しません。採用人数が数名程度ならリファラル採用で充足できても、採用人数が多い場合はこの方法だけで人員を確保するのは難しいでしょう。
また、新卒者・求職者一人ひとりの適性やスキルなどをじっくり見極めながら採用活動を進められるのがリファラル採用のメリットですが、逆に入社するまでの時間が長くなったり、希望者をフォローするための労力が必要になったりと、採用担当者の負担を増やす懸念もあります。
採用計画を立てる際は、リファラル採用だけにこだわらず、従来の就職情報サイトや新卒紹介などのチャネルを組み合わせ、計画的に行う必要があるでしょう。
リファラル採用を成功に導くうえで大切なことは、社員にリファラル採用の意義を正しく伝え共感を得ることです。トップダウンで「とりあえずやってみよう」とリファラル採用を始めても、コア業務に翻弄される社員の耳にはなかなか届かず、結局誰からも紹介されないまま自然消滅するのがオチでしょう。リファラル採用の主役は社員であることを、全員に認識させる必要があります。

リファラル採用の制度を設計する


従来の採用制度と同じように、リファラル採用にもルールを設ける必要があります。
リファラル採用を導入したものの「なかなか定着しない」「社員が協力的ではない」という企業には、中途半端な制度設計のまま放置されているというケースも、よくみられます。 具体的な方法は後ほど紹介しますが、PDCAを回しながら企業風土の一つとして認知されるような制度を設計しましょう。

社内浸透に向けた情報発信


社員が率先して紹介してくれるような土壌をつくるには、人事・採用担当者が積極的に情報発信をしていく必要があります。紹介してくれる社員は人材紹介のプロではありませんから、従来の採用手段のように待っているだけでは人は集まりません。募集要項だけでなく、具体的にどんなスキルを持った人材を求めるかを明確にし、社員に正しく理解されるよう伝えましょう。
伝達手段はメールだけでなく、SNSやイントラサイト、ポスターの作成、全社会議の場など、さまざまなツールを活用したほうが効果的。手間はかかりますが、人事・採用担当者の本気度を伝えるうえで必要な施策です。
社員が楽しんで閲覧できるコンテンツの発信も、検討したいところ。成功事例の紹介は、その一つです。紹介したい人にどんなアピールをしたか、入社までにどんなフローがあったかなど具体例を伝えることで、「これだったら自分にも紹介できるかも」と、ためらう気持ちの払拭にもつながります。
また、紹介したい人の受付や社員からの質問などに答える相談窓口も設置し、わかりやすくアピールしましょう。

紹介インセンティブを設ける企業も


会社に人材を紹介することに不安を感じる社員は、少なくありません。「適性にあった人材を紹介できるだろうか」「紹介しても不採用になれば今後の関係に影響が出そう」といった不安要素があり、会社に紹介したくてもできない(したくない)と思っている社員は意外と多いものです。
「紹介した人が入社したら●万円支給」などの特典を設けることで、社員の意欲喚起につながります。報酬額は、紹介された人材のスキルなどの要因によっても異なりますが、目安として数万円から30万円程度に設定している企業が多いようです。

なお、あまり高額なインセンティブだと職業安定法に抵触するおそれがあります。報酬を検討している企業は、「社員紹介制度があることを就業規則に明記する」「賃金の一部として支払う」など、法律に抵触しないよう確認しながら進めましょう。
リファラル採用は制度を設けるだけでなく、継続的に運用していくことも重要です。プランニングから実行、評価、改善とPDCAを回しながら社員への認知度や定着率をアップさせ、求める人材を獲得しやすい風土を醸成していきます。 制度設計から運用について、採用担当者の具体的な取り組みを紹介しましょう。

【プランニング】リファラル採用制度を決める


人材紹介制度の内容を固めます。採用基準や募集要項を伝えるツール(具体的な活動内容)、紹介者へのインセンティブ(報酬の有無や報酬額)、問い合わせ窓口の設置など、社員が紹介しやすい制度を検討しましょう。

【実行】社内告知


全社員に周知しやすい方法で、リファラル採用の意義を伝えます。大切なのは、継続すること。社員がいつでも紹介できるよう、タイムリーな情報を発信し続けましょう。

【評価】効果検証


実行に移したら、定期的にチェックすることも重要です。紹介が少なければ、その原因を社員にヒアリングして課題を洗い出し、改善していくことも求められます。
評価をわかりやすくするために、あらかじめ数値目標を定めるという方法もあります。紹介者数や応募者数だけでなく、メールの開封率や募集要項ページのPV数などは社員の認知度や本気度を把握する指標にもなるでしょう。

【改善】制度の見直し


求める人材の情報発信を続けることはもちろん、課題があれば制度を改善していくことも必要です。採用基準の敷居は高くないか、インセンティブは妥当か、問い合わせ窓口がわかりづらくないかなど、社員へのヒアリング内容をもとに紹介しやすい形を求め続けましょう。
リファラル採用に協力してくれる社員が多い企業とは、「社員満足度(ES)の高い企業」ともいえます。社員と会社のあいだに深い信頼関係が築かれているからこそ、「この人と働きたい」と思える友人や知人を紹介できるのです。
綿密に制度設計して運用しているにもかかわらず紹介者数が少ないという企業は、もしかしたら社員の待遇面にもメスを入れる必要があるかもしれません。
リファラル採用を導入することで、職場環境や福利厚生などの待遇面の改善など、社員が働きやすい環境づくりを目指すきっかけにもなります。働き方改革を進めるうえでも、また継続的に求める人材を確保するうえでも、リファラル採用がよりよい企業づくりに貢献することもあるのです。
  • 人材採用・育成 更新日:2019/12/09
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