退職してもまた働ける!「ジョブ・リターン制度」を成功させるポイント
結婚、出産、介護などを理由にいったん退職した社員を、本人の希望により再雇用する「ジョブ・リターン制度」。パートナーの海外転勤や遠方での親の介護など、やむをえず退職してしまった人にもうれしい制度です。
大手を中心に導入する企業も増えるなか、社員が利用しやすい制度にするためのポイントについて考えます。
ジョブ・リターン制度とは?
ジョブ・リターン制度とは、結婚、出産、介護、配偶者の転勤など、さまざまな理由で退職した職員を、一定の期間を経て、本人の希望があれば再雇用する制度のこと。ワークライフバランスに貢献する制度として、平成23年度雇用均等基本調査(厚生労働省)によると、53.1%の事業所で導入されています。
例えば、トヨタ自動車では、家庭と仕事のバランスを考慮したキャリアデザインをサポートするしくみのひとつとして、「プロキャリア・カムバック制度」が2005年に導入されました。対象者は、勤務年数3年以上かつ1年以上専門職の経験がある社員で、さらに、「配偶者の転勤」もしくは「介護での退職」とその事由も限定されています。ただし、退職期間の制限はありません。
また、トッパン・フォームズでも、2007年に「キャリアリターン制度」を導入していますが、3年以上勤続した社員であれば、理由を問わず利用できます。自己都合退職した社員を広く再雇用するという制度になっています。
このように、ひと口にジョブ・リターン制度といっても、企業によって対象社員、利用できる理由、退職期間など条件はさまざまです。
導入企業は実感!「企業のメリットも大きい」
ジョブ・リターン制度は、パートナーの海外赴任や転勤で退職せざるを得ない場合や、子供がある程度の年齢になるまでハードに働けない女性など、働く側にとってニーズの高い制度というだけでなく、企業にとっても大きなメリットがあります。
導入した企業の目的を聞いてみると、「専門的な仕事が多いため、家庭の事情でしかたなく退職した社員に、その事情がなくなったとき(程度が減じたとき)には戻ってきてもらいたい」「労働市場による競争が激化しているなか、即戦力となる社員を効率的に確保するため」といった声があがります。
さらには、導入後に実感したメリットとして、「再雇用された人はモチベーションが高いため、職場全体に好影響をもたらす」「女性が活躍しやすい会社としてPRできている」など、企業内外に好影響が現れているという声も。
ジョブ・リターン制度は、「社員の福利厚生を向上させて、社員のモチベーションをアップさせる」という、社員側のニーズを汲み取るという側面だけでなく、企業にとってのメリットも大きいことがわかります。
制度の運用に成功している企業の特徴は
メリットの多いジョブ・リターン制度ですが、導入していても利用する社員が少ない、制度利用者へのサポートが不十分、など、制度運用に問題のある企業も少なくありません。多くの社員に活用してもらうためには、いくつかのポイントがありそうです。
まずは、「女性活躍推進に積極的である」こと。
出産、育児などを理由にいったん退職してしまっても、いずれはまた働きたいという女性は多く、ジョブ・リターン制度に対する潜在的ニーズは非常に大きいです。
制度をうまく運用するためには、こうした女性のニーズを把握し、実際の制度に反映したり、周囲の理解を促したりできる体制を整えることも重要です。
また、退職者と企業とをつなぐツールを設けていることもポイント。
何かと情報の入らない退職者に向けて、広て報誌や専用のインターネットサイトを設けている企業もあります。いつか働きたい、という退職者のモチベーションアップにつながるほか、職場を離れているあいだも社員の情報をアップデートできるというメリットも。
さらに、復職時に柔軟な雇用形態を用意しているということも重要なポイントです。退職時には正社員として働いていても、復職時には子育てを中心にしながらパートとして働きたい、といったようなケースがある一方、子育てが落ち着いたので、以前のようにバリバリ働きたいというケースも。それぞれの事情や要望を汲み取り、それにあった働き方を用意することが、制度の利用促進につながるのです。
ジョブ・リターン制度は、人材育成や採用コストも抑えられる優れた制度
社員の多様なニーズにこたえられるだけでなく、企業側のメリットも大きいジョブ・リターン制度。優秀な人材、やる気のある人材を確保する方法として、今後も注目の制度といえそうです。
- 労務・制度 更新日:2016/01/21
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