人材育成の基礎と抑えるべきポイント
企業が安定し永続的に、成長していくには、限られた資源である「ヒト」を育てる「人材育成」が大きな役割を果たします。
経営の4大資源「ヒト」、「モノ」、「カネ」、「情報」と言われていますが、その中で最も重要な資源が「ヒト」と言われています。
なぜならば、「モノ」「カネ」「情報」は、事業のための材料にすぎず、それを使って価値を生み出すことは「ヒト」しかできないからです。
今、日本の国内では、少子高齢化による労働人口の減少により、「ヒト」の価値が高まり、企業は、人材を確保することに苦戦しています。
人材が成長できる環境が整っていれば、「ヒト」を大切にしている企業として評価され、採用にも、離職防止にも有利に働き、従業員のモチベーションも高まり、生産性の向上にも貢献します。
人材育成の進め方
現状を把握する
まず、社内の情報を集め、把握し分析から始めます。部門、年次、階層ごとにヒアリングし、業務に必要なスキル、どのようなスキルを持った人材が望ましいか、人材育成に感じている課題をヒアリングしましょう。
また、経営陣、事業の責任者に今後の計画をヒアリングし、必要な管理職、必要なスキルを持った人材が何人必要か把握しましょう。
スキルマップを作成する
ヒアリングした情報を基に、部門、役職、年次ごとに必要なスキルを整理しましょう。例えば、2年目の従業員は、「取引のクロージングができる」、「給与計算ができる」、「契約書の作成ができる」などの、具体的なスキルを列記しまししょう。
このスキルマップを作成しておくことで、部門ごと年次ごと役職ごとに研修や指導するべき内容が明確になります。
また、従業員ごとにスキルマップを管理すれば、従業員の持っているスキルを把握できるため、適材適所への人事異動や、昇格や昇級の判断、人事評価にも活用できます。
従業員側も自分が何のスキルを学んでいけばいいのか分かり自律的な行動を促す効果もあります。
厚生労働省のWebサイトでは、業種、職務内容、レベル(役職)別に、職業能力評価シートの事例を用意しています。
計画を立案する
作成したスキルマップを基に、その部門、役職、年次の従業員が必要なスキルを身に着けられるように、最適な育成手段を立案します。具体的な育成手段は次章にてご紹介します。
また、立案時には、KPIも合わせて設定しましょう。例えば、知識を身につける研修ならばペーパーテストを行い「80%が80点以上を取得する」などの目標を立て、改善していける体制をつくることが大切です。
人材育成の方法
ここでは、人材育成の方法と各々の特徴を記載します。
OJT(On-the-Job Training)
育成対象の社員と、経験のある先輩社員が、現場で業務を一緒に行い知識や経験を身につけていく方法です。実戦経験を積むことで、早期の戦力化や、社内でのチームワーク作り、教える側も部下を指導し管理する経験が積めるメリットもあり、 多くの企業で行われています。
Off-JT(Off-the-Job Training)
実際の業務の中での教育ではなく、集合研修やe-ラーニングなどを用いた研修です。座学での知識獲得だけでなく、グループワークやロールプレイングなどを取り入れる場合もあります。
自己啓発を促す
従業員が自発的に、スキルの取得を行うように促す施策です。従業員が受けたいセミナーなどの講義費用や資格試験の費用、関連書籍の購入費などを経費として会社負担し支援する施策があります。
社内・社外資格試験
社内独自の資格試験や、社外の資格試験の合格で、手当を支給する場合や、また、昇級の要件にすることで、資格の取得を奨励します。
ジョブローテーション
人材育成のため、人材を定期的に他部署へと異動させる施策です。別な部署で、経験やスキル、別な立場で社内を見る視点や、広範な社内人脈をつくり、長期的には幹部従業員を育成することを目的とします。
目標管理制度(MBO)
人事評価制度の一種で、「目標による管理」といわれている手法です。従業員と上長などの間で目標を設定し、定期的に目標の達成度合いを面談で確認することで、従業員個人のスキルの上昇を促すことができます。
