副業・兼業人材に委託できる業務とは?
人材不足が多くの組織で課題となるなか、副業・兼業人材を積極的に活用する企業が増えています。しかし、いざ活用しようと考えても、自社のどんな仕事を副業・兼業人材に任せられるのかよくわからず、悩む人事採用担当者も少なくありません。そこで今回の記事では、副業・兼業人材に委託しやすい業務を実例と共に紹介します。副業・兼業人材を活用した効果的な人材戦略を立てるうえで、ぜひ参考にしてください。
副業・兼業人材の3つの業務形態
副業・兼業人材へ委託する業務は、大きく分けて次の3つの形態に分類されます。
- タスク型
- プロジェクト型
- ミッション型
3つの形態いずれかにあてはまる業務は、副業・兼業人材に依頼しやすい業務といえるでしょう。まずはそれぞれのタイプについて詳しく紹介していきます。
タスク型
タスク完了条件として、納品物と納期を決めて依頼するタイプの業務です。特定の専門知識を要する一方で、仕事が単発で完結するため専門家を正社員などで雇用するのが難しいケースなどにしばしば活用されます。たとえば、次のような業務などが当てはまります。
- WebサイトやLPの構築
- 記事コンテンツの作成
- 決算期のデータや資料作成
WebライターやWebデザイナーなどのなかには、フルタイムでの雇用形態を希望せず、得意分野を活かして自分でスケジュールや仕事量を調整しながら案件を受注する方も少なくありません。納品物単位での契約とするタスク単位の委託の方がスムーズに人材活用できるケースも多いでしょう。
プロジェクト型
プロジェクトとは、特定のゴールを設定したうえで期間を定め、ゴール達成に向けて作業を進めていく業務スタイルです。プロジェクトが完結したあとに人材余剰が発生する恐れがあるため、副業・兼業人材を積極的に活用するのが適しています。たとえば、次のような業務などが当てはまります。
- 新商品キャンペーンの販促プロジェクト
- 社内の効率化システムの開発
- DXプロジェクトの推進
タスク型と比べると長期にわたり、継続的に業務にかかわるケースが多いです。その分企業のビジネスに与える影響も大きいため、マーケティングやITなどプロジェクト内容に沿った専門家を集める必要があります。副業・兼業人材に目を向けることで、社内に専門家がいない領域のプロジェクトでも、円滑に業務を進められるでしょう。
ミッション型
期間や成果物を特定せず、業務の役割を定義したうえで継続的に働いてもらう方法です。依頼する業務内容が最も長期にわたるケースが多い手法といえます。
- 経営戦略や財務戦略の策定
- 人材開発や雇用戦略の推進
- 新規事業の立ち上げ・展開
従来であれば、戦略・経営コンサルタントに依頼するケースが多いと想定される領域です。もちろん専門性を持つ正社員が対応しても問題ないでしょう。しかし、コンサルファームに依頼すれば高額なフィーが発生しますし、かといって社内に高度な知見をもつ社員がいない場合も少なくありません。最近は、副業・兼業の形式でコンサルタント業務を行う人材も増えています。ミッション型の形態で委託すれば、世の中の専門家の知見を柔軟に活用できるでしょう。
副業・兼業人材に委託する業務事例5選
副業・兼業人材に任せているケースが多い業務事例について、5つ紹介します。まず次に紹介する業務の効率化や社員リソースの削減を検討している人事担当者の方は、副業兼業人材の活用を検討してみてください。
メディアやWebサイトの記事コンテンツ
メディアやWebサイトの記事コンテンツは、副業・兼業人材に依頼しやすい代表的な業務の一つです。近年は多くの企業がWebマーケティング戦略の一環として、自社でオウンドメディアを運営したり、Webサイト内にコラムのような記事主体のコンテンツを配置するようになりました。
こうしたメディアのコンテンツは記事単位や文字単価などで「タスク単位」で依頼しやすい業務です。また、時期や事業状況によって記事の本数や納期の制約が変動しやすいため、業務委託という形態で人材活用したほうが柔軟なコンテンツ配信が可能になります。
決算データ整理と資料作成
決算期のデータ整理や資料作成だけを臨時で副業・兼業人材を活用すれば、経理・財務で過剰なリソースを常時確保する必要がなくなります。平時は経理・財務の限られたメンバーで対応可能なのに、決算期の膨大なデータ処理や社内外の説明資料作成の時期だけ、業務がひっ迫するケースは少なくありません。
正社員だけで対応しようとすれば、繁忙期に必要なリソースに合わせて人材を確保しなければならず、それ以外の時期には余剰が生じてしまいます。繁忙期には専門性の高い副業・兼業人材を活用して、リソースを効率よく活用していきましょう。
新商品のWebマーケティングプロジェクト
新商品の立ち上げプロジェクトにおいて、副業・兼業人材に参画してもらうのは有効な手段といえます。
一般的に新商品の立ち上げには認知度の向上や、初期投資の早期回収に向けて、ほかの既存商品と比べてマーケティングに多くのリソースを割くケースが多いといえます。また、新商品のマーケティングには、既存商品のマーケティングとは異なる認知度向上やブランディングなどの独自の知見やノウハウが求められます。
