コロナ禍を経てどう変わった? 大学訪問の「今」を解説!
高橋:はい。まず一つは、大学の「雰囲気」を感じるということですね。弊社がリリースしているものも含めて、大学生・就職活動生に関する調査データは多く存在しますが、それはあくまでも「全体としての傾向」であって、一つひとつの大学をその目で見ると新しい発見があるはずです。
学生やキャンパスの活気、就職課やキャリアセンターの活用具合、学部ごとの雰囲気の違いから、どんな学生がそこにいるのか、イメージができるでしょう。
また、就職課やキャリアセンターに貼り出されている求人票やインターンシップ募集のポスターを見るのもおすすめです。
そこで目にする企業は自社にとって採用上の競合ということになりますから、メモを取って各社の採用戦略を調べれば、自社の採用広報に活かせるかもしれません。
― 実際に大学訪問をするとなると就職課やキャリアセンターに伺うことになると思うのですが、そういったところではどのような情報が得られるのでしょうか?
高橋:そうですね。例えば「体育会系の学生を採用したい」と考えていたとします。しかし、そういった学生の多くは3年生だとまだ部活に打ち込んでいるためナビサイトに登録していないことがあります。
なので、企業側からアプローチするのが難しい場合も多いのですが、就職課やキャリアセンターに相談すれば「○月ごろには大会が終わって、その後なら体育会系の学生も就職活動に力を入れると思いますよ」など、アドバイスを得られるかもしれません。
これは一例ですが、実際に日々、学生を見ている方からの「生きた情報」は採用活動にとって非常に重要なものです。
― なるほど。訪問して得られる情報は多いですね。
高橋:そうですね。ただし、大事なのは「情報交換」というスタンスを持つことです。
企業が学生の情報を求めているように、大学も学生のキャリア形成、就職に役立つ「企業・業界の情報」を求めています。
自社や業界全体の現状や展望といった基礎情報から、採用状況などより踏み込んだ情報があると喜ばれるでしょう。
また、もしその大学のOB・OGを採用しているなら、入社後のキャリアや働きぶりをお話しするのも喜ばれます。
― サポネットでは定期的に大学と企業との関係づくりについて取材をしてきました。2020年4月に発出された最初の緊急事態宣言後は企業の大学訪問がほぼ完全にストップしましたが、現在は解消されているのでしょうか?
高橋:大学の授業は22年の夏以降、ほぼ対面授業かハイブリッド授業に戻っています。
また、外部の方と安全に対面で面会を行う方法も確立されてきたことから、多くの大学で企業の訪問も学内セミナーも再開しています。
なので、ほとんどの場合は問題なく訪問できると考えていいでしょう。ただし、個別に状況が違う場合もありますので、事前に電話かメールで確認するようにしてください。
― 大学訪問の際に気を付けるべきことを教えてください。
高橋:学生が企業訪問をするときは、しっかりと下調べをしてきますよね。これと基本は同じです。
まず、訪問する大学のWEBページなどはしっかりチェックし、学部構成、卒業生の進路などを知っておくと訪問時の会話がスムーズになります。
また、基本中の基本ですが、アポイントは必ず取ってください。
「出張でさまざまな大学を回らせていただいている」と、事前知識もないまま企業が飛び込みで訪問してくることもあるそうです。
学生面談をはじめ、先方もさまざまな業務の合間に企業訪問を受け入れていることを忘れず、基本的なマナーを大切にしましょう。
― アポイントを取るに当たって、何かコツやポイントはあるのでしょうか?
高橋:まずは、入試や卒業式などの学事日程を大学のWEBページで確認して適切な時期を選びましょう。
その上で、「採用実績のある大学」を優先することをおすすめしています。先ほどもお話したように、大学側もOB・OGがどのような仕事をして活躍し、成長しているか聞きたいはずですし、歓迎されると思いますよ。
とはいえ、繁忙期でない限りは新規の訪問であっても、基本的に断られることは少ないと思います。
注意が必要なのは、大学院生が採用対象の場合です。
キャリアセンターではなく、その学部・研究科の就職担当教授を訪問するのがいい場合もありますが、大学によって対応が違います。WEBページに掲載されている場合もありますので、まずは確認しましょう。
― 大学はオンラインよりも対面での訪問が一般的なのでしょうか?
高橋:大学によります。求人票を渡すだけなら、WEBから受け付けている大学もあります。
― 大学と企業が関係性を築くことで、どのようなメリットを生んでくれるのでしょうか。
高橋:実際に大学に訪問することで、校風や学生の気質・雰囲気をつかめることに加え、キャリア支援の内容を知ることで低学年のPBL(Project Based Learning:実務体験型教育)などに参加できる機会を得られるかもしれません。
直接採用につながらなくとも、大学、学生、企業とwin-win-winの関係構築をしておくと、中長期的に採用活動にいい影響をもたらすでしょう。
また現在、インターンシップを含む「学生のキャリア形成支援」について大きな転換期を迎えていることにも注目したいですね。
25年卒よりインターンシップが再定義され、インターンシップという名称を使用できるプログラムに一定の条件が付加されました。
その背景には、少子高齢化で生産年齢人口が減少していく中、Society5.0(※1)人材を育成すべく、産学が連携して学生のキャリア観育成を推進していこうという流れがあります。
学生のキャリア教育を軸に、さまざまな形で企業と大学とが協力し合うことが求められるようになるため、そこで力を発揮できれば大学と良い関係を築くチャンスにもなりますね。
質の高い、就業体験を伴った「インターンシップ」をどれだけ実施できるか、企業側は今までより積極的に大学とコミュニケーションを取る必要が出てきました。
― なるほど。これまでも大学訪問をしていた方にとっても、新たな関係づくりが求められますね。
高橋:そうですね。地域の商工会議所やインターンシップ協議会(※2)、経済同友会など、大学が加盟している経済団体などとのリレーションも有効です。
高橋:先ほどもお話しした、学生のキャリア形成支援に自社がどのような形で協力できるかをしっかりと考え、大学と連携して質の高いプログラムを実施することが、まずは重要です。
その上で、日々の企業対学生の対応としては、選考結果の連絡が遅い、学生からの問い合わせに返答するまでに時間がかかりすぎているなど、対応に問題があると同じように就職課やキャリアセンターに相談が行き、距離を置かれてしまうことになりますので注意が必要です。
兼務している採用担当者の方など、どうしても手が回らないということもあると思いますが、大学との関係づくりは採用において非常に重要であるということを意識して、何とか工夫して頂きたいところです。必要であれば、一部の業務をアウトソーシングしてもいいかもしれません。
― 今日はありがとうございました!
- 人材採用・育成 更新日:2023/02/22
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