メンター制度
ベテラン従業員が相談役として若手従業員などをサポートする施策です。知識の伝達だけでなく、悩み相談などの精神的なケアを行います。
ティーチング
先生が生徒に教えるように、先輩従業員が知識や技術などを伝授する方法です。共通の認識や基礎知識を伝えるのに適した手法です。
コーチング
相手の自主性を引き出し、目標に向けたモチベーションを高める施策で、ティーチングのように教えるのではなく、自分で考えて答えをだすように誘導します。
海外留学制度
社費による海外留学制度を設け、希望者をつのりMBA取得などを支援します。 社費留学の条件として、早期退職時の学費返還などを設けるケースが多いです。
人材育成のポイント
ここでは、「人材育成」のポイントを、新卒社員、中堅社員、中途採用社員、管理職に分けて解説します。
新卒社員
新卒社員は、大学を出たばかりで会社員経験のないまっさらな人材です。座学やロールプレイングを取り入れたビジネスマナーやコンプライアンス研修を実施しましょう。会社のルールや基礎的な業務知識は中堅従業員を講師にして進めれば、人的交流もはかれ、中堅社員のリーダー教育にもつながります。
基礎的な研修が終了した後は、先輩従業員を担当につけて、OJTに移行し、現場で学んでいきましょう。
また、OJT担当者以外に別にメンター従業員を用意し、不慣れな会社員生活のストレスをケアする場合もあります。
中堅社員
入社して数年、自律的に業務をこなせる層に対する人材育成です。業務は一通りこなせるため、より専門的な知識や、将来の管理職として、リーダーシップやマネジメントのスキルを身につける育成が求められます。
また、現在の現場業務とは異なる、新たなスキルを身に着けることも大切です。例えば、現職が営業ならば、マーケティングの知識や、事業計画書の作成に関する知識など、新たなスキルは、現在の業務に良い効果を発揮するでしょう。
中途採用社員
自社の会社と他社では、スキルマップが異なります。まず、着任する業務のスキルマップで、補う必要があるスキルを把握して、育成をしましょう。
また、企業理念や会社独自のルールを共有する場を設けましょう。
特に、中途採用者は、不明点は周囲に聞いて業務を進める必要があります。社内の人間関係の構築支援や、周囲に質問しやすい環境をつくることも人材育成に繋がります。
例えば、他部署の会議にも出席させて、会社の現状を把握させつつ顔を知ってもらうような施策が考えられます。
管理職
管理職になった従業員には、管理職向けの育成を実施しましょう。組織マネジメントや経営数字に関する知識、評価者としてのスキル、従業員のモチベーションをあげるスキルなどを身に着けられるように育成しましょう。
人材育成の課題と上手に機能させる対処法
「人材育成」は経営にとって重要な柱にも関わらず、うまく機能していないケースもあります。ここでは、人材育成の課題と対処法を紹介します。
人材育成が後回しになってしまう
OJTやメンターなどの担当者は、自分の業務をこなす中で教育を担当します。自分の業務目標が達成できなければ評価も下がり、給与にも影響するため、「人材育成」を業務と認識せずに後回しにしてしまう場合もあります。
これを防ぐためには、人事評価の項目に「人材育成」を設け、評価点数の比重を高くする方法があります。会社が「人材育成」業務を重視していることを伝えるメッセージになります。
定期的な面談でフォローする
上長は、評価面談時はもちろんのこと、その他にも定期的な面談の場を用意し、部下の成長や、悩み、課題を確認し対処しましょう。
少子高齢化による労働人口の減少から、一人ひとりの従業員の価値は、これからも高まっていきます。その中で、企業が安定し永続的に成長して行くためには「人材育成」は極めて重要です。
「人材育成」に力をいれ、従業員が成長できる環境を作ることができれば、生産性が向上し、モチベーションも高まり、人材の採用にも有利に働くでしょう。
- 労務・制度 更新日:2022/07/05
-
いま注目のテーマ
-
-
タグ
-