中途採用計画の考え方
人材調達の種類
事業計画を迅速に進めるなら中途採用
社外から人材を求める方法として新卒採用のように中長期の育成を前提とした採用では事業計画を迅速に進めることはできません。必要なスキルを持った即戦力人材の中途採用が方策の中心とされることが多いでしょう。
こういった場合、特に中核で事業を進めるリーダー人材や保有している経験、スキル要件の合致度が高い即戦力人材を強く求める傾向が多くの企業で見られます。
経営視点で組織を拡大させるM&A
自力での採用は難易度が高いことが見込まれるような場合は、自社の計画に合致した事業をすでにおこなっている会社と提携する、M&Aなどで事業自体を買い取るといった方法で人材調達を進めることもあります。そこまでの話ではなくても人材がいる企業に外注することで事業を進め、自社でもノウハウを得ながら人材を育てていくという考え方もあります。
確実性を求めるなら長期的な育成
中途採用を事業計画・人員計画と合わせて考えるにあたり最も重要なのは、自社で求めている人材が「どこに」「どのくらい」存在するのかという採用市場の把握とこれから先の見通しです。
所定の要件を満たす人材をどのように調達するかは、基本的には採用と育成の二つの方法しかありませんが、要件の合致度が高い人材ほど仕事の立ち上がりは早く、逆に育成に頼る部分が多ければ立ち上がるまでにはそれなりの時間がかかります。
活動スケジュールの計画
採用活動計画として必要な内容は「採用人数」「人材要件(質・レベル)」の目標設定と「活動時期」や「スケジュール」などが主なものになります。
これらはすべて相互に関係し合うもので、その時の優先順位に合わせて組み立てていく必要があります。例えばいつまでに採用確定するという時期が優先されるなら、その中で人数と質を担保することは難易度が高くなります。
採用人材の質の認識を共有する
採用人数が優先される場合に注意しなければならないのは、採用する人材の質やレベルとの兼ね合いです。
特定の一点にフォーカスした計画や、高い目標の尻たたきの計画では、現場配属後にミスマッチが続出するなど中期的な悪影響が生じるケースが多いため、採用市場の状況・採用人数・人材要件・自社の採用力まで総合的に判断したうえで、実態に見合った計画をすることが重要です。
事業の時間軸・スピード感を考慮して進める
事業計画と整合した人員計画を考えるときには、計画されている事業の時間軸・スピード感も考慮しなければなりません。思ったような人材が採用できれば事業のスピードは早められますし、育成期間を待つ余力があればそのほうが人材調達の確実性は増します。
人員計画の中では事業計画を達成するために必要な人材要件を考え、その人材に対する採用と育成のバランスを考えなければならないのです。
適正なバランスを一概にいうことはできませんが、一つだけ言えるのは初めに決めた進め方にこだわりすぎるのは避けたほうが良いということです。事業環境がそこまで急変することは少ないですが、人員の状況は採用や育成を進める中で想定しきれない変化が起こることがあります。変化する状況や想定外の事象に対しては柔軟に対処していきましょう。
一括採用と通年採用
採用活動の進め方には「一括採用」と「通年採用」という2つの考え方があります。
「一括採用」は限られた採用活動期間の中で採用を決定することで、従来からの新卒採用などはこの典型的な例です。欠員補充などを理由にした一般的な中途採用も期間を限定して活動するということでは一括採用の一種ということができるでしょう。
これに対して「通年採用」は、特に期間を設けず年間を通して採用活動を実施する取り組みをいいます。これは欧米や外資系企業では従来から当たり前におこなわれてきたことです。
通年採用のメリット
- 必要な人材を必要なタイミングで採用できる。
- 出会える人材の幅が広がる。
- スケジュールに余裕をもった選考ができミスマッチが減少する。
- 内定辞退されても補完がしやすい。
これに関する具体的な動きの一例としては、2019年4月に経営者団体である経団連と大学側との協議で2021年春以降の新卒者の就職活動では、「通年採用」に移行していくという合意がされています。
「一括採用」と「通年採用」のどちらのやり方を選択するかは、企業それぞれの個別の事情によって決めることですが、少子高齢化や労働人口の減少ということを考えれば、これからの大きな方向性としては「通年採用」を取り入れる企業が増えていくことが予想できます。
これから採用計画を検討していく上では十分に考慮しておいたほうがよいでしょう。