「コミュニケーション力」~他者と円滑に連携をとり、ビジネスを成功に導く能力~|ビジネススキルの見極め方
昨年末、日本経済団体連合会(経団連)が発表した「2016年度 新卒採用に関するアンケート調査結果(※)」によると、コミュニケーション力(能力)は企業が採用選考で重視する要素として13年連続の1位となりました。
もちろんこのスキルは、中途採用においても重要です。コミュニケーション力を持ったメンバーを採用できなければ、社内外のメンバーと円滑に業務を進め、ビジネスを成功に導くことは夢のまた夢となってしまいます。
それでは、コミュニケーション力とは一体何を指しているのでしょうか。さまざまな人に質問してみても、曖昧な答えしか返ってこない場合がほとんどです。各人が多種多様な能力を、十羽一絡げにコミュニケーション力と見なしてしまっているのではないでしょうか。
「○○力」の詳細について解説する本連載。今回は、「コミュニケーション力」とは何かについて考えてみたいと思います。
※…https://www.keidanren.or.jp/policy/2016/108_kekka.pdf
ひとくちにコミュニケーション力といっても、会社によってその捉え方が異なります。これまで私が多くの人事や経営者から伺ったことを要約すると、次のような4つの能力のどれかを表していることが多いようです。
まずは、「読み取り力」です。これは、曖昧な情報を受け取った際に、それを概念化できる力を指します。たとえば営業マンがお客さまに商品を勧めたとき、相手の表情や口調を元に、買う意思があるかを見極める力などがこれに当たります。
次は、「表現力」です。これは、ある概念を具体的に表現して相手にイメージさせる力。たとえば比喩などを交えて、わかりやすく説明できる力などがこれに当たります。
「論理的思考力」も、コミュニケーション力の1つの意味として用いられることが多いです。自分が思っていることをわかりやすく、筋道立てて話せる力。人の話を筋道立てて聞き、理解できる力を指します。
最後に「発想力」。これは、一見すると違うもの同士に共通点を見つけたり、AとBを組み合わせればCが生み出せることに気づいたりする力です。
人事は、経営者や人事部長などが「コミュニケーション力の高い人を採用してほしい」と言っているとき、これらのどの意味で用いているかを注意深く確認する必要があります。そうでなければ、言葉は同じでもお互いに思っていることが違い、全く別の基準で採用をしてしまうことになるからです。
この4つのうち採用時に特に重要視されるのは、「読み取り力」と「論理的思考力」です。前者は国語的な能力、後者は数学的な能力と言えるかもしれません。
たとえば、「小説の本質は何か?」と質問されたとき、「読み取り力」が強い人は「行間を読むことにより、心に湧き起こる感情の浮き沈み」などと答えたりするでしょう。このタイプの人は物事の細かい部分まで吟味し、その裏側にあるエッセンスを読み取ることができます。しかし、余計な情報を捕捉しすぎて、ロジカルさに欠ける傾向もあるでしょう。
一方、「論理的思考力」の方が強い人は、骨組みや構造を重視し、誤差のない結論を出すことを得意とします。たとえば、このタイプの人は小説の本質を「あらすじ」と答えるかもしれません。物事をシンプルに捉えるので、ノイズが少なく、論理性を発揮しやすいのです。ただし、人の表情や場の空気など“雰囲気”を捉えるのは、苦手な傾向にあります。
数学が得意だと国語が苦手、その逆もしかりというように、多くの人は「読み取り力」と「論理的思考力」はどちらかに偏っているようです。
そのため、経営者や人事部長などから「コミュニケーション力の高い人を採用してほしい」と言われたとき、その意味(「読み取り力」と「論理的思考力」どちらなのか)を取り違えると、大変なことになってしまいます。
また、残り2つの能力である「表現力」や「発想力」を重視している企業も多いでしょう。
これらの能力を持っているかどうかは、ある程度は「知識の量」で見分けることができます。知識をインプットすると、世の中に対する解像度が高まり、概念と具体例について考えることが自然とできるようになっていくからです。
解像度の低い写真は写っている景色もガタガタした輪郭になり、逆に解像度が高い写真はさまざまなものが鮮やかに詳細に見えます。世の中を見る目の「解像度」が粗い人は、藍色も群青色もスカイブルーもすべて青色として認識してしまうでしょう。そうなると、グラデーションが美しい夏の空を表現しても「青かった」にしかなりません。
ビジネスにおける情報伝達も、それと同じです。伝える側も、受け取る側も、解像度が高いからこそ密なやり取りが可能になります。そして、それを支えてくれるのが知識なのです。
この能力は、作文を書かせたり、実際に何かをつくらせたり、とにかく具体的なアウトプットをさせてなければなかなかわかりにくいです。そのため、何かしらの方法でアウトプットをしてもらいましょう。
また、領域固有性(特定の領域では力を発揮できるが、違う領域だと力を発揮できないという傾向)が強いので、なるべく自社の仕事に近い領域でチェックします。
フリートーク(雑談)にどこまで耐えられるかで引き出しの多さがわかりますが、人と話すのに緊張するタイプは発想力があっても会話スキルが低いケースがあるため要注意です。そういう人は上記のように、何らかの具体的なアウトプットをベースに語らせると意外にすごいことがわかったりします。
- 人材採用・育成 更新日:2017/11/02
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