Webマーケティングの知見を活用するなどして、ターゲット層に効率よく積極的に情報を拡散して興味・関心を引かなければなりません。
一時的な必要リソースの増大、そして新商品立ち上げにだけ必要な専門性をうまく活用するためにも、副業・兼業人材への委託が有効です。
DXプロジェクトの推進
社内の業務の仕組みを効率化・デジタル化へ変革するDX推進のプロジェクトを進める場合も、副業・兼業人材を積極的に活用しましょう。ITスキルの中でもDXに特化した人材が必要なため、社内の正社員から適任者を見つけるのは容易ではありません。
また、DXも当初の変革時に大きなリソースが必要となるため、正社員を雇うとプロジェクト完了後に余剰が発生する可能性もあります。そこで、DXに関する知見を持つ副業・兼業人材に期間や業務を限定して、DXプロジェクトを委託するのが有効です。専門性を活かし、客観的な視点で課題とDXによる解決策を洗い出し、自社にとってベストなDXを実現できます。
新規事業の立ち上げ・展開
すでに主力事業が確立されていて、新規事業の立ち上げ頻度が低い企業の場合は、新規事業立ち上げにかかわる業務をミッション型の業務として副業・兼業人材に任せるのも一案です。
これまで既存事業の維持・発展に従事してきた正社員の場合、新規事業立ち上げの知見が不充分なケースが少なくありません。だからといって、新規事業立ち上げの頻度が多くないのなら、そのために多くの人材を雇うのも合理的ではないでしょう。
そこで、コンサルティングファームや事業会社などで実際に新規事業に従事した人材を業務委託で巻き込むことで、新規事業の立ち上げをスムーズに進められます。リソースが許す限りで自社の正社員もプロジェクトに参画させれば、ノウハウの蓄積も進みます。
副業・兼業人材をうまく活用するポイント
企業側が工夫すれば、副業・兼業人材に依頼できる業務は多数あります。副業・兼業人材をうまく活用するためには、委託業務を検討する以外に次の3つのポイントを工夫してみましょう。
課題と副業・兼業人材の活用目的を明確化する
自社にとっての課題と、課題解決のためになぜ副業・兼業人材を活用するのかを明確にしてください。自社の課題が人的リソースの不足なのか、特定領域の専門性・経験の不足なのかによって採用すべき人材のターゲットが変わってきます。
また、課題解決のために必要な人材の量や質、雇用期間なども整理しておかなければ、適任者を見つけるのが難しくなるでしょう。課題を整理した結果、正社員を雇った方が実は効率的だったという場合もあります。自社の課題を整理したうえで、ベストな副業・兼業人材の活用法を予め決めておきましょう。
副業・兼業人材の獲得方法を整理する
副業・兼業人材の獲得方法は近年急速に多様化しているので、希望する人物像や専門性に応じて効率よく人材を探すことが大切です。相対的に難易度の低い案件や単発のタスク型案件などは、クラウドソーシングサービスなど特に柔軟にリソースを確保できる方法が適しています。
一方で、専門家を探すならフリーコンサルや専門性を持つ副業・兼業のマッチングサービスなどを利用するのも一案です。最近では、正社員と副業の雇用双方に対応しているサービスもみられます。候補者とコミュニケーションを取りながら、必要に応じて正社員雇用も視野にいれるようなケースでは、こうしたサービスが有効です。
友人知人など、すでに関係がある人を業務委託でチームに入ってもらうことも可能ですが、人間関係があるからこそ、言いにくいことや、業務委託を終了しにくいという側面もあります。目的達成に向けて、適切な人材を見極めるためには、公募をしつつ、フラットに人材のスキルや経験から見極めることがおすすめです。
副業・兼業人材との協働体制を整備する
決定した人材のスキルを契約初日から有効活用するためには、企業側の受け入れ態勢が重要です。たとえば、次のような部分を予め整備し必要に応じて契約者との契約締結なども交わさなければなりません。
- 副業・兼業人材のマネジメントやレポート体制の構築
- リモートワーク環境の整備
- コミュニケーションやプロジェクト・タスク管理ツールの整備
- 業務委託契約書、NDA(秘密保持契約)の締結
- 業務内容と成果物の明確化
副業・兼業人材との契約締結前には、全ての準備を済ませておくのが望ましいといえます。
副業・兼業人材への業務委託で組織課題の解決を
副業・兼業人材を有効活用すれば、人材不足を補ったり、自社にまだない知見やノウハウを有効活用できるようになります。企業の課題解決や事業拡大、競争力の強化などさまざまな効果が期待できます。
今回は、副業・兼業人材に業務委託しやすい業務のポイントや例について紹介しました。委託内容が定まらない企業においては、ぜひ参考にしてください。また、副業・兼業人材をうまく活用するためには、活用目的や人材の獲得方法などの工夫、企業内の環境整備も重要です。自社の課題を解決するうえで適任の人材を雇いうまく稼働させられるよう、あらかじめ検討や準備を進めておきましょう。
- 人材採用・育成 更新日:2023/12/13